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.社会  投稿日:2015/1/26

[田中慎一]【マクドナルドを他山の石とせよ!】~企業受難の時代/危機管理新次元 2~


田中愼一(フライシュマン・ヒラード・ジャパン代表取締役社長)

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「想定する、準備するチカラ」

次は限られた時間で何を想定、何に備えるかである。クライシスが起こると幾つかの「疑問・不安」が発生する。それらの「疑問・不安」を不明瞭なままに放置しておくと状況は炎上 、さらには新たな疑問、不安の発生によって火に油を注ぐ事態になる。

次ぎ次ぎと異物混入の事例が発覚する中で「もっと異物混入があるのではないか?」「公表されていない異物混入は何件あるのか?」「データとして残しているのか?」「どんな対応がとられてきたのか?」「公表する基準は?」などの疑問・不安が噴出する。

これらの「疑問・不安」をいかに早く想定、対応できる準備をするかが勝負である。その際に肝要なことは情報を出す、出さない、の二元論に陥らないことである。特に「食」の世界では異物混入は日常的に起こる。その全ての情報を開示することは実践的でなく不可能に近い。仮に開示基準を明らかにしても世間を満足させる基準などはないと思った方が現実的である。

重要なことは開示レベルを云々かんぬんするよりも、企業の「姿勢」を示すことである。ここではピンチをチャンスにという発想が求められる。クライシスの際に世間は「情報」を求めているというよりも「姿勢」を求めている。

例えば、異物混入が発覚した際これをすぐに公表、逆に消費者に類似例がないかを問いかけ、異物混入に対する断固とした企業姿勢を通じて企業の当事者意識を示す。危機対応の基本はどれだけ「当事者意識」を示せるかである。具体的な「動き」によってどれだけ当事者意識を示すかが危機対応の分岐点になる。

「やはり」から「さすが」へ

マクドナルドの異物混入のケースが報道された時、世間は「またか」と反応した。昨年の食肉偽装での対応を今回の事態と重ね合わせるからである。ここで断固とした企業姿勢を示せたら世間の視点は「またか」から「さすが」へとシフトする。

マクドナルドは昨年の事態から教訓を学んだ、消費者の視点に立ってしっかり対応していると世間は受け取るからである。残念ながら、今回のマクドナルドの対応では、世間は「さすが」ではなく「やはり」ダメか、とマクドナルドへの信頼をさらに劣化させた。危機の時こそピンチをチャンスにという発想が危機対応の新たな道すじへと導く。

(3に続く。本シリーズは全3回です)

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