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.経済,ビジネス  投稿日:2015/12/28

[遠藤功治]【ZMP上場前夜、自動運転元年 その4】~特集「2016年を占う!」自動車業界~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

−沸騰する株式市場

自動運転の最終形を論議するのはなお、時期尚早かもしれません。ただ、ZMPの会社名が示唆するように、そのゴールへのスタートは切られたばかりで、既に2020年には政府の後押しもあり、3,000台の完全無人タクシ―が東京オリンピック・パラリンピックに合わせて走っている可能性が高い。僅か5年先です。

“国策に売りなし”というのは、株式市場で昔から言われている格言です。ZMP上場の噂はもう1年も前から市場に流れており、その上場申請が近いのではないか、上場は2015年末から2016年初めではないか、という噂も広まり、知る人ぞ知るZMP関連相場が出現しました。まだZMP自体の上場がなされる前からです。2015年9月から2015年12月末までの4カ月ほどで、ZMPへ出資している会社、ZMPと業務提携をしている会社を中心に、大暴騰となる株価が多く出現しました。以下、その一例です。

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この表では、2015年10月1日の株価と12月25日の株価、及びその間の最高値の株価を比較したものです。表の一番最後に日経平均、トヨタ、日立の株価を参考に載せてあります。ご覧の通りこの3カ月あまりで、日経平均は6%程度の値上がり、トヨタは4.6%、日立は6.6%の値上がりです。

これに対し、アイサンテクノロジーの株価は5倍から6倍高、アートスパークHDの株価は2.7倍程度に高騰しました。テクノスジャパンしかり、ネクスグループしかりで共に30%-80%の値上がりです。ZMPに出資しているドリームインキュベータも30%以上上昇しました。

確かに各企業の時価総額は100億円から300億円程度の所謂小型株で、このようなテーマ性を伴う相場環境では、大型株に比べ株価が上がり易い特徴があります。その一方で、自動運転では先頭を行くトヨタと、やはりADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)で積極的な日立の株価が殆ど動いていない事実は興味深いことです。ZMP自体が上場する前からこのような状況なのですから、実際に上場されれば、他の自動運転関連銘柄と共に、2016年初頭から、更なる株価の波乱要因になるかもしれません。

−パンドラの箱を開けますか?

つい最近、フォードがGoogleと自動運転で提携するとの話しが出てきました。Googleは自動運転技術は手掛けるが、車の生産にはタッチしないと言う点でZMPと同じスタンスを取ります。よって、Googleの自動運転車を誰が生産するのか、というのは気になるところです。今回の提携により、フォードが真っ先にGoogleの自動運転システムを搭載した車を生産する可能性が高くなりました。

フォード1社なのか、それ以外の自動車メーカーとも今後提携していくのかは定かではありませんが、取り敢えず、フォードが手を上げた訳です。ちなみにGoogleが現在公道で実証実験を行っている自動運転車のベース車はトヨタのプリウスです。実は、Googleはトヨタとも、生産における提携を模索していた節があります。ただトヨタから見れば、自動運転の知能という領域で、他社に技術的優位性を取られることは避けたいところです。結果、トヨタはGoogleとの提携には消極的でした。自動運転の実現に於いて、ここに一つのジレンマがあります。

前述した通り、GoogleやZMPはLevel-4を目指し、トヨタなどの既存の自動車大手はLevel-3を目指します。ここには根本的な利害の相違が存在します。全ての車がLevel-4となれば、既存の自動車メーカーが“走り”に開発の焦点を当てた車作りは過去のものになります。ドライバーがいない、自分で運転をしない、車が単なる効率的な無人の移動手段になる訳ですから、自動車メーカー間での独立色を出すことが困難になります。デスクトップのコンピューター同様、ハードでの競争が殆ど意味を無くし、自動運転の技術力が競争力の中心になります。

自動車メーカーにとって、GoogleやZMPと提携することが、自分の首を絞める結果につながる(かもしれない)、という点で、パンドラの箱な訳です。時価総額がトヨタの2倍以上と巨大なGoogleはまだしも、ようやく上場が実現するZMPなどの小規模な会社が、トヨタのような大手に敵う訳がない、いずれは吸収されるか撃沈されるかで、勝ち目は殆ど無い、という投資家が多いのも確かです。

ただその一方で、そうした自動運転技術を持たない、車体生産の下請けにならざるを得ない自動車メーカーは、ひょっとするとGoogleに買収されるかもしれません。自動運転技術とは、将来自動車業界の大再編、それも自動車間だけではなく、他の業種を巻き込んでの再編に繋がる可能性を秘めています。2016年はその元年になるかもしれません。

(完 本シリーズ全4回。
【ZMP上場前夜、自動運転元年 その1】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
【ZMP上場前夜、自動運転元年 その2】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
【ZMP上場前夜、自動運転元年 その3】~特集「2016年を占う!」自動車業界~
も合わせてお読みください)

※トップ画像:©ZMP、ARJ


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