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.国際  投稿日:2015/11/5

[古森義久]【朝日新聞のアメリカへの八つ当たり】~核兵器廃絶決議案評決で反対した中国擁護~


古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

執筆記事プロフィールBlog

国連で日本が提出した核兵器廃絶決議案の11月3日の表決で、反対したのは中国、北朝鮮、ロシアの三国だけだった。朝日新聞はもちろん核廃絶には大賛成だから反対国には激しい非難を浴びせてしかるべきである。だが朝日新聞11月4日夕刊のコラム「素粒子」はアメリカだけを叩くのだった。またまた「朝日新聞はなぜここまで中国を擁護するのか」という私の年来の疑問が頭をもたげてしまうのだ。

この「素粒子」は以下の記述だった。

「『核なき世界』はポーズだけだったか。米国オバマ政権が核廃絶決議に手を挙げず。身もふたもない本音がのさばり」

日本の核兵器廃絶案に対しアメリカは棄権をした。棄権国は17にもあがった。そのなかには韓国、インド、フランス、イギリス、イスラエル、イランなども入っていた。朝日新聞が棄権というだけで「身もふたもない本音がのさばり」と、やや下品な表現で罵声を浴びせるのなら、その対象には韓国もフランスもイギリスも入るのだ。いやいや核廃絶案に同調しないことがけしからんというならば、まず真っ先に明確な反対票を投じた中国やロシアや北朝鮮をののしるのが自然な順番だろう。ちなみに賛成国は156だった。

だが朝日新聞のこのコラムの筆者は中国をも北朝鮮をも問題にせず、反対票を投じなかったアメリカだけに攻撃の矛先を向けたのだ。奇妙としかいいようがない。なぜ「主犯」の中国に対して「身もふたもない本音がのさばり」という非難を浴びせないのか。ここでどうしても浮かぶのは「朝日新聞は何故ここ迄中国を擁護するのか」という疑問である。実はこの疑問の言葉は私が今年8月30日付の当コラムで書いた記事の見出しそのものなのだ。([古森義久]【朝日新聞は何故ここ迄中国を擁護するのか】~「中国側の陛下の謝罪要求」という実態隠す~

朝日新聞のこの政治偏向は「反米親中」と評すほかあるまい。この傾向はこの新聞の伝統でもある。そのアメリカでオバマ政権が登場し、従来の他の政権よりは朝日新聞にとっては親近感を覚えやすい政治志向をみせていたから、今回の核廃絶案に棄権という態度はことさら朝日新聞側の失望や憤慨をかったのかもしれない。しかしその動機がなんにせよ、一つの提案を徹底擁護する側にとって、反対者をそのままにして棄権者だけに攻撃の矢を放つというのは異様だといえよう。

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