[細川珠生]【エネルギー戦略を明確にしない政治の罪】~原子力をどう考えるのか明確にせよ~
「細川珠生のモーニングトーク」2014年12月13日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
今回のゲストは「WEDGE」編集長の大江紀洋氏。私たちの生活の基盤でありながら、今回の選挙の争点としてはあまり取り上げられなかったエネルギー問題を議論した。
「WEDGE」でも、これまで積極的に取り上げられ、問題提起が行われてきたテーマである。「この国のエネルギーを今後どうやって賄っていくべきなのか」という課題は私たちにとって重要だが、何故メディアや政治はこの問題を避けて通るのだろうか。
「自民党も民主党もこのテーマに踏み込んだ途端に火傷をすると思っているという感じがする」と大江氏は言う。民主党政権下で福島原発の事故が起こったが、それを作ってきたのは自民党だ。自民も民主も、原発の危うさを共有し、今後のエネルギーをどうするかという難しいテーマに直面している。両党が「この問題にはっきりとしたメッセージを出すと火傷してしまう」と考えたことから、マニフェストに明確な記述はなくなった。
「福島の事故から三年も経っているのに総括ができない。今後100年の国家の計について誰も触れないということは非常に許し難い」と、大江氏は強く非難した。
各党の公約を見てみると、エネルギー問題に対して、曖昧な書きぶりが多い。反原発を明言しているのは共産党・社民党・生活の党。維新の党等は「脱・原発依存」と曖昧。民主党は「2030年代の原発ゼロを目指すためにあらゆる資源を投入する、安全性が確認されないと稼働しない」。自民党は「ベースロード電源として重要だ」。どの党も、原発を含む将来のエネルギー政策をどのように考えていくか、というところまでは触れていない。
大江氏は、「世界が今後どうなっていくのか、孫の世代まで意識して考えるべきだ」と話す。2100年には、地球全体の人口は100億人を超えると言われている。資源を持たない日本の先人達は化石燃料だけではだめだと考え、原子力に投資をしてきた。ここまで力を入れて技術を培い、世界の中でもリードしている原子力を、本当に今手放してしまってよいのだろうか。2100年ごろ、石油や天然ガスが買えない時代になってしまったら、日本はどうなってしまうのだろうか。そこまで考えて議論をしなければならないのだ。
「この事故を乗り越える意味でも、むしろ今必死になって原子力にリソースをつぎ込むべきだと思う」と大江氏。また、「福島の事故は古すぎる技術だったから起こったものであり、最先端の技術を投入していけばあの事故を起こさないような原子炉はあり得る」とも提言した。
今、技術をストップさせるのではなく、進めた方が安全は見えてくるのだという。使用済み核燃料の問題も技術が解決する可能性がある。大江氏は、「原子力の技術から逃げれば逃げるほど、後世の人たちに迷惑がかかる可能性が高い」と指摘し、「何故、そういったメッセージを政治家が一人も発しないのか。政治家たちは『少しずつ止めていく』という一番楽で誰の反発も受けない道を選んでいる」と苛立ちをあらわにした。細川氏も「事故を教訓にすべきだが、事故があったからといって全てをゼロにするというのは大人げない判断だ」と同意した。
再生エネルギーに関しては、どの党も最大限推進ということで一致している。しかし、固定買取制度により、既に送電網は限界を迎えている。送配電網の整備には莫大な資金が必要となり、再生エネルギー推進だけでは無理だということがわかってきたにも関わらず、まだそれを公約として掲げているのはいかがなものかと大江氏は指摘した。
再生エネルギーは限界。では今まで通り化石燃料を続けていいのか。原発はどうすればよいのか。それを真剣に考えなければならないのに「脱・依存」という、今何も考えなくてよいマニフェストを多くの党が打ち出していることに対し、大江氏は憤りを感じているという。投票の際には、是非このような争点も重視し、総合的に考えるべきだと締めくくった。
(注:本稿は、2014年12月13日に放送されたラジオ日本、「細川珠生のモーニングトーク」の内容をJapan In-depth 編集部が許諾を取り、放送内容を要約して掲載しているものです。)
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