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.国際  投稿日:2015/5/25

[古森義久]【ドローンの兵器利用に熱心な中国】~その軍事的脅威を直視せよ~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

ドローンは玩具ではなく、兵器なのだ――こんな現実を強調したくなる日本国内での最近のドローン(無人機)騒ぎである。

今回の一連のドローン騒動でまず日本国内の耳目を広く集めたのは5月9日の長野市の善光寺での出来事のようだ。御開帳の式典の一行が参道を進むうち、小さな玩具のようなドローンがポトンというふうに落下した。その後の捜査で横浜市の15歳の少年の犯行だと判明した。

別のドローン事件としては首相官邸の屋上へのドローンを飛ばした男が逮捕された。こうした事件は政府や国会をも動かし、ドローンの勝手な飛行を取り締まる法的規制の作成が着手された。しかし日本でのこの動きをみていると、まだまだ全体としてドローンを少年やマニアによる公共秩序を乱す迷惑行為のようにしかとらえていないという印象が強い。

だが世界の現実ではドローンはすでに破壊性の強い最新鋭兵器となっているのだ。ドローンは軍事的な殺戮や攻撃の最有効手段となっている。とくにアメリカの対テロ戦争ではいまやドローンが主要兵器なのである。中国軍もドローンの開発や利用には力を注ぎ、尖閣諸島周辺にまですでに飛行させているのだ。日本のいまの反応はドローンのこうした軍事的危険性を直視しているとは思えないのである。

ドローン先進大国のアメリカは2004年のブッシュ政権時代にパキスタンとアフガニスタンでのタリバンやアルカーイダとの闘争で武装ドローンを頻繁に使うようになった。その後、オバマ政権がこの対テロ戦争でのドローン使用をさらに大幅に拡大した。アメリカ政府のCIA(中央情報局)や米空軍の「ドローン・パイロット」が地上基地からの操作で無人機を使って標的にロケットやミサイルを撃ちこむのだ。

CIAの発表ではパキスタン・アフガニスタンでの対テロ戦争ではアメリカ側は2011年8月までの1年半の間にドローンでの攻撃でテロ組織の戦闘要員約600人を殺した。だがアメリカの民間研究機関ではこの種のドローン攻撃でテロ要員の近くにいる民間人に被害が多く出ることを指摘する。一つの調査では、2010年前後の2年間でアメリカのドローン攻撃で約2600人が殺されたが、そのうち700人以上がテロ組織とは無関係の民間人だったという結果が報告された。

一方、中国の人民解放軍もドローンの兵器利用に熱心である。2013年9月には「賀龍」と呼ばれる軍用のドローンが日本の尖閣諸島付近に飛来した。このときはドローンのもう一つの主要機能である偵察が目的だったとみられる。中国軍所属の軍用ドローンが日本の領空に侵入してきた場合、日本側としてはどう対応するのか。いま日本で展開するドローン論議、ドローン対策協議でも、こうした軍事面での現実をも考えるべきだろう。


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