[宮家邦彦]【外国メディアは日本の内政理解不足】~日本の新聞の焼き直しばかり~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月24-30日)
日本国内は総選挙関連の話ばかりで、どうも面白くない。解散前は、大義がないとか、唐突だとか色々批判されたが、選挙戦が始まればもう吠えても仕方がない。解散とは衆議院議員全員を「一瞬にしてクビにできること」なのだと改めて実感する。
前回書いたとおり、ここで解散の是非には触れないが、総選挙に関する外国メディア報道なら書いても良いだろう。予想通り、外国メディアの選挙関連報道は以前よりも少ないようだ。前回、前々回とは異なり、政権交代はないと思っているのだろうか。
外国メディアの多くは朝日や日経の最新の世論調査を基に書いている。朝日は安倍内閣支持率が39%、不支持率は40%で、第2次安倍内閣発足以来、支持は最低、不支持は最高を更新し、初めて支持と不支持が逆転したと報じていた。
これを外国メディアは、「安倍政権に対する支持は脆弱(fragile)であり、アベノミクスは一般有権者ではなく大企業が裨益するだけだが、肝心の野党陣営は安倍首相の奇襲により虚を突かれ、アベノミクスへの対案を示せていない」等と報じている。
それは良いとしても、日本の英字紙は海外の識者の声と称してワシントンなどの「アジア村の住人」の当たり障りのないコメントでお茶を濁している。外国記者で日本の内政を理解している者も意外に少ないようだ。このギャップ、決して小さくはない。
予想通り、ウィーンのイラン核協議がまたまた延期となりそうだ。外交筋が「一定の進展はあったが、幾つかの課題を本国と協議しなければならない」と言う時は、殆ど合意がないということだ。オバマ政権にこの協議を決裂させる度胸はあるだろうか。
先週ご紹介した第5回香山フォーラムで興味深いことが起きた。日本ではほとんど報じられなかったが、中国の国防部長が「我々は危機対応能力向上のため危機管理手続きの強化を呼び掛ける。(We call for further strengthening of dispute management procedures to improve our ability to cope with crises)」と述べたという。
これが事実であれば、中国側に若干の変化が見えてくるかもしれない。ちなみに、日本からの出席は制服の中堅幹部だったそうだ。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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