［瀬尾温知］【アギーレジャパン、リスク取りに行け】～アジア杯２０１５準々決勝でUAEと激突～
瀬尾温知（スポーツライター）
「瀬尾温知のMais um・マイズゥン」（ポルトガル語でOne moreという意味）
日本代表は３連勝で危なげなく１次リーグを突破した。アジアの国々が相手なので順当である。目標は世界の強豪国に追いつけ追い越せであるのだから、当然の結果になる。
８強が出揃い、ここからはトーナメント方式になる。準々決勝の相手はUAE・アラブ首長国連邦。まず、負けることはない。得点機を逃し続けてPK戦の末に敗退、ということもなくはないだろうが、あってはならない。この大会で観たいのは、オーストラリア、韓国、イランといったブラジルワールドカップ出場国との対戦だからである。
日本は、ブラジルワールドカップ・アジア最終予選でオーストラリアと２引き分けだった。ホームでは本田のPKによる得点で辛うじて追いつき、その結果、ブラジル大会出場が決まった。５大会連続の祝賀ムードに包まれ、「アジア最強」などという言葉が根拠なしに踊り出す始末だった。
韓国、イランとは顔すらも合わせておらず、オーストラリアとの決着はついてないということを忘れたままだった。そしてアジア勢は、サッカー王国での本大会で１勝もあげられないまま、９敗３引き分けという無様な姿態を世界に印象づけてしまった。
日本を含めたそのワールドカップ出場４か国は、さほど力の差はない。ほぼ五分五分の力関係といえるだろう。日本は、同じメンバーで長く戦っていることで連係が高まってきたため、チームワークが完成されてきた。それが現在の日本代表の強みである。連係を信じている強みの分だけ、この４か国の中で最も調子が上向いている。
五分五分の一発勝負に勝つ確率は５割ある。コインを投げて表・裏が出る確率も五分五分。丁半博打も同様になる。可能性が半々の一発勝負に続けて勝つには、勝負強さが必要。勝負強さを手に入れるには、強く信じることが重要な要素になる。自分達の連係を強く信じている日本代表は、勝ち続けることができる状態にある。
マカオでのバカラ賭博が題材の、作家・沢木耕太郎氏の最新小説「波の音が消えるまで」に影響されて、トーナメント戦、一発勝負、博打と、悪い癖でひとりでに連想してしまった。
負けない博打か、それとも偉業となるデカイ勝ちを求めるのか。バカラに必勝法はないと考えるが、もしかしたら、サッカーにはあるのかもしれない。それが格上でなく、五分五分の力関係の戦いであるならば。
仮にあったとしても、本田を筆頭に日本代表メンバーの最終的な狙いはデカイ勝ちのはずである。それならば、このアジアカップで負けない博打に徹することはしてほしくない。五分五分の相手に必勝法を用いてその場をやり過ごすのではなく、いずれデカイ勝ちを収めるために必須となる、リスクある戦法を実践してもらいたい。
