[Japan In-depth編集部]【今、原発問題を改めて考える】~映画「日本と原発」を見て~
Japan In-depth 編集部 (Ayaka)
2015年2月7日に福島県福島市のとある映画館で、1本のドキュメンタリー映画が上映された。タイトルは「日本と原発 ~私たちは原発で幸せですか~」。
今回の映画監督は、原発に関する訴訟に先陣切って取り組んだ河合弘之弁護士だ。河合氏が作りあげた映画を一目見ようと、老若男女問わず大勢の人が集まり、会場に入れない人も出る盛況となった。
〈映画館前に並ぶ人々〉
映画のテーマは幅広く、「原発とは何か」、「あのとき何が起こったのか」、「市民はどう感じていたのか」、「福島原発を取り巻く、業界の巨大な権力構造について」、「癒着と隠された事実」などと包括的に網羅されている。
東日本大震災から起こった福島の悲劇が中学生でも理解できるようなわかりやすい内容でありながら、メッセージ性の強い作品になっている。映画の試写会の後、シンポジウムが開かれた。
〈河合監督(中央)を囲んだシンポジウム〉
今回のこのシンポジウムは多くの脱原発派、特に50代から70代男性の出席が多かった。そうした中、参加している高校生の一人は、「(自分自身何が正しいのか判断できなくて)もやもやする。」と発言し、この言葉を皮切りに議論は白熱した。
終盤には、女子高校生のこのみさんが、東京電力の信用が失墜したことを受け、東北各地で新エネルギーの会社が興されていることに関し、「(新エネルギー会社設立は)原発による電力を補う代替案というが、原発がなくても日本の電力は十分に賄えている現状で、なぜ新たに新エネルギーの会社を興さねばならないのか?」と疑問を投げかけた。
〈女子高生のこのみさん〉
シンポジウム終了後、何人かの若者に感想と、脱原発派か原発推進派か尋ねたところ、若年層のほとんどが「中立」であると表明した。意見としては、「原発再稼働に賛成・反対ではなく、私たちはどのようにしていくべきなのか、組織の在り方について、議論ではなく対話していくべきではないか。」とか、「無責任なのだが、どちらかに意見に深入りはせず、どちらの意見も吸収したいので中立でありたい。」とか、冷静な意見が聞かれた。
多くの若者は、賛成、反対、と判断する前に、知識そのものが不足していることもあり、それを補ってから考えたい、という意識から慎重になったのではないかと思われる。
震災から間もなく4年。依然、故郷に戻れない人が多くいる中で、様々な葛藤にさいなまれる福島県民。脱原発、そして新エネルギー。必ずしも一枚岩ではない県民は、これからどの道を選ぶのか、重い決断を迫られている。
この福島の抱える苦悩は、他の県にすむ私たちにとって決して他人ごとではない。いまだ50基の原発が現実問題として日本全土に存在し、再稼働を待っている。私たちはどのような選択をするのか。一人一人がこの映画を見て、自分の問題として考える必要があると改めて思った。