[古森義久]【NHKは改憲が嫌い?】~改憲1万人集会vs護憲70人集会~
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
このニュースには「改憲派、護憲派それぞれ集会」という見出しがついていた。この見出しから判断すれば、文字通り、改憲、護憲の両派の同じような集会が開かれたことの報道だと思うだろう。ところが大違いだったのだ。
まず紹介されたのは日本武道館での憲法改正を求める大集会の光景だった。国家基本問題研究所の桜井よしこ氏や自民党、民主党などの代表が共催の形をとり、インド、ベトナムからの代表も加わってのこれまででも最大規模の改憲派集会だった。参加人数は主催者側発表で1万1千人、画面には巨大な日本武道館が1階、2階席からアリーナまで人で満員の状況が映った。武道館の最大収容が1万3千席だというから、発表どおりの膨大な人数であることは一目瞭然だった。
ところが続いてNHKが同じニュースとして報じたのは「今の憲法を守るべきだという立場の人たちが東京都内で集会を開き」という項目だった。その光景は公立中学校の小さな教室ふうの部屋、しかも窓のないクラスルームのような小部屋に年輩の男女がぱらぱらと座っているシーンだった。こんな集いを武道館を埋め尽くす人数の集会と同じレベルの集会だとして報道するのだ。
NHKはしかもこの護憲派の集いを「東京都内で集会」というだけで具体的な情報をなにも報じなかった。私が自分の目で見ただけでは参加者は30人ほどだった。だがNHKは「主催者側の発表でおよそ70人」というのだ。
主催者側発表を信じたとしても、1万1千対70とは並列かつ対等、均等に並べて提示すべき数字だろうか。だれがみてもあまりにかけ離れた数字である。であるのにNHKは無理をして護憲派の集会をプレイアップしてみせて、改憲派の大集会と同じふうに扱ったのだ。その背後にあるのは明らかに報道上での護憲派の超優遇である。改憲派への偏見、あるいは差別と呼んでよいだろう。