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.社会  投稿日:2015/6/29

[相川俊英]【税金滞納議員へのお目こぼしにNO!】~熊本県菊池市、滞納議員に辞職勧告へ~


相川俊英(ジャーナリスト)

「相川俊英の地方取材行脚録」

執筆記事プロフィール

議員を特別扱いし、税の徴収に手心を加えていた事実が明らかになった。今年1月24日に取り上げた熊本県菊池市の税滞納議員へのお目こぼし疑惑である。

昨年12月から真相を解明していた菊池市議会の調査特別委員会(荒木崇之委員長)は6月23日、「公平な納税をゆがめかねない徴税業務が長年にわたり行われていた」と最終報告した。そして、市税を滞納していた市議5人(うち現職は2人)に市が差し押さえしないなどの特別扱いをしたことで、滞納額に加算される延滞金の一部計100万円が時効消滅していたことも明らかにした。つまり、税徴収のお目こぼしである。

5人の市議は2006年度から2011年度にかけて、固定資産税や国民健康保険税などの市税を滞納していた。滞納額は最も多い議員で100万円を超えていた。これに対し、市は督促状や催告書を出すだけでとどまり、議員報酬(年額約500万円)などの差し押さえに踏み切らなかった。現場の担当職員が懸命に進言しても、その都度、上司にはねつけられていたという。

ところが、2012年の春頃から滞納議員の存在が市民の耳に入るようになり、街中が大騒ぎとなった。議員報酬をもらいながら税を滞納することなど、本来、あり得ないし、あってはならないからだ。真面目に納税している住民を愚弄する行為に他ならず、怒りの声が広がった。

これに大慌てとなったのが、滞納議員たちだ。それまでの滞納分をこっそり完納し、2012年度以降はきちんと納税するようになった。そして、何食わぬ顔して議員バッチをつけ続けたのである。滞納していたことを名乗り出る議員も謝罪する議員も誰一人、いなかった。

市民の間から滞納議員の実名を明らかにすべきとの声が広がった。しかし、市は「個人情報」という理由でこれをあっさり退けた。納得できない市民が非開示決定の取り消しを求める訴訟に出たが、熊本地裁も福岡高裁も「個人情報の保護」に軍配を上げた。滞納議員らはホッと胸をなでおろしたに違いない。

滞納議員問題は疑惑のままで幕となるかと思われたが、2014年の市議選などで流れが変わった。事実関係をきちんと解明しなければ市民の信頼を取り戻せないと考える議員が増え、調査特別委員会の設置につながった。そして、約半年間に及ぶ調査の最終報告に至ったのである。これを受け、菊池市議会では現職の滞納議員2人に辞職勧告決議案が提出される模様だ。また、情報開示請求があり議員に滞納があった場合、実名を公表する議員倫理条例の改正案が発議される見込みである。

各地で税をめぐる地方議員の話題をよく耳にする。滞納議員の存在や議員への特別扱いの疑惑である。今や日本はあり得ないことが次々に起こる社会になっている。ここは制度を変え、立候補する時に納税証明書の添付を義務付け、さらに当選後は毎年、納税証明書を提出させるようにすべきではないだろうか。もちろん、首長も同様だ。

※トップ画像/菊池市HPより引用

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