[宮家邦彦]【G7、中露の領土変更を批判】~中国名指しは避ける~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年6月8-14日)」
今週は盛り沢山だ。まずはドイツでのG7首脳会議から。8日発表された首脳宣言では、「中国名指し」こそなかったが、「東シナ海・南シナ海での緊張を懸念」するとともに、「平和的紛争解決、世界の海洋の自由利用の重要性」に言及した。更に首脳宣言は、「威嚇、強制または武力の行使、大規模な埋め立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」すると明記。誰が読んでも対象は中国だ。欧州諸国も理解が深まったようだから、ここら辺が落とし所だろう。
〇欧州・ロシア
同じくG7首脳宣言では、昨年のロシアによるクリミア併合を「違法」として非難、すべての当事者に本年2月の停戦合意尊重を求めるとともに、ロシアの対応次第では対露制裁の強化もあり得るとされた。相変わらず欧州の立ち位置は微妙だ。
対露政策ではドイツの「一歩後ろ」あたりが日本の適正な立ち位置だと思う。安倍首相のサミット・パーフォーマンスも板についてきた。G7との協調という戦略的枠組の中で、戦術的に対露対話を進める、というのが正しいアプローチではないか。
12日にはギリシャの対IMF返済と国債リファイナンスの期限が来る。6月だけでも15億ユーロ以上、7-8月は70億ユーロを超える巨額であり、救済されなければギリシャはデフォルトだ。遂にデフォルトのない事実上のデフォルトを考える時が来たのか。
そんな危機的状況の下でも、隣国イタリアでは9日にローマのタクシーが、11日にはピエモンテ州の鉄道が、それぞれストライキを計画している。同日はフランスの労働組合も教育改革反対のストを行うという。やはり、あの欧州は健在のようだ。
〇東アジア・大洋州
14-18日に韓国大統領が訪米する。国内ではMERSで大騒ぎだが、今回米国は彼女を如何にもてなすのか、大いに興味がある。もう一つ、あまり目立たないが11-15日に台湾の「文化大臣」が訪日する。政治以外の関係はどんどん深めるべきだろう。
〇中東・アフリカ
今週最大のニュースはトルコ総選挙で与党が過半数を割ったことだ。エルドアン「大統領」の権力拡大が嫌われたようだが、彼の手法はロシアのプーチン大統領と同じ。ということは、ロシアと異なり、トルコの民主主義はまだ健全ということか。
〇インド亜大陸〇アメリカ両大陸
今週は特記事項なし。
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。