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.社会  投稿日:2015/7/15

[相川俊英]【固定資産税過大徴収、総額1億円超!】~神奈川県伊勢原市の仰天ミス、40年余 1~


相川俊英(ジャーナリスト)

「相川俊英の地方取材行脚録」

執筆記事プロフィール

行政が行う事務に間違いはないと思い込んでいる人が多いが、行政も時としてミスをおかしてしまうものと認識を改めるべきだ。鵜呑みにせず、自分でチェックしてみる姿勢が必要ではないか。例えば、固定資産税の課税額である。

全国各地で固定資産税を過大徴収していたケースが表面化している。市町村の担当者のポカミスや勘違い、連携不足などによるもので、事態を憂慮した総務省は昨年9月、全国の自治体に注意喚起と技術的な助言をする通知を出した。それでも行政側のミスが疑われるケースはなくならない。こんな現在進行形の事例を紹介したい。

神奈川県に住むAさんは、伊勢原市内にある団地の家屋を競売で取得した。その団地は1973年に分譲されたもので、22棟600戸からなる。専有面積は同一で、全て48.98平方メートルだ。他所にも不動産を持つAさんは、固定資産税額が高いのではと不審に思いながら納税していた。

3年に1度の固定資産税の評価替えの今年、Aさんは自分で調べてみることにした。資料を集めて分析すると、Aさんの疑問は消えるどころか膨らむ一方となった。部屋の専有面積48.98平方メートルに対し、固定資産税明細書に記された床面積は63.39平方メートルとなっていた。集合住宅の場合、共用部分の床面積が加算されるので、課税対象面積が専有面積を上回ることは別におかしくない。

それでAさんは登記簿などで1棟(5階建て)の建物全体面積を調べてみると、2205平方メートルだった。この棟は40戸に区分されているので、1戸当たりの共有部分も含めた面積は55.125平方メートルとなる。固定資産税課税明細書に記された床面積は63.39平方メートルなので、実際の建物より大きなものとなる(この団地では管理事務所や集会場が別棟となっていたが、その分は別建てで課税されている)

なぜ、実際の建物面積よりも過大な面積に評価されているのか、Aさんはその根拠を知りたいと思い、伊勢原市の担当課を直接、訪ねることにした。5月のことだ。自分の素朴な疑問を解きほぐしてもらいたいという思いであった。

ところが、Aさんの問い合わせに行政側はしどろもどろとなった。数値の根拠の説明どころか、資料がないというのだった。家屋見取図が市に保管されておらず、確認できないというのである(その後、市は外部から見取図を入手したという)。Aさんはびっくり仰天したのである。

Aさんが動き出して約2か月後の7月10日、伊勢原市は固定資産税などを過大徴収していたことを認め、謝罪した。誤ってバルコ二―を床面積に算入していたため、各戸の評価面積を8.27平方メートル広く算出していたのである。Aさんの指摘通りであった。

伊勢原市の団地で過大に徴収された固定資産税と都市計画税は、1973年度から2015年度の累計で1戸あたり約18万4600円。伊勢原市は1986年まで遡って取り過ぎた税金を還付し、あわせて加算金(金利)も支払うことを明らかにした。600戸すべてがその対象で、総額は約1億4826万円にのぼる。

(この記事は[相川俊英]【固定資産税過大徴収、再発防止策に疑問符】~神奈川県伊勢原市の仰天ミス、40年余 2~  に続く。本シリーズ全2回)

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