【ドローン事件で警察庁長官人事、混沌】~出世レースより危機管理対策を~
山田厚俊(ジャーナリスト)
「山田厚俊の永田町ミザルイワザルキカザル」
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「これで“レース”は振り出しに戻った」ある警察庁関係者はこう語った。来年のサミットを日本で開催することを踏まえ、次期警察庁長官には高橋清孝警備局長が昇格するのが“規定路線”とされてきた。
ところが4月22日午前、首相官邸の屋上で見つかった小型無人機、ドローンが事態を一変させた。24日夜に出頭し、逮捕された山本泰雄容疑者(40)によると、9日未明に実行したことが分かった。つまり、2週間近く経ってから発見されたことになる。
本来、警備局長は、エリートコースのド真ん中。髙橋局長は、その“出世街道”をひた走ってきたわけだが、思わぬ躓きで目の前のハシゴを外された格好だというのだ。
そこでほくそ笑んだのが、公安関係者たちだった。しかし、それも犯人の出頭という形でご破算になったという。どういうことか。公安関係者と付き合いの深い永田町関係者がこう解説する。
「警備強化の名目で、公安にもその役目が回ってくると“皮算用”をしていた。麹町署に設置された対策本部は公安が仕切り、事件解決に向け、鼻息が荒かった」
公安主導で事件解決となれば、公安の存在が一気に増し、予算も膨らみ、権限も大きくなると踏んでいたのだという。ところが、犯人が自ら出頭という形で事件は落着。公安関係者は瞬く間に意気消沈してしまったというのだ。
テロ対策やドローンなどこれまで存在しなかった機器などへの対応など課題は山積。新たな規制も含め、今後の警備の在り方もさまざまな議論が必要となっている。新技術への期待もあり、単純に規制ありきではダメだとの声も多い。まずは政治の場で、有益な議論を期待するほかない。
加えて、警察庁には出世レースで色をなすより、真摯な態度で危機管理対策を一丸となってやっていくより他はない。