[古森義久]【中国を庇い、日本を糾弾する朝日新聞】~倒錯した反日親中の姿勢に疑問~
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
朝日新聞は日本国民が民主的に選んだ政権や政府がそんなに憎いのか。そして中国への批判はそんなに嫌いなのか。そんなことを実感させられる記事が同紙12月15日の夕刊に載った。3面の文化ページの「回顧2015 論壇」という見出しの記事で、この1年の日本の論壇の総評だった。筆者は「編集委員 塩倉裕」となっていた。さてこの記事の冒頭を以下に紹介しよう。
「『安倍総理 長期政権への抱負を語る』という見出しの記事が月刊WILLの表紙トップを飾ったのは秋のことだ(11月号)。同じ表紙に『中国は今も昔も〈パンツ製造所〉』との見出しが並んでいた。近隣の国や民族を見下すような言葉が公然と世を流れる傾向は今年も変わらなかった。新しい傾向があるとすれば、それらの国々を『敵』とみなす言説の台頭だろうか。歴史認識をめぐる近隣国との対立部分に焦点を合わせ、『歴史戦』(産経新聞)や『歴史戦争』(月刊Voice)へ読者を誘う動きが浮上しつつある」
この評論記事はさらに、「いま私たちが取り組むべき重要課題は歴史での近隣国との闘争ではない」として、日本側で「等身大の社会実像をつかもうとする多様な考察が提起されている」と述べていた。批判の視線は近隣国ではなく、日本側にこそ向けよ、という檄だといえる。
この評論でまず奇妙なのは中国を「パンツ製造所」と評したことをあえて安倍総理の抱負の記事にくっつけて、「他の国々を『敵』とみなす言説」と大げさに非難している点である。さらにはアメリカを舞台とする中韓両国からの歴史問題での日本糾弾への日本側の対応をも他国の危険な敵視と断じているのだ。
ところがこの評論が日本側での「多様な考察」として紹介するのは安保法案反対団体のSEALDs代表が日本政府を「すでに数えきれないほどの命を見殺しにしてきた政権」と断じた雑誌記事(現代思想10月臨時増刊号)なのである。
さらにこの朝日評論はその雑誌記事が多額の奨学金を返済しなければならない女性が妊娠したことを取り上げ、「今の制度ではシングルマザーでは無理だろうとの絶望しか見えず2人は泣き、友人は子を堕ろした―体験に根ざした『命を馬鹿にする政治』への憤り」を強調したことをプレイアップしていた。
要するに朝日新聞は安倍政権が「数えきれないほどの命を見殺しにしてきた」と断じ、「命を馬鹿にする政治」を推進してきたと総括する政治的主張をほめたたえる形で紹介しているのだ。その背後には中国を批判することは止めて、日本の政府を糾弾しようというアピールが明らかに浮き上がっている。簡単にいえば、日本のメディアとしてはあまりに倒錯した反日親中の姿勢である。
朝日新聞は日本国民の多数派が民主主義的な手続きで選んだ安倍政権を日本人の命をも奪う「敵」としてみるようにさえ映ってくる。