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.国際,.経済  投稿日:2015/4/1

[田村秀男]【中国インフラ投資銀行に韓国参加のワケ】~中韓の北朝鮮融資構想を阻止せよ~


田村秀男(産経新聞特別記者・編集委員)

「田村秀男の“経済が告げる”」

執筆記事プロフィール

韓国が米国の制止を振り切って中国主導のアジアインフラ投資銀行への参加を決めた。英国など欧州や豪州など他の米国の同盟国も参加しているのだから、ワシントンも「各国の判断にまかせる」と言わざるをえなくなった。韓国メディアは「韓国企業がアジア地域のインフラ開発事業に参加する機会が大きく開かれた」(中央日報電子版3月30日付け)と大はしゃぎである。そう、韓国はとにかく実利を優先したのだが、アジア一般というよりも、かれらにとって真っ先に考える実利先は北朝鮮である。

 ワシントンが中国主導のAIIBに反対してきたのは、米国主導のアジア金融秩序に中国が割り込んで主導権を奪い、アジアを分断する狙いがあると読むからで、とりわけ朝鮮半島情勢を考えると、韓国が中国側に走るのを阻止したかった。だからこそ、中国側も韓国を引き寄せるのにとりわけ熱心で、AIIBと韓国をめぐる米中の暗闘はすさまじかった。

2014年5月、訪韓した中国の王毅外相は朴槿恵大統領に対し、7月初旬の習近平総書記の訪韓時の中韓共同宣言文に『韓国がAIIBに加盟することにした』と明示してほしい」と要求してきた。さらに北京は6月初旬に訪中した韓国の副首相に念を押した。

これに対し、米側は危機感を強め、C・アトキンソン米国国家安全保障会議(NSC)国際経済担当副補佐官が、6月初めに米国を訪問した韓国政府高官に、AIIBに参加しないよう、釘を刺した。「韓国がAIIBに参加するなら、米韓の信頼関係を壊す」とまで警告した。米国の強硬姿勢を受けて、朴大統領も習近平総書記との会談で「参加します」とは約束できなかった。「韓国は中国がAIIB設立を提起したことを称賛するが、中国と意思疎通を保ちたいと述べるにとどめた」(14年7月4日中国国営の新華社通信)というわけで、あとは水面下で中韓間のすり合わせが行われてきた。

その中で、韓国側は「ソウルにAIIB本部設置という条件を提示した」(中央日報電子版14年7月14日付け)という。中国が出資金の5割を出し、北京に本部を置こうというのに、ソウルに本部を置いてくれれば、韓国も参加します、というのは、いかにも韓国らしい夜郎自大式発想だと思われがちだが、北京側はその言葉の裏を読み込んだに違いない。ソウルにAIIBを置け、というのは、AIIBは朝鮮半島、つまり北朝鮮をカバーしろ、という意味だと。

そこで、中国は最後に「北朝鮮カード」を切った。3月27日の産経新聞ソウル支局藤本欣也記者電では、「韓国の企画財政省高官はAIIBの総会で認められれば北朝鮮にも投資可能だ」と語り、AIIBを通じた北朝鮮のインフラ開発にも期待感を示した。AIIBの設立趣旨では、世界銀行やアジア開発銀行未加盟の国、つまり北朝鮮にはAIIB融資はできないことになっているはずだが、AIIB総会の承認があれば可能という言質を北京から取り付けたのだ。

AIIB参加決定を受け、韓国貿易協会や大韓商工会議所など経済団体が27日、共同声明を発表、「韓国企業がアジア社会基盤の建設に主導的に参加できる道が開かれた」と歓迎した、という。現代グループなど北朝鮮に深く関わってきた韓国企業にとって、この「アジア」とは「北朝鮮」のことだ。

さて、肝心の北朝鮮だが、米国の自由アジア放送(電子版)は31日までに、英ネットメディアが以下のように報じたという。北朝鮮は2月、北京に特使を送りAIIBの金立群臨時事務局長に参加の希望を伝えたが、金氏は参加の前提となる詳細な経済・金融データを北朝鮮側が示していないため拒否したという。その後、韓国は上記の条件でAIIBの対北朝鮮融資の道を北京で確保したわけである。北朝鮮に強硬姿勢を貫く日本と米国はAIIB問題で今後、結束を強化して対応していくしかない。

 

 


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