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.国際  投稿日:2014/12/8

[加藤鉱]【日本の総選挙を羨む香港人の切なさ】〜なぜ、日本の若者は選挙に行かないんだ?〜


加藤鉱(ノンフィクション作家)「加藤鉱のチャイナプライム」

執筆記事プロフィール

 

12月3日、香港金融街・中環の占拠を呼び掛け「オキュパイ・セントラル(和平占中)」運動を先導した人々が警察に出頭した。そのなかには香港の民主派学生から「三君子」と称される戴耀廷・香港大学准教授、陳健民・香港中文大学准教授、朱耀明牧師の3人もいた。

3人は事前に記者会見を開き、「警察がバリケード強制排除のために無防備のデモ隊に殴りかかるなど流血の危険性が高まってきた。われわれのアンブレラ・リボリューション(雨傘運動)は2ヵ月以上も続いた。もう潮時だろう」と占拠学生に撤退を促した。

一方、9月28日に中環の占拠を始めてから虚構の民主選挙に抗議するデモを牽引してきた勢力、香港学連と学民思潮は「まだ撤退の時期ではない」としている。より強硬な主張をもつ学民思潮は香港政府との対話を求めハンガーストライキ中である。

そんな折り、興味深い新聞記事を見つけた。香港の10月の小売り売上高は383億香港ドル(約5800億円)で、前年同月比で1.4%増であったというものだ。

「学生運動のために商売あがったりだ。われわれは大損害を被っている」と商店主たちが抗議集会を開いたり、親中派で知られる映画俳優のジャッキー・チェンが「市民生活を脅かすデモは反対」と北京にゴマをすったりしていたけれど、フタを開けてみれば大損害どころか逆にプラスであった。

香港人の知人がその理由を教えてくれた。

「小売りの落ち込みが少なかった理由は、中国人の来港減少を補うほどの他国のジャーナリストや旅行者が増えたためと言われている。 この時期にあなたを含めて多くの日本人も来た。だから小売店、洋服、貴金属はそれほど悪化しなかった」

だが、大陸からの観光客をメインとする業界は痛手を被ったという。その代表がカメラだろう。いまや一眼レフの大きなカメラを首にぶら下げて世界の観光地を闊歩するのは中国人の専売特許となっている。先の香港人が言う。

「旺角のカメラショップ街は相当売り上げが落ちた。中国人客が圧倒的に減っているせいだ」

さて、香港の民主派デモの先行きはどうなるのか?

メンツを潰された中国政府としては、恥を忍びながらも香港学連と学民思潮の自主撤退を待つしかない。一方、彼らがこの先粘りに粘ることで一縷の望みがあるのかといえば、残念ながら、彼らが求める行政長官立候補者を制限する改定案の撤回に北京が応じるはずもない。

そんな甘い顔を見せれば、チベットや新疆ウイグル自治区などの統治に影響を与えかねないからである。

民主派デモが自然消滅し、世界のメディアが香港にまったく関心を示さなくなったとき、中国は民主派リーダーたちに牙を剥くという常套手段をとるはずだ。

先の香港人に訊ねられた。

「今度の衆議院選挙に行かない日本の若者が多いそうだが、われわれには信じられない。誰でも自由に立候補できる普通選挙に行かないなどどうかしている。そのために香港では高校生までが闘っている。なぜ日本の若者は選挙に行こうとしないのか?」

それもひとつの意思表示の方法だからだとは言えず、私はただ恥ずかしかった。

 

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