[宮家邦彦]【次世代の党の凋落が意味するもの】〜幻想だった民意の右傾化〜
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(12月15-21日)
今週は17-18日に欧州理事会が開かれ、EU各国の首脳がブラッセルに集まるという。今年の締めくくりということか。同時期に、相変わらずイタリアでは労働組合のストライキが続く見込みだ。どうやら、今週も欧州情勢は異常なしである。キリスト教圏ではもうクリスマスモードに入っているからだ。
ところが、同じキリスト教圏のオーストアラリアでは、シドニーでイスラム過激派のテロ事件が発生した。犯人はイスラム過激派組織「イスラム国」の旗を持ってくることや、アボット豪首相と直接対話させることなどを要求しているという。希望的観測かも知れないが、どうもこの犯人はプロではない気がする。大事に至らなければ良いのだが。
こうなるとやはり今週の大きなニュースは日本での与党圧勝だろう。選挙が終わったので、今週は憂いなく今後の見通しを書こう。確かに、国内メディアの論調は割れた。野党に優しい各社はほとんど茫然自失の中で、安倍政権は「冷めた信任」を自覚せよとか、多数を背景に「白黒をつけるのではなく、丁寧に政策を遂行すべし」などと書いている。
これに対し、与党に優しい各社は「目指すべき道筋を明確にすべし」、「手にした推進力で難題を突破すべし」と論じる。いずれも立派な論調ではある。だが、結局のところ、政治は結果責任ではないか。「分裂する野党の虚を突いた戦術的巧みさ」などと分析してみても、結局選挙は、勝ちは勝ちであり、負けは負けである。
そもそも、負ける側は負ける理由があって負けたのではないのか。そのことは野党側自身が2009年の自民党について思ったことと同じだろう。集団的自衛権など外交安保分野での政策変更は今回の選挙で大きな争点となっておらず、今回の選挙で与党の政策が信任された訳ではないとの意見もある。
それでは問うが、野党側はそうした問題を前面に出して選挙を戦ったのではなかったのか。それだけ訴えても民意が動かなかったのは、野党側の反対論に有権者が与しなかったからではないのか。有権者は一部のマスコミが言うほど愚かではない。それどころか。彼らはもっと冷静に日本の政治を見ているのではないか。
その典型例が次世代の党の凋落だろう。選挙前の19議席がわずか2議席に止まったことは何を意味するのか。これまで内外リベラル系メディアは、やれ日本の民族主義の復活だ、右傾化だなどと批判していた。されば、彼らはこの結果をどう説明するのか。本当に民意が右傾化しているなら、Far-Rightの「次世代」が躍進して然るべきではないか。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載す
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