中国賭博業者が日本の議員らに賄賂工作か「外国勢力が我が国の意思決定に影響を与えたのか、安全保障の観点からしっかりチェックすべき」国民民主党玉木雄一郎代表
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(梶谷友花)
【まとめ】
・米司法省が日本のIR事業に絡み、日本の国会議員らに賄賂を渡したとして、中国のオンライン賭博業者のCEOを、海外腐敗行為防止法違反などの罪で起訴。
・国民民主党玉木代表は、「どういう目的で渡されたのか、どういう対象に渡されたのか、調査することが必要」と述べた。
・「外国からの勢力が我が国の意思決定に影響を与えたのか、安全保障の観点からもしっかりチェックすべき」と述べ、臨時国会の党首討論で質問する可能性を示唆した。
記憶に新しい、カジノを含む統合型リゾート(IR)担当の内閣府副大臣が収賄容疑により逮捕された事件。具体的には、秋元司衆議院議員が中国企業から現金を受け取ったとして、2019年12月に東京地検特捜部に逮捕された。
そして今回、アメリカ発のニュースが政界を震撼させている。
米司法省が日本でのIR事業に絡んで日本の国会議員らに賄賂を渡したとして、中国のオンライン賭博業者の元最高経営責任者(CEO)を、海外腐敗行為防止法違反などの罪で起訴したというのだ。起訴されたのは中国・深センの「500ドットコム(現・ビットマイニング)」のCEOだった潘正明被告。
潘被告は2017年から2019年にかけて、190万ドル(約2.9億円)をコンサルタントを通じ日本の政治家らに提供したと供述。5人の政治家の中には、石破茂首相の側近、岩屋毅外相が含まれている、と報じられた。
岩屋氏の名前は2020年にも浮上した。この時岩屋氏は、「中国企業から現金を受け取ったことはない。天地神明に誓って、不正には関わっていない」と断言して、中国企業側からの現金受領を全否定した。
石破茂元幹事長(当時)は、2020年1月地元鳥取で、「国民に向けて説明する場が裁判だけで良いはずはないので、国会審議を通じて明らかにすべきことは明らかにしていかねばならない」と記者団に語っている。
今回再び浮上した疑惑に対し玉木代表は、「どういう目的で渡されたのか、どういう対象に渡されたのか」調査することが必要だ、としたうえで、「外国からの勢力が我が国の意思決定に影響を与えたのか、与えていないのか、ここは安全保障の観点からもしっかりチェックすべきだと思いますので、必要に応じてそういった質問を検討していきたいなと思っております」と述べ、28日から始まる臨時国会における党首討論にて、この件に関し、石破総理に質問する可能性を示唆した。
以下、玉木代表との一問一答:
安倍:党首討論の中身を公募していますが、あまりマスコミが大きくは取り上げていない問題があります。米司法省が中国のオンライン賭博業者を起訴したとの報道があります。そしてその業者の証言で、日本の国会議員にお金を渡したという話があるわけです。これについて、実際どうだったんだ、ということを明らかにしなければいけないと思いますが、この問題について(党首討論で)質問する予定はありますか?
玉木:今ブロードリスニングといって、代表質問を我が党でやるときには党内の議員とか地方議員だけじゃなくて、広く皆さんからご意見をいただいてから質問を決めていくという民意と直結する質問、あるいは政策づくりということを心がけておりましたので、これからも続けていきたいと思います。
様々なご意見をいただいていますが、今安倍さんがおっしゃったのは、確か5人に対してお金が渡っているのではないかということなので、それがどういう目的で渡されたのか、どういう対象に渡されたのかということについては、きちんと調査をすることが必要だと思います。
それに現職閣僚も含まれていますので、その意味では外国からの勢力が我が国の意思決定に影響を与えたのか、与えていないのか、ここは安全保障の観点からもしっかりチェックすべきだと思いますので、必要に応じてそういった質問を検討していきたいなと思っております。
それ以外の玉木代表会見:
玉木:まず私から、冒頭、先般行われました名古屋市長選挙で我が党に長く所属をしていた、そしてまた選挙においては我が党が推薦をした大塚公平議員が敗れました結果を見ると、完敗ということで大変残念でありますけれども、敗因をよく分析してなぜ勝てなかったのかしっかりと選挙結果に向き合っていきたい。
そしてまた、もちろん市政の話ではありますけれども、国政を含めたあらゆる選挙に影響を与えると思っていますので、しっかりと結果を分析した中で次につなげていきたいというふうに思っております。
一つ言えるのは、いわゆる各党相乗りという形になりましたけれども、この間、各県選挙がありましたが、既存政党に対する不信感といったものをどうしても相乗りになるとそれぞれの政党の言うことを入れようとして足して2で割るようなことをどんどんやっていきますから、主張が2分の1になったり、4分の1になったり、8分の1になったり、16分の1になったりしていったことで、やっぱり明確で強いメッセージを出していくということが、今の選挙ではどういう主張であっても重要になってくる中で、なかなかそれが出し切れなかったのかな、というのも敗因の一つではないかなと思っています。こういったことも含めて、またネット戦略等がどう影響を与えたのか与えていないのか、こういったことも分析をしてまいりたいというふうに思っております。
2点目は、昨日も103万の壁の問題について自民党の税調でも本格的議論がスタートいたしました。浜口政調会長、古川税調会長を中心に3党での協議もこれから本格化していくと思いますけれども、いわゆる財源の問題であるとか、また全国知事会の皆さんからも様々なご意見をいただいておりますけれども、地方への影響等を総合的に判断して、我々としてもこれからの交渉に臨んでまいりたいと思っております。
ただ、我々が申し上げているのは、インフレと円安と賃上げで国や自治体の税収が非常に増えているということです。これは事実です。国だけではなくて地方自治体の地方税収の総額も3年連続上振れていますし、債権の発行、特に臨財債の発行なども新規の発行はなかったり、あるいは非常に抑えられているという現状がありますし、こういった公的セクターが、非常に財政が改善する一方で国民の暮らし家計が厳しいという中で、いわばインフレ増税になっている部分を適切にお返しできないのか、特に憲法25条が保障する生存権の観点から控除額を拡大することが今マストではないか。税金を取って使う側の立場ではなく、税金を払っている側の立場に立って物を言う政党や政治がないと、常に税金を使う側の都合と立場の政治ばかりになってしまいますので、いろんなご批判と反論はあることは重々承知しておりますけれども、だからこそ税金を使う側ではなく集めて使う側ではなく税金を支払っている側の立場に立った政策、政治、税制を実現できるように頑張ってまいりたいと思っております。私からは以上です。
記者:報道でご発言がありました103万円の壁の見直しについてお伺いします。昨日の全国知事会議で税収減を懸念する地方の首長の発言の裏に総務省の工作があったとする玉木代表の発言について、村井全国知事会長が強い憤りを感じている、我々が国のコントロール下に置かれることは全くないと発言するなど、反発が相次ぎました。こうした反発への受け止めと、玉木代表として、この発言を撤回なり修正なりされるご考えというのはないでしょうか。
玉木:ちょっと工作という言葉が知事会の皆さん、特に村井会長にご不快な思いを抱かせたとしたら、それはお詫びを申し上げたいと思います。ただ総務省が、知事会は特にそうですけど、各首長さんに一定のご説明をするということは通常行われていることだと思いますし、もちろん税収がこれだけ減りますよ、という話は当然言っているんだと思います。ただ、財務省も言っていますけれども、国はプライマリーバランスが赤字ですけれども、地方はプライマリーバランスはこの間常に黒字になっていますし、地方税収も先ほど申し上げたように、非常にこの間伸びていますし、過去10年間の上振れは8兆円を超えています。そういった実態、また先ほど申し上げたような臨財債を含めたある種借入れに頼るような財政状況も急速に改善しているということは、これは国だけじゃなくて地方にも、税収が当然ですけれども非常に入ってきているということであります。地方財政について語るのは非常に難しいのは、自治体によっては非常にいいところと悪いところが混在しているので、なかなかマクロの議論がしにくいんですけれども、これは財務省の資料をまさに見ていただくと分かるんですが、地方財政は非常に改善してきているのも事実。その一方で税収がたくさん入ってくるのはいいことなんですけど、払っている側からするとより取られているということにもなるので、そのバランスを取りながらもちろん行政サービスをどうしっかり維持するのかというところもあるんですけれども、トータルとしての議論をしっかりやっていくことが必要ではないかなと。加えて、少なくとも交付団体に関しては一定の実質的に一般財源の水準は一定に保つというルールがありますので、それに基づいて交付税措置が行われることになっていますので、単に税収が減ったら地方に入ってくる収入全体が自動的に減るというものでもないので、交付税措置も含めてお考えをいただきたいなと。ただ地方の皆さんのご懸念もわかりますから、そういったものを踏まえた上で我々も地方財政に迷惑をかけるつもりはありませんので、どういう解決策ができるのか、これからしっかり政調会長や税調会長の協議を後押しもし見守りたいと思っています。
記者:もう一点、名古屋市長選の関係で、選挙ではSNS上で根拠の乏しい情報が飛び交い、選挙戦に影響を与えた可能性があるとも指摘されています。SNSをめぐる規制のあり方についてどうお考えなのかお伺いします。
玉木:私は基本的には規制すべきではないと思います。よく若い人がSNSを見て投票したということを言いますけれども、若い人はいろんなことをよく見てますから、デマがあることも含めてSNSの情報をよく見ていると思います。他にテレビも新聞もいろいろありますし、情報を入手するルートが多様化したということであって、SNSを見てそれで判断して短絡的に投票しているとは実は私は思いません。
ただ一方で、いわゆるフェイクニュースであるとか、根拠の乏しい情報が流布しやすいという性質を持っているのも事実でありますので、そういったファクトチェック機関をどのように日本で構築していくのか、国によっては公的セクターがファクトチェックを行うという国もありますけれども、ただそれは表現の自由とかに対して公的な権力が介入していくことに対しての慎重さも求められるので、民間の中でそういったファクトチェック機能をどう充実させていくのか。例えば今Xではコミュニティノートが付くようになってますけど、ああいうふうなことも含めて虚偽情報を早期の段階で抑えていく、あるいはプラットフォーマーに対しての一定の責任もこれから求めていくことが必要ではないかなと思います。特にプライバシーを著しく侵害するような虚偽の情報が出回ったときにノーティスアンドテイクダウンという制度があって、事実かどうかを判断する前に晒し続けると人権侵害が進むので一旦それを落とすということが海外では運用として行われるところもありますので、そういうルールづくりをどうしていくのかは、これからしっかりと考えていくことが必要だと思いますし、総務省でも議論がありますが、例えば憲法21条の表現の自由とかにも関係しますので、憲法審査会などでも議論をしていければと思っております。
記者:政治改革に関連して伺います。今日初めて与野党協議会が行われるということになります。政治とカネの問題を受けて今日から動き出したことに対する意見と、与野党7党が参加して公開の形で行われるということになったことに対して、国民民主党としてはどのように臨んでいきたいとお考えでしょうか。
玉木:まず2つあります。我々が石破総理との党首会談で求めてきた与野党協議の場が設置されたことは非常に良かったと思います。また、できるだけオープンにということを申し上げていたので、オープンで行われることについても評価をしたいと思います。
大切なことはこの臨時国会で一定の成果を上げる、そういった合意がぜひ得られることを求めます。もちろんやりたいことやるべきこといっぱいあるんですが、風呂敷を広げすぎるとこの臨時国会で具体的な果実を早期に得ることができないので、この臨時国会で何をするのか、来年の通常国会で何をするのか、そういったこともしっかり切り分けながら、やはり我々としては選挙の大きな争点にもなったいわゆる政策活動費については廃止の方向で合意を得るということ。あとずっと課題の旧文通費についての公開と、残金の国庫返納ですね。あとは第三者機関をしっかり設置するということ。結局政治家だけでいくら議論しても自分たちを縛るルールは作れないということがこの間の反省でもあるので、この第三者機関の設置は改正政治資金規正法の不足にも盛り込まれていることですから、これをまず早期にやると、しかもこの3つはこの臨時国会で成案を得る、法改正が実現できるように、この与野党協議の場にも積極的に関わっていきたいと思っています。
記者:先週19日夜のYouTube番組で、ご自身の進退について、党倫理委員会の結論を踏まえた上で、最終的にご自身の進退を自ら判断するということで決めていきたいとおっしゃいました。ただ、代表をめぐる報道以降も国民民主の支持率は上昇傾向が続いていて、先日の毎日新聞の調査では先月比で4倍に増えています。榛葉幹事長は別の番組で、いたずらに撤退すればいいというものではないという話をされましたが、直近の支持率や世論の期待感を踏まえて、代表は今どのような考えか教えてください。
玉木:国民民主党あるいは国民民主党政策に対してご期待をいただいていることについては、本当にありがたいというふうに思っています。だからこそ、結果を出していかなければいけないということで冒頭ご質問がありました103万の壁についてもしっかりと我々の主張をしながら国民の期待に応える決着を図っていきたいと思います。
私自身のことについては今おっしゃっていただいた通りで、倫理委員会にしっかり向き合って、また出た結果については誠実に向き合っていきたいと思っております。
記者:先ほどの政治改革の与野党協議のことで質問なんですが、立憲民主党など一部の党は企業団体献金を含めて包括的な内容で合意をすべきだということを指摘します。そうすると、どうしてもやっぱり時間がかかってしまうわけですけれども、今一部合意できる部分だけ今回の臨時国会で合意をしてしまうと、その先やるモメンタムがそがれてしまうのではないかということを一部言っている方もおられます。そうした意見についてはどのようにお考えでしょうか。
玉木:そういった懸念も当然だと思いますので、企業団体献金ももし与野党協議の場で合意できるのであれば、あるいはすぐにできなくても将来やるということが書き込めるのであれば書き込んだらいいと思います。また、全党に関わることですから、ぜひそういった合意ができることを我々も期待したいし、できるだけの協力をしていきたいと思っています。
記者:ただ一方で、今時点で各党確実に合意が取れるというものを先じて臨時国会でやることも必要だということですか。
玉木:この辺誰がどのように温度を取っていかれるのかということなんですけども、やっぱりこだわりすぎて結局何もできないというのが一方でまた問題だと思いますので、何をこの臨時国会、せっかく開く臨時国会ですから、年内に実現するのか、年度内に実現するのか、来年の通常国会でやっていくのかということはある程度整理をして、それで全党一致して改革に取り組もうということになることが重要だと思います。ですから普通、与党と野党で分かれていろんなことが議論されますけど、中には例えば与党であっても、公明党さんはどちらかというと我々野党が言っていることに近いことをおっしゃるところもあるので、それが与党協議の良さだと思うので、本当にいいものについては速やかに結論を得て臨時国会で法改正につなげていくことが重要だと思っています。
記者:最後に、第3者機関についてお伺いしたいのですが、自民党案では政治資金で、例えば外交に関わる部分など機密情報の取り扱い等々配慮が必要なものについて第3者機関の監督を受けるということにしていますけれども、第3者機関というものについて国会に設置するのか、行政機関として設置するのか各党の意見が分かれていますけれども、改めて国民民主党としてはどうすべきか、また自民党案についてどう思うかお聞かせください。
玉木:私どもはもともと古川本部長も申し上げたとおり、東日本大震災が起こった後の国会事故調のイメージをしていたので、国会に設置をするということです。行政権限が立法府の人間のあれこれを何か左右するということは、三権分立の観点からも若干疑義が残るので、やるとしたら国会の機関としてやってはどうかということを提案しています。
ただ、行政組織としてやっていくという案を公明党さんなんかも出されているし、自民党もそれに近いと思うので、ここはこれからの協議かなと。大事なことは、独立性がちゃんと担保されて公平公正な調査権限があるかないか、あるいは建議権といってこういう制度改正をした方がいいですよということを提案できるような権限がちゃんとあるかどうか、こういったことを我々としては中身をしっかり議論していきたいと思っています。
記者:政治改革も含めて28日に臨時国会が開会するのですが、国民民主党の意向も反映された補正予算も提案される予定ですし、代表がおっしゃったようにハングパーラメントになって初めての、また石破内閣にとっても初めての本格的な国会論戦と思います。国民民主党としてはどのような姿勢で臨んでいくのか、またどういったようなものを特に注視していくのか意気込みをお願いします。
玉木:やはりハングパーラメントと今おっしゃいましたけれども、中ずり国会ということで不安定さばかりが強調されますけれども、我々野党にもこれまで以上に大きな責任が課せられた国会だと思っています。もちろん、政治と金の問題をはじめとして問題があるところについては厳しく指摘をし改善を求めていきたいと思いますが、一方で反対批判だけではなく国民のための政策の提案実現、そして粘り強い合意、こういったものに貢献できるような国会運営に我々としてもしていきたいと思っていますので、あくまで国民のための国会運営という視点を忘れずに取り組んでいきたいと思いますし、加えて我々がずっと言ってきた対決より解決、そして政策本位、誰と組むかではなく何を成し遂げるのか、こういった視点をより重視して国会に臨んでいきたいと思います。
記者:先週の金曜日に連合の芳野会長と会談されたという一部の報道があります。これはどういった目的で、またどのようなやり取りがあったのか教えてもらえないでしょうか。
玉木:選挙後のご挨拶ということで様々なことについて意見交換をさせていただきましたが、明日また連合の芳野会長をはじめ連合の皆さんとの懇談会がありますので、その後記者会見をしますので、内容等については合わせてそこでお話をさせていただきたいと思います。
記者:先週の榛葉幹事長の会見で、防衛増税に関して今の状況を見ると増税する必要はないのではないかという風に指摘をされておりました。自民党との協議の中では宮澤税調会長が防衛増税の開始時期についても国民民主党との協議が必要だという考えを示しておりますが、現状の国民民主党としての防衛増税に対する考え方と、それが協議に盛り込まれていく場合の予算だったりとか今後の賛成姿勢にどう影響するのかということを教えてください。
玉木:私たちは基本的には増税する必要がないという立場です。というのは、前の自民党幹事長の茂木幹事長も、現職の幹事長時代に増税しなくてもできるとおっしゃったので、自民党の幹事長が増税しなくてもできると言っているんだったらできると思いますもっと具体的に言うと、外為特会の剰余金の増え具合であるとか、あるいはそもそもの税収の上振れとか、そういったものを少し精緻に分析をしながら、当時決められたときと比べて経済状況も変わっていますので、その中でどうしていくのかという議論をしたらいいと思いますが、茂木前幹事長も大丈夫だとおっしゃっているであれば多分大丈夫なんでしょう。
記者:それが協議に持ち込まれることに関しては特に反対するようなことはありませんか。
玉木:まずは自民党の中の意見をまとめていただきたいですね。一応法律上は一定の取り決めがありますけれども、自民党の中でもさっき申し上げた通り、典型は前幹事長の茂木幹事長ですけれども、党内でも様々議論があることは承知しているので、我が党にどうこうというふうに外に向かって言う前に、まず自民党内で防衛増税についての考え方を一度整理していただきたいなと、そこからですね。
記者:103万円の年収の壁についてお伺いをします。与党税調からは所得税の基礎控除を引き上げる一方で、所得税の基礎控除について引き上げの対象から除外する分離案についても、意見が一部出ているというふうに聞いております。この考え方への受け止めをお聞かせください。
玉木:地方税を分離するという話ですね。確かに毎日新聞さんが一番最初に報じられたと承知していますけれども、我々はまだ正式に聞いてないので、どういう趣旨なのかということについては一度正式に、もしこれが政府案与党案ということであれば一度しっかりとご意見を伺った上で判断をしていきたいと思います。ただ、我々が103万円の壁といったのは、やはり100万円前後で税負担が増えるので就労抑制が起こってしまうということを改善しようということを申し上げているので、国税に合わせて地方税も当然対象になるし、あるいは生存権ということが、地方税はどちらかというと社会に対する参加費みたいなところで一律10%なのでちょっと国税とは趣旨が違うのかもしれませんけれども、生存権の保障という観点からそれをどう考えるのか、いろんな意見をぜひそういう案が正式に来るのであれば、まずは話を聞いてみたいなと思っていますが、現時点においては正式に来ていないので、コメントは差し控えます。
記者:関連して、他にもいくつかの一部報道によると様々な案が与党の中では考えられているということですけれども、今後参考協議でもそういった案が示されることはあるかと思いますが、改めてこの引き上げの実現に向けてどういった姿勢で協議に臨まれていくのかお伺いしたいです。
玉木:先ほど申し上げたように、もちろん税収とか、特に地方の自治体の首長さんが税収を気にされているのも分かりますし、財源をどうするんだという話もあります。ですから、そういった意見もよく聞きながら、歳出、歳入両面での見直しができないのか、歳出はもっと抑えられるところはないのか、あるいは歳入はもっと増える要素はないのか。例えば税収弾性値は1.1をずっと使ってますけども、過去25年間の平均は2.7を超えてますから、インフレになった時の税収弾性値をデフレ時代の数字と同じものを使って税収見積もりを低く考えるままででいいのかなど考えるところはいくらもあると思いますので、ぜひ、そうは言っても野党なので、最新のデータとか情報とか今執行されている予算についての情報を必ずしも持ち合わせておりませんので、そういったものを開示もいただきながら建設的な議論ができればなと思います。
ただ大事なことは、どうしても政府与党、あるいは地方自治体の首長さんもそうなんですけど、税金を取って配る側の立場にならざるを得ない。今、税金を払う側の味方が政治的にいないので、私たちはあくまで税金を取って使う側ではなく、税金を一生懸命働いて払っている側の立場で物を言っていきたいなと思っております。
記者:参議院選について伺います。維新の吉村大阪府知事が一人区の調整について野党で予備選をしたらどうかという提案をしているのですが、それについて国民民主党としてどのように受け止められているのか教えてください。
玉木:比例復活がないので、その意味では一人区というのは一定の調整が必要になることを私も理解しています。ただ我が党として正直申し上げて、議席を増やしたとはいえ今の体力と実力で、じゃあ一人区にどれだけ候補を立てれるのかということを考えますと、極めて限定的ではないかなと思っています。ですから、調整の必要性はもちろん理解はするものの、調整の必要となる対象選挙区が果たしてどれだけあるのかということも現実的に考えながら、一方で全国比例はもちろん自公とも戦いますけど、他の野党とも戦うということになってますし、また東京などが典型ですけれども、6議席も7議席も通るところはもちろん与党とも戦いますけど、他の野党とも戦いながら議席を取る選挙区でありますので、その意味では一人区を考えるとできるだけ調整となりますが、複数区とか全国比例になるとできるだけ他の野党とも一定の差別化をしながら戦っていかなければいけないという複雑なゲームを戦うことになっておりますので、そういった我が党のサイズ規模、実力、そういったものも踏まえながら一人区での調整をどこまでするのかしないのか、これは今後考えていきたいと思います。
記者:静岡の連合の関係で、静岡の県教組の方が国民民主党を支持政党から除外するという決定をされたんですけれども、それについて国民民主党から何か反論等はありますでしょうか。
玉木:あれも毎日新聞のスクープだったんですかね。すごいね、毎日新聞さんは。その静岡のことは榛葉幹事長に聞いていただければなと思います。
記者:議席が4倍になって政党支持率も立憲に迫るような勢いなんですけど、新人教育と参議院候補、この辺について代表としてはどういうふうに進めることを考えていますか。
玉木:新人教育というとおこがましいんですけども、それぞれ独立した大人ですから、この実際の国会、これから臨時国会が始まりますけれども、その中で学んでいくことが多いと思いますし、また先輩議員、特に国対委員長中心に国会での振る舞い、やり取り、質問の仕方など、自治体議員の出身者もいますけれども、そういったところは先輩として伝えるところはしっかり伝えていきたいと思っております。
あわせて大事なのは来年の参議院選挙の候補者擁立でありますけれども、我が党の一つの弱さだった、この衆議院選挙でも出たのは、結局候補者が足りなくて他党に議席を譲るということに象徴されるようにやっぱりある種の擁立力というのが大事だと思ってますので、議席が増えて頑張れば当選できる選挙区も増えてきていると思いますので、ぜひ、公募のみならず、いろんなルートやネットワークを使って有意な人材を発掘して擁立につなげていきたい。ただ、そう時間が残っているわけでもないと思っていますので、年内に目処をつけられるところはつけたいと思いますし、できるだけ早く全国比例及び選挙区での擁立に全力を傾けていきたいというのを思っております。
記者:大塚先生の大差敗北というのは私は大ショックなんですよ。やっぱり国民民主党で、今のこの組織に何かしたら関与してほしい、あるいは次の参議院選挙にもっとやってきてほしいと、それは大塚先生のあれですけど、やっぱりこの方をどういうふうにお考えになっても何か関与してほしいと思っておられると思うんですが、この辺りの協議についてはどう思うのですか。
玉木:おっしゃる通りで、私も一緒に共同代表したり、私の下で政調会長をやっていただいて、今の国民民主党の政策を作り上げる中でも重要な役割を果たされた方ですので、見識のある方というのは、多くの与野党の政治家の認識の位置するところだと思います。なので、ご本人のご意向はお聞きをしたいと思っていますけれども、今はある意味敗戦処理ということでやっておられますので、少し落ち着いたらまたお話をしてみたいと思っています。
記者:名古屋市長選挙のことで言うと、今後の分析ということではあるんですけれども、これまで与野党の相乗りというのは首長選挙で行われてきて勝ってきた例の方が多いかと思います。こういった中での厳しい結果というものは、都市型選挙の特徴なのかあるいは時代が変わってきているというようなことなのか、そのあたりの危機感みたいなものはありますでしょうか。
玉木:選挙のあり方が変わってきているなという実感はあります。都市に限らず。だから今回の選挙結果はしっかりと分析をしていかなければならないと思っています。私どもとしては出口調査ですけども、国民民主党支持層の半数以上が国民民主党出身だった大塚さんに入れていないということはなぜなのかというところを、まずしっかり分析することが必要ではないかなというふうに思いますね。多分わが党を支持してくれている人の多くは政策に注目して支持していただいている方も多いのではないかと、逆に言うと政策が曲がってしまったり違ってしまうとすぐ離れてしまうということもあるのかなと。ですから冒頭申し上げましたが、相乗り選挙で勝つというのは、自治体にとっては全ての政党を支持する人のために頑張りますということなんですけど、じゃあ、他の政党と調整していくたびにだんだん角が丸くなっていくので、政策をと言って期待している人にとってみれば、その政策がだんだん影が形がなくなっていくというプロセスにもなってしまうので、その辺が実際どうだったのか、政策の訴えやそれがどう届いているのか、届かなかったのか、この辺もよく分析をしなければならないと思っています。
記者:ちょっと言論空間に対する抽象的な質問になってしまうのですが、財務省のXの公式アカウントに対して批判的なリプライが殺到し続けているという現状があります。こちらは103万円の壁に対する国民的関心が高いことの表れだという見方もあるんですが、玉木代表自身も冷静かつ建設的な議論が大切だと発信されております。この状況はどのように受け止められているのか、そして財務省そのものに対する不信感が広がっていると感じになられているのか、財務省出身でもある玉木代表としてどう思われているのかお聞かせください。
玉木:まず、財務省に対する誹謗や中傷はやめられた方がいいと思いますね。もちろん財政を司る役所として設置法にもある種財政の健全性を確保するというのはまさに法律で課せられた彼らの責務なので、そのことに対してしっかりやるというのは、財務省の当然のお仕事だと思います。私も玉城チャンネル、YouTubeでも発信しましたけど、財務省は海の中の岩みたいな存在で、水位が高いときは見えないんですけど、水位が下がってくると忽然と姿を表す。でも財務省からしたらいつも同じところにいるんですけど、どういうことかというと、やっぱり政治的な安定とか、あるいは政治的な調整力が高いときには財務省って見えないし、少し例えばこの役所の予算を削ってこっちに持っていこうとか、これはそれぞれ自民党と族議員がいますからなかなかできないんだけど、それができるような環境の時には財務省は出てこないんですけど、ただ今みたいにどちらかというと政治の、特に自民党とか公明党今までの与党の方の力が落ちてくると結局その調整能力を役所に頼るざるを得なくなる。しかも財務省は1年に1回ちゃんと予算を組みましょうということがある種法律で義務付けられる、憲法でも義務付けられていますから、年度の予算編成というスケジュールはそれに従って粛々とやっているのが、財務省主導でやっているように見えてしまうというところなので、あまり財務省が全部悪いというふうに、私はするのは間違っていると思っていて、むしろ政治の側の調整力や政治力が落ちていることの勝算ではないかと思いますからね。だから財務省を責めるのではなくて、政治家がしっかりとそれぞれ立場があっても議論をして物事を決めていくということができていない、そのことを財務省にぶつけているだけになっているのではないかという。これは我々も政治家として自戒を込めてやっていかなければいけないと思います。なのである種の誹謗中傷や陰謀論はやめていただいて、データと数字に基づく建設的な議論を、財務省を含めた政府ともまた与党ともやらせていただきたいな、というふうに思っています。
写真)玉木雄一郎代表 2024年11月26日 東京・千代田区
ⓒJapan In-depth編集部
記者:参議院選について、先ほど一人区での調整に言及されていましたが、昨日香川選挙区で公募を開始したかと思います。ここについては他の野党と選挙区の調整を事前にされていたのでしょうか。
玉木:昨日、山本県会議員幹事長が選考委員会の仲間の地方議員と一緒に会見をしましたけれども、確かその中で我々としてはまず当党として前回も多くの議席を県内でもいただいたので、公認候補の両立を図っていきたいということを申し上げ、また連合であるとか他党に対しても、もしいい候補が見つかればご理解も求めていただきたいということを、確か発言していたと承知しております。ただ見つからないことには調整も何もないので、まずは我が党の公認候補たる人が出てくるのかどうか、まずは公募をしっかりやろうということだと思います。
記者:そうしますと、候補が決まってから多くの調整、例えば野党一本化の候補となるのか、その辺の意識はどうでしょうか。
玉木:そもそも野党の候補が出てくるのかどうか、またそもそも我が党公認候補が立てられるのかどうか、昨日公募を始めた段階ですので、今の段階で何か前提を置いて話すことは差し控えたいと思います。
記者:日銀は、金融緩和の縮小を進めていて、年内に利上げがあるのではないかというような感じで、こういった金融政策の現状、経済状況についてどのようにお考えかお聞かせください。
玉木:非常に重要な局面を迎えているなと思っています。2年連続で高い賃上げを実現して、30年ぶりの新たなステージに入りつつあるということについては評価をしています。しかし8月などを見ても消費が弱くなっていますし、実際去年の8月に比べて今年の8月の消費支出はマイナスになってますから、来年の春冬でまた高いレベルの賃上げが実現できるかが勝負だと思ってます。
ですので、ここで過度に財政や金融を引き締めたりすると、またデフレに逆戻りする可能性はあると思っています。
ですから、今は政策変更に関しては慎重に見極めるときだと思っていて、来年の春冬でさらに持続的な賃上げ、特に中小企業の賃上げが実現できるかどうかということを見定めた上で政策変更すべきだと思っています。
あまり拙速な政策変更をすることは、財政政策も金融政策もやるべきではないというのが私たちの考えです。
記者:2年内でさらなる利上げが出ていると思いますが、そういった日銀の動きに対して国民民主党として何かできることがあるのか。例えば政府としては日銀の方といろいろな声明をされている経緯があると思いますが、今の野党の国民民主党としてどのようにこの政策決定に関わる可能性があると考えていますか。
玉木:日銀の方ともよくコミュニケーションをさせていただいていますが、実はそんなにずれてないなと私は思っています。
彼らも経済状況をよく見ていますし、特に1月のトランプ政権が発足してトランプの経済政策というのは、アメリカの金利を上げる方向に行くのか、下げる方向に行くのかということについて、結構意見も分かれています。
このまま全部やれば、いわゆるインフレーショナリーといって、インフレを加速させるような政策になりかねません。
減税もあるし、関税も上げると物は上がっていくことになるので、物価上昇を抑えるためにさらに金利を下げるのではなく上げていかなければいけない。そうなると日米金利はさらに開いてドル高、円安になっていく。
そうして円安が過度に進むと日銀も上げなければいけないので、上げようという話になっていくのではないか。
という話がある一方で、トランプさんがやりたいのは実は利下げ。 それをやる環境になるためには、おそらく今言っている政策は全部できない。ではどちらなのか。
そこは、来年1月から発足するトランプ政権の経済政策を見ながら、金融政策をうまくハンドリングしていくことが大事だと思いますので、今はいずれにしても急速な政策変更はしない方がいいと思っています。
記者:先ほどの質問の関連で、玉木代表の不倫問題の出所審査に関しての質問です。103万円の壁の問題について、党議員議会の決断を踏まえ審査の判断をされておられましたが、この党議員議会とは具体的にはどのような方々で構成されているのですか。
玉木:私も議員議会にかけられている立場なので、手続きや内容等についてコメントする立場にないので、差し控えたいと思います。
記者:倫理委員会の具体的なメンバーについて知りたいと思うのですが。
玉木:それも含めて私の今の立場からは、コメントすることは差し控えたいと思います。
記者:では、浜口さんの見解をお聞かせいただけますか。
浜口:代表がおっしゃった通りで、倫理委員会はちゃんとメンバーを決めて対応しておりますので、ただそれを公表するかどうかというのは、諮問をされた幹事長とも相談しながら対応していきたいと思います。
記者:決してブラックボックスにはなるということはないですか。
倫理委員会自体がどのような方々で構成されているかわからない。
最後までわからなければブラックボックスになると思います。
そうすると、それが下した判断というのは、正当性がなくなると思うのですが、いかがでしょう。
玉木:倫理委員会で出た結果については、皆さんにもしっかりご説明を報告していく、開かれたものになっていくと思っています。
結果については当然発表させていただく、ということになると思います。
記者:皇室典範について2点伺えればと思います。
5年前に出された『#日本ヤバイ』で、愛子さまが天皇に即位される道だけは開いておくべきだというふうにおっしゃってましたが、5年たち、どのように皇室典範を改正すればその道ができるのかということが1点。
2点目は、国民民主党は男系男子の天皇の立場だと思いますけれども、この20年旧宮家の男子から選ぼうという意見が多々見られましたが、結局いるという人の意見が竹田恒康さんや八木秀次さんから出ましたが結局見つかっていない。一体男系男子の天皇の在り方をどうやってやっていくべきか。以上2点お願いします。
玉木:我々は、長い歴史のある皇党の安定継承は極めて重要だと考えており、まずは過去の事例も参考にしながら安定継承を図っていくという立場に立っています。ですから男系男子が原則です。ただ、過去には男系の女性天皇も存在していたということですので、そういった男系の中で何か決めていくというのがまず大原則だと思います。
一方で、この間の変化でいうと、政府の有識者会議が3つの案を出してそれを政府から衆参の議長に対して示し、衆参の議長から各党の代表者に対してそれぞれの意見を示してほしいということが行われました。今、各党でそれぞれの考え方を議長の前で申し述べ、国会としての総意を形成しようとしている途上にあると思います。
この3案についてどう考えていくのかが、現時点におけるベースになると思いますが、我々としては安定継承につながる方策については、できるだけ選択肢は多い方がいいと思っています。
ですので、第1案、第2案を原則としつつ、第3案についても検討してはどうか、というのがこれまで申し述べてきた我々の考え方であります。
ただ急ぐと思うのは、今のルールでいけば女性皇族の方は結婚すれば皇籍から離脱をされます。そうなると、もう皇族数が減少することしか目前は想像できない状況になっています。
ですから1案、2案、3案の中で取り分け急ぐのが、第1案の女性後続の方が結婚後もその身分を保持できるということ。
ここについては速やかに対策を打たないと女性天皇などの議論すらもできなくなってしまう。
仮にそれが男系の女性天皇であっても、対象者がいなくなると何もできなくなりますから、公務の負担の軽減という観点からもです。
ということで、額賀議長が再任されてご挨拶こられたときも、この皇位の安定継承と公務の負担軽減の意見の一致については議長のリーダーシップで速やかにやってくださいということを改めて申し上げましたし、我が党としても全面的に協力をしていきたいと思っています。
(一部、省略)
(了)
トップ写真)国民民主党玉木雄一郎代表(2024年11月24日 東京都千代田区)
ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。