[細川珠生]【子供の虐待死を防ぐ為に出来る事】~関係諸機関の情報共有がカギ~
「細川珠生のモーニングトーク」2014年11月29日放送
Japan In-depth 編集部(Aya)
今回のゲストは、「NPO法人Think kids 子ども虐待・性犯罪をなくす会」代表理事で弁護士の後藤啓二氏。Think Kidsは、「子供のことをもっと考えよう」という想いで一昨年立ち上げられ、「子供虐待ゼロ」を目指して活動している。また、「一人でも多くの虐待された子供が、希望を持って前向きに生きていけるように」ということももう一つの柱として掲げている。元警察庁企画官・内閣参事官でもある後藤氏が、近年ニュースで頻繁に耳にする子供虐待死の実情と対策について語った。
昨年度の児童相談所への相談件数は約7万3千件に上り、統計を取り始めた平成2年の67倍となっている。件数が増え続けているのは明らかだ。児童虐待増加の理由について、後藤氏は、「①核家族化、②地域社会・コミュニティが減ってきていること」の二つの理由を挙げた。祖父・祖母と同居するケースが少なくなってきたことや、マンションが増え、近所付き合いが希薄化してきたことにより、これまで虐待を止めてきた家族や地域の機能が失われたことが主な原因だという。
後藤氏は虐待死防止の問題点として、各機関の連携不足を指摘。これまでの事例をみると、児童相談所や市町村、警察署等が虐待を把握しながら子供の死を防げなかったケースが多い。「各機関が虐待情報を共有し、児童相談所による家庭訪問等がきちんと行われれば、確実に件数を減らせるだろう」と語った。
児童相談所が虐待情報を把握していた家庭で110番通報があり、警察が駆けつけたが、警察には情報がなかったため、親に「ただの夫婦喧嘩」と騙され、子供の体の痣などを確かめずに帰ってしまった事例もあるという。子供は5日後に殺されてしまった。虐待情報を共有していれば、子供は死なずに済んだだろう。
日本の縦割り社会の弊害を感じた後藤氏は、法改正の必要性を訴え、医師の方々の賛同を得て署名活動を行っている。そうした中、8月に官邸直轄で児童虐待防止のための副大臣会議が設置され、ここで法改正を含めて検討が進んでいるそうだ。
残酷な児童虐待死の報道で心を痛めている人たちは多いが、私たちにできることはあるのだろうか。後藤氏は「近所で虐待かもしれないと思ったら、警察でも児童相談所でも通報すること」と話し、「人のことに踏み込むのは今の社会では難しいが、勇気を出してためらわずにしてほしい」と強く訴えた。また、署名活動への協力も呼び掛けた。Think kidsのホームページよりネット署名が可能だという。子供が殺されるといったニュースがない日を目指して、私たちも身近で起きている些細なシグナルを見落とすことなく、“虐待の芽”を摘んでいかなければならない。
(注:この連載はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」の放送内容をJapan In-depth 編集部が許諾を取り、原稿化したものです。)
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