[安倍宏行]【低調統一地方選にも一筋の光】~若者・女性の政治参加が不可欠~
安倍宏行(Japan In-depth編集長/ジャーナリスト)
「編集長の眼」
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有権者の3人に1人しか投票しない自治体があるなど、史上最低の投票率を記録したかと思えば、当道府県議選で無投票当選者が501人に上るなど、あきれ果てた統一地方選の前半戦。野党が候補者を立てられなかったのが原因、とそのだらしなさを理由に挙げる声も聞こえるが、必ずしもそれだけではないだろう。相次いだ地方議員の不祥事に、有権者がすっかり嫌気がさしたという側面も否定できまい。そんな中、無所属ながら自民、民主の候補に戦いを挑んだ無所属議員が当選するなど、明るい兆しもなくはない。千葉県議選に挑んだ水野ゆうき氏は前我孫子市議会議員。1期目を無所属で貫き、今回の選挙は自分が立たねば無投票で県議が決まる、と危機感を募らせての出馬。3人の候補者の中、最年少かつ唯一の女性候補だった。
選挙戦前半から盛り上がりに欠け、冬に戻ったかの悪天候にも祟られて期日前投票も低調、低投票率がほぼ間違いない状況下、メディアの選挙情勢分析では非常に厳しいとの下馬評であった水野候補だったが、ふたを開けてみると自民現職候補に1000票と迫る大健闘、民主候補には3000票の大差をつけて当選した。
市民目線の政治活動を継続し、SNSと駅頭による市民への報告も怠らなかった水野候補。地盤、鞄、看板の3バンを持たぬ完全無所属候補であってもきちんと政策を訴え続ければ支持してくれる市民はいるのだという事実に、少しは救われる気持ちでいる。
とはいえ、市民の政治離れは深刻だ。このままでは地方自治は崩壊する。だが思い出してもらいたい。3.11の時、一番大切だったのは自分と自分の家族が済む町の安全ではなかったか。災害が起きたとき、どのような公助があるのか、私達は知っているだろうか。自助も共助も、公助あってこそ。自分の町の行政が普段どのような防災対策を採っているのか、私達は知る権利がある。地方自治とは私達の命を守ることに他ならないと思っている。
政治に無関心を決め込むのも結構だが、その結果、政治が固定化されたり、既得権益の場になったりしてはならない。そのために若者や女性が政治に積極的に関わることが必要だ。無関心のつけはいずれ有権者に回ってくる。統一地方選の後半戦、これ以上投票率が下がらないことを祈る。