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.政治  投稿日:2015/1/20

[横江公美]【最後の演説に候補者の総てが詰まっていた】~民主党代表選、政治家の言葉を誰でも検証できる時代~


横江公美(政治アナリスト)

執筆記事プロフィール

民主党の党首を決める臨時党大会が開かれ、投票そして決選投票という2回の所信表明演説と投票を経て、岡田克也新代表に決まった。民主党サポーターの投票率は50%にも満たず、盛り上がらないと言われてきた。私も結果にさえ注目していればいいと思っていたが、ネット生放送の臨時大会の演説を聞き始めたら、結果予想ができてしまうので、面白くてネットから離れられなくなってしまった。

最初の長妻候補の演説は一番聞きやすく感情表現も巧みだったように思われるが、取り上げたテーマは「格差の是正」と「自己紹介」に終始していた。次の細野候補は、「自己紹介」「格差の是正」に加えて「経済成長」と「安全保障」そして「震災対応」の考えまで語った。最後の岡田候補は、経歴の長さゆえ「自己紹介」のかわりに「民主党の失敗」そして「経済成長と格差の是正」そして「多様性の社会」について言及した。

決選投票に残ったのは、演説の中で、政策を広くカバーした細野候補と岡田候補である。両者の演説を比べると、細野候補は外交政策まで踏み込んでいるのに対し、岡田候補は国内政策にとどまっていたので、内容としては細野候補の方が良くできていると思われた。民主党政権が急に支持率を失ったのは外交政策の失敗であることは広く認識されている。

決選投票前の演説では、岡田候補は安倍首相との対立を明確にし、安全保障と歴史観を語った。過半数を取る候補者は現れず、決選投票になることはあらかじめ予想されていたことだったので、岡田候補は2回の演説を当然、想定したのだろう。

一方、細野候補は、まだ早いという批判に太鼓判を与えてしまったように思われる。細野候補は、民主党再生への思いに終始し、くすぶる経験不足、世代交代という懸念に対して「育ててほしい」と訴えるに終わった。しかも、その際には「私には夢がある」とアメリカのキング牧師の有名な演説を模し、2020年オリンピックの時に民主党が政権についていることが夢であると締めたのである。

これを聞いた瞬間、違和感を覚えたのは私だけではないだろう。政権交代を担うつもりの党首を決める最後の決戦演説において、引用ならまだしも、外国の演説を模すとは、最初の演説草稿を書きあげた時に燃え尽きてしまっていたのだろうかと。

長妻候補は、先の演説でニクソン大統領の「あきらめないことが重要だ」と引用していた。日本の政治家の演説には、普遍的に語り継がれるような一節がなかったことを表しているとも言える。しかし、これからは党首・総理大臣を目指す政治家ならばこそ、普遍的な名言演説を残しすべき立場にある。演説の内容は、まさにその国の民主主義を映す鏡であるからだ。

しかし、良い時代になったものである。演説を聞き逃したらYouTubeに臨時大会の映像は残っている。臨時大会の演説がテレビ放映されてなくても、民主党のサイトがライブ放送をしていた。それを見て、原稿を書く人は私だけではないだろう。政治家の演説は見られるだけではなく、後に中身についても精査される時代がきたのだから、政治家は演説を向上せざるを得ない。私は動画を横目に、政治家の演説力向上を望みながら原稿を書いた。

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