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.政治  投稿日:2014/10/6

[古森義久]【日中首脳会談のトリコになるな!】~11月のAPECで中国側が譲歩か~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

 

日中関係での首脳会談開催を求める声が日本国内で高まってきた。日本と中国との首脳同士の会談はもう2年半も開かれていない。だから日中関係はさらに冷却し、緊迫する。

そんな状況に憂慮して安倍晋三首相に中国の習近平国家首席との会談の早期開催を迫る声がより頻繁に聞かれるようになった。安倍首相は中国に対しこれまでよりも柔軟な姿勢をとって、首脳会談を実現させよ、と求める意見である。

だがこうした声には注意せねばならない。対外関係では首脳会談というのはあくまで外交上の手段であって、目的ではないからだ。目的は自国の国益の堅持であり、拡大である。

日中両国間でいま首脳会談が開かれない理由は中国側が前提条件をつけていることである。中国側は日本が尖閣諸島に関して、「領有権紛争の存在」を認めることをその前提条件として掲げている。歴史問題でも日本側に譲歩を求めている。尖閣諸島は日本固有の領土だから、中国の領有権主張も、その結果としての領有権紛争の存在も、日本政府は認めていない。

だが日本側はもし中国との首脳会談の開催が最高至上の目的だとみなすならば、尖閣諸島への中国の領有権主張の存在を認めればよい。中国はすぐに首脳会談に応じるだろう。しかし日本は自国の固有の領土である尖閣諸島の主権に関し、中国側に大幅に譲歩をしたことになる。それでは主客転倒となる。単なる首脳会談のために自国の領土を放棄してよいはずがない。

「中国の対日外交や対アジア外交は意外と弱体となっているから、日本との首脳会談にも近く応じるだろう」―アメリカの超ベテラン中国ウォッチャーのロバート・サター・ジョージワシントン大学教授が語った。日本は中国にとくに譲歩をしなくても、中国側から首脳会談の開催を求めてくるだろう、とも予測するのだ。

「最近の中国は年来の盟友だったはずの北朝鮮との関係を悪化させ、南シナ海での強引な領有権拡大のために、フィリピンやベトナムとの関係は険悪となった。そんななかで日本との関係をいまのように冷却させておくと、アジア外交全体が手詰まりとなる。中国の対アジア関係は日本側が考えるよりずっと弱体であり、対日関係の改善のために、日本との首脳会談の開催に出てくるだろう」

こうした予測を述べるサター氏はアメリカの歴代政権の国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などで中国動向の研究や対中政策の形成に30年以上、かかわってきた。

そしてサター氏は、いま中国首脳は日本側がとくに譲歩や妥協をしなくても11月の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)での日本との首脳会談に応じるだろう、と予測するのである。もしこの予測が正しければ、安倍首相の首脳会談開催への前提条件に頑として応じなかった対応も正しかったことになる。

 

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