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.国際  投稿日:2015/2/11

[加藤鉱]【中国の軍事産業を侮るな】~南京ニセ銀行事件の裏側に見えるもの~


加藤鉱(ノンフィクション作家)「加藤鉱のチャイナプライム」

執筆記事プロフィール

1月末、南京市で営業していた「農村経済協同組合」がニセモノ銀行であったと報じられ、中国という国柄を改めて考えた人も多かったはずだ。被害額は1年間で2億人民元(約37億 7000万円)。通常金利に加え週利2%というベラボウな利子補給金につられ預金した客への利払いが滞ったところで御用となったという。

精巧につくられた店舗、内装、設備、機械、制服などの壮大な仕掛けに呆れた向きもあったろうが、筆者などはこうした徹底した手口に通ずる中国人の思考回路に対して、ある種、空怖ろしさを感じてしまった。

筆者は今回のニセモノ銀行の犯罪が明るみに出たとき、以前薫陶を受けた軍事評論家の言葉をありありと思いだした。それは中国のニセモノ製品が猛威をふるって、日本企業がほとほと困り果てていた10年以上前のことであった。
たまたま中国の二輪車メーカー・重慶力帆が「HONGDA」のネーミングブランドを自社製オートバイに付けて、本家のHONDAと係争中であった。

裁判の結果はともかく、その軍事評論家は筆者にこう言ったのだ。「日本のメディアは中国のビヘイビアの悪さのみに注目してバッシングしているが、本当は、中国の模倣品メーカーの高い技術力を脅威に感じなければならない。」模倣品被害を取材し、中国メーカーのあざとさに辟易としていた筆者が、それはどういうことかと訊ねるとこう返された。

「中国は重要産業については、川上から川下まで全面的に自前生産するのだという強烈な意志をもっている。かつての日本もそうだったように、とくに民間は初期段階はコピーに頼るものだ。侮ってならないのは、川上から川下までという思想がもっとも根付いているのが軍事産業であるということだ。」

軍事評論家は続けた。「中国はあくまでライセンス生産を念頭におく。だからロシアから兵器を買うときは生産設備ごと買う。スホイ27は10数年前に買い始めて、1995年から瀋陽で量産体制に入った。次期主力機のスホイ30については、ロシアから何機買えば生産設備をくれるかというバーゲニングを行なっている。(当時)」最新兵器を自前で持つことだけに関心を抱いているのが中国なのである。

かたや海峡を挟んで対峙する台湾はどうかといえば、言い方が難しいが、台湾はとりあえず米軍機のストックをお裾分けしてもらっているような格好だ。

軍事評論家いわく、「アメリカは台湾に本物は売らない。」のだそうだ。いつ中国に統治されるかわからないから、本物を手渡しているのは対潜哨戒機P3Cぐらいだろうとも言う。要は、完成品の武器を買っている国は、それを輸出している国にはどう逆立ちをしても敵わないということである。

中国はそれを自覚し、意図をもって武器の生産設備をそなえ、拡張しようとする唯一の国ということになる。これを脅威と受け取るか、中国などどうせコピーしかつくれないとタカを括るのか。

ニセモノ銀行の事件は、着々と歩を進めるバブル崩壊とは別な角度から中国をみつめる契機となった。

タグ中国, 加藤鉱

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