[古森義久]【あのホンダ議員が慰安婦解決合意に難色】~「最終的で不可逆的な解決」の困難さ~
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
日本と韓国の慰安婦問題をめぐる合意はその記述どおりに長年の慰安婦論議に「最終的で不可逆的な解決」をもたらすのか否かが注視されているが、アメリカ議会で日本糾弾の先頭に立ってきたマイク・ホンダ下院議員(民主党)は同合意に失望を表明し、日本側へのさらなる要求を述べていることが明らかとなった。アメリカ側ではオバマ政権はすでに同日韓合意を完全に歓迎したが、議会の一部ではなお日本への不満がくすぶっているわけだ。ホンダ議員は昨年12月28日に日韓両国外相が慰安婦問題解決の合意を発表してまもなく、ワシントンとカリフォルニアの両事務所を通じて声明を出した。同声明は以下のような内容だった。
「日韓外相の合意が日本側がもう歴史を糊塗せず、次世代の日本人に(慰安婦問題の)正しい歴史を教えることを誓っていない点で深く失望した。この声明が公式ではなく、特に日本の国会の承認を得ていない点にも失望した」
「私は安倍晋三首相に日本政府がその種の歴史教育を実施するよう誓約することを促したい。次世代への教育のみにより私たちは間違った歴史を繰り返すことを防ぎ、すべての人権を保持することができるのだ」
「しかしなおこの日韓合意は女性の名誉と尊厳を回復することに向かっての正しい方向への一歩であり、その意味では歴史的な礎石だろう。だが完璧にはほど遠い」
ホンダ議員はアメリカ国内の中国系や韓国系の政治組織と連携して慰安婦問題などの歴史案件で日本を長年、非難してきた。特に中国政府とも密接なきずなを保ち、カリフォルニア州を拠点とする反日中国系組織「世界抗日戦争史実維護連合会」とは1990年代から共闘して、慰安婦問題だけでなく南京事件、731部隊、米人捕虜問題などで日本側の過去の「残虐行為」を一貫して非難してきた。2007年7月のアメリカ議会下院での慰安婦問題での日本糾弾決議もホンダ議員が提案者となっていた。
ホンダ議員は慰安婦問題についてはなお根拠のない「日本軍が組織的に20万人の女性を強制連行して性奴隷とした」という非難を繰り返している。今回の日韓合意への批判も韓国や中国の日本糾弾勢力の意向をそのまま反映した動きだといえる。
このように今回の日韓合意は慰安婦問題を国際的に最終的かつ不可逆的に解決することにはならない展望の例証だともいえよう。