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.国際  投稿日:2014/10/19

[加藤鉱]【長期戦の様相、香港学生デモ】~デモは『動乱』?天安門の悪夢が蘇る~


加藤鉱(ノンフィクション作家)「加藤鉱のチャイナプライム」

執筆記事プロフィール

 

9月28日、学生を中心とした香港民主派が香港島の金融街中環(英語名セントラル)を座り込みで占拠、「オキュパイ・セントラル」運動が始まった。2017年に行われる次期行政長官選挙ついて、中国の全人代が下した民主派候補の立候補を事実上認めない決定の撤回を求めた抗議行動である。

香港の警察当局がデモに参加する学生や市民に催涙弾を発射し、多くのけが人や逮捕者を出す事態となった。香港が1997年に英国から中国に返還されて以降、これほどの混乱は初めてのことである。

デモ参加者数は10月1日には10万人を超えた。警察当局の攻撃から身を守るため、所持していた簡易傘で対峙する映像が世界中に発信され、「アンブレラ・レボリューション」と名付けられた。

アメリカやイギリスなどでは香港の民主主義が守られるよう訴える集会が開かれ、欧米各国の首脳もそれに同調する姿勢を見せたのに対し、中国政府は内政干渉だと強く反発した。

知ってのとおり、いまから17年前の1997年7月1日の香港返還式典の際、当時の江沢民国家主席は、「中国は特例的に香港の民主的な制度を認める。香港の1国2制度を50年間維持する」と高らかに宣言している。

中国の特別行政区となった香港には高度な自治、言論や集会の自由が保障されていると香港人は理解するが、この6月に中国政府が発表した初の香港白書をみると、「香港の高度な自治は中国側が〝授けた〟もの」と返還時に制定された「香港基本法」の解釈をずらして示してあった。これが香港の民主派を強く刺激し、今回のデモの大きな要因となったのは疑いのないところであろう。

デモは長期化の様相をみせ、19日で4週目に突入した。混乱はまだまだ続きそうな気配濃厚だ。心配なのは人民日報など中国政府系新聞が香港の抗議デモを「違法行為」扱いから「動乱」という表現に切り替えてきたことで、私などは1989年6月4日に北京で起きた天安門事件を想起せざるをえない。

89年当時、北京留学中に天安門事件に巻き込まれた経験をもつ香港人の知人と話した。

「天安門事件当時を彷彿させる。あのときも最初は今回と似たような展開だった。天安門のデモに参加していた私は、お祭り騒ぎを楽しんでいた。それが一変したのは、われわれの行為を政府が『動乱』と定義した時点からだった。われわれは単なる学生から『暴徒』として扱われることになった」

彼は続ける。「今回もし双方に1人でも死者が出たら、展開は大きく変わると思う。もし政府側(警察等)に死者がでたら、当局はただちにデモ隊を『暴徒』と認定するだろう。そうなると国防、治安維持という観点から待機中の人民解放軍を投入しやすくなり、天安門の二の舞となる怖れがある。万が一デモ隊側に死者がでたら、最悪の事態を招くだろう。なぜなら今回の運動には香港の中学生や高校生が多く参加しており、歯止めがかからなくなるからだ」

現段階では21日に双方が対話を開始するとの報道がある。だが、片方で対話を呼びかけてみたり、もう片方では催涙スプレー使用でデモ隊を逮捕するなど香港政府の対応はチグハグしている。

取材のかぎりにおいては、香港民主派と中国の傀儡政権である香港政府はどこで折り合いをつければ良いのかわからなくなっている模様だ。

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