.社会  投稿日:2016/6/11

婦人科検診を受けて! 女性のがんを減らす為に

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勝部元気(コラムニスト・(株)リプロエージェント代表取締役社長) 

開会の挨拶を務めた神奈川県臨床細胞学会会長の加藤久盛氏は、「若い人や未婚の人が大変な思いをする例が本当に後を絶ちません。もう少し早く来てくれれば…」と切実な思いを述べ、今回の開催にあたって「検診を身近にするために、来場者と一緒に考えたい。意識の高い方々から是非周りに発信して欲しい」と呼びかけました。

ゲストスピーチを行ったシンガーソングライターの井上苑子氏は、「カゼをひかないので、これまで体のことを考えたことがあまりなかった。でも無知ゆえに不安になることもあります」と述べた。素敵な歌を会場に響かせ、「早めに検診に行くことが大事と知り、みんなと一緒にお勉強したいと思います!」と自ら検診に行く考えを会場に届けました。

横浜市立大学付属病院産婦人科部長の宮城悦子氏によるレクチャーでは、若年化の問題や、命が助かってもQOLに差があるという問題が指摘されました。また、日本の子宮頸がんの検診率は42.1%まで上昇したものの、まだまだ低いままであることや、HPVワクチンの正しい情報の在り方にも懸念を示されました。

第一部のトークセッションは、「経験者と乳がん・子宮頸がんの未来を考える」がテーマ。まず、乳がん経験者でモデルの藤森香衣氏から宮城氏に対して、「乳がん・子宮頸がんに関して学校で教える機会は無いのですか?」という質問が投げかけられ、宮城氏は「少しずつ文部科学省も動いて来ている。本当であれば期末テストで出して欲しいです」とより一層教育の必要性を訴えました。それを聞いた安倍氏は「カナダでは小学生から授業でやっている」と、事例を紹介。日本の健康に関する教育の遅れが問題視される一方で、先日退院したばかりというアイドルの夏目亜季氏からは、「まだ病気について周りに語る文化が無い。偏見が多くて悲しいです」と、制度だけではなく、文化・社会的な問題としても取り上げるべき、との指摘がなされました。

次に、安倍氏から「家庭の中で健康に関する会話が不足しているのでは?」と問題提起がなされ、宮城氏も「本来は年頃の娘に母親から話しかけるのが理想的だが、それができていない人が多い」と同調。それに対して総合司会を務める松田陽子氏は、「命が一番大事ということをしっかり伝えることで、子供も大切にされていると感じると思います」と自分の子育ての経験から意見を述べました。

一方、藤森氏は「残念ながら妊孕性(にんようせい)の問題について意識が弱い人が多いように感じます。単に今の選択というよりも、将来にかけての選択だという実感が無いように思える」と、啓発活動で苦労している思いが伝えられました。宮城氏からは「最近は情報が多くて困っている人もいるのでは?セカンドオピニオンも有効に活用して欲しい。それを嫌がる先生は良くない先生です」とアドバイス、安倍氏も女の子は若いうちから婦人科のかかりつけ医を持つとよいのではないか、とその重要性を指摘しました。

女性からだ会議のファウンダーでシンクパール代表理事の難波美智代氏は、日本医療政策機構が発表した、「婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失を合計すると、少なくとも6.37兆円にのぼる。(医療費1.42兆円、生産性損失4.95兆円)」とした調査結果を紹介。「これは消費税3%弱に当たる。女性の労働力によりGDPがあがっても女性が健康を損ねては、結果として国家にとっても大きな負担となる」と指摘しました。

それに対して宮城氏は、職場でのルール作りと国の法律によって企業単位での取り組みを徹底することを訴え、安倍氏からは、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践し企業価値向上を目指す、いわゆる「健康経営」の重要性が指摘されました。

難波氏が「ルールとして決めてしまうのが良いと思う」と指摘すると、松田氏は自身の団体で「ママ友検診」としてそれを実施したところ、45人が異常を発見できたという成果を報告。トップダウンの重要性を証明しました。

ここで自身も子宮頸がんに罹患した経験のある参議院議員の三原じゅん子氏が会場に到着しトークに参加。現状の性教育の問題に言及し、テクニック的なことではない生物学的な体の仕組みの教育は分けて学ばせるべきではないかと提案。また、「視聴覚室で女子だけが月経について教えられて男子が知らないというのはおかしい」と男性も女性の健康について知るべきだという考えを示すと共に、「検診に女性向けのチェック項目を入れるよう、今後も訴えて行く」と述べました。また、三原氏はアスリートが無月経になりがちという問題も指摘。無月経は骨折等のリスクも高まることから、外国ではコーチが男性でも理解しており、それゆえ無月経にならない一方で、日本はまだその理解が足りないと問題提起しました。

最後にこれからの活動や意気込みについて聞かれると、難波氏は「あなたはたまたま命が救われたんだから今後も発信し続けて!」と言われたことが今でも活動のバネになっている」と述べ、「検診をたしなみに」をスローガンに、シンクパールの活動をピンクリボンのように拡大して行きたいと意気込みを語りました。

また、各パネリストも、「からだと心の健康、大切な人のために」(宮城氏)、「みんなで知る努力」(藤森氏)、「毎年人間ドッグを受ける」(三原氏)、「他人事から自分事へ」(松田氏)、「一人一人の呼びかけが大きな力に!」(夏目氏)のメッセージが出され、第一部は終了しました。

後半は、第19回国際細胞学会議/第57回日本臨床細胞学会爽快(春季大会)会長を務める青木大輔氏が会長挨拶を行い、「患者さんになってから来るかたが本当に多い。ただただ『可哀想』という一言に尽きる」と、現状を憂える気持ちを述べました。

続いて行われた第二部のトークセッションでは、「誕生日には検診を!ママと子供の笑顔を守るからだの約束」をテーマに、各分野の第一線で活躍するパネリストによって、検診を広めるための具体策について、活発な意見交換が行われました。

モデレーターを務めたNHK国際放送局デスクの山本恵子氏が「検診に行かないのは、時間が無いというのが一番の原因」という現状を紹介し、「いかに行動変容に繋がるのが良いか?」という質問がパネリストに対して投げかけられました。

慶応義塾大学法学部4年生でmanma代表を務める新居日南恵氏は、学校の検診に入れることや、スマホのプッシュ通知でお知らせしてくれる機能を提案、スリール株式会社代表取締役の堀江敦子氏はオシャレで身近に感じるイメージ作りや、ワンコインで受けられるようにして敷居を下げることを提案しました。株式会社AsMama代表取締役CEO甲田恵子氏は「自分が元気でいなくちゃ周りにいる人みんなも大変な思いをすることになる」という意識を持つことで、ご自身も経営者として多忙な日々を過ごす中、先にスケジュールを抑えてしまうという方法で対応しているとのこと。

NPO法人ファザーリングジャパン代表理事の安藤哲也氏からは、自身の団体で活動するシングルファザーの中には、がんで妻を亡くしたというケースも多いという報告がなされ、「男性も妻がいなくなると家計や自分のキャリアが厳しくなるのだから、リスクヘッジとして考えるべきだ」との指摘がなされました。また、安藤氏は1万円の商品券プレゼントによって児童虐待防止の取組みへの参加率を上げた事例を紹介して、難波美智代氏も「検診に行っている人は医療費が安くなるような仕組みがあれば良い」と、インセンティブの有効性も指摘されました。

一方で、株式会社ママそら代表取締役の奥田絵美氏は、「いつかいつかと思いつつも(検診に)行けていない」と述べ、新居氏も「一度検診を受けて問題無いと危機感が薄れて、来年は行かなくても良いのかなって思ってしまう。モチベーションがある人はすごい」と、正直な思いを紹介しました。

甲田氏は「(婦人科の検診は)あまりされて嬉しいことじゃないという側面もあると思います」と述べ、「検診を受ける人に対して事前事後のメンタル的なケアはなされているところはあるのですか?」と質問を投げかけました。聖マリアンナ医科大学産婦人科講師の戸澤晃子氏は「病院はまだまだサービス業として遅れているので、そこは改める必要があると思う」と医療業界の課題も指摘。その一方で、「病院に行ってから検診の内容を知るとビックリする人もいるので、予めどのようなことをするのか知っておくと良いと思います」というアドバイスや、病院の公式HPで医師の写真を見て、信用できそうな医師に決めた人もいるという事例を紹介しました。

堀江氏からは「検診に行く前に」という冊子のようなものがあれば良いのではと提案が出る等、検診を広めていく上で様々な対策案が示されました。

最後のメッセージコーナーでは、各パネリストから、「未来の自分のために検診を考える」(堀江氏)、「まずは自分から!」(奥田氏)、「元気でさえいれれば 元気でさえいてくれたら」(甲田氏)、「未来を明るくするために少しでも興味を持つ」(井上氏)、「大事な人へのプレゼントに」(戸澤氏)、「当たり前を守るために習慣を」(山本氏)等の提案がなされ、当日の日程は終了となりました。がんにかかる女性を減らすために、検診の重要性を一人でも多くの人に伝えていく地道な努力が今後も求められています。

トップ画像:©︎一般社団法人シンクパール

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この記事を書いた人
勝部元気コラムニスト・(株)リプロエージェント代表取締役社長

1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。また、現在はジェンダー論、現代社会論、教育論等に関する社会課題を専門とする若手論客として、WEB媒体、雑誌、TV等での執筆・講演活動も展開。現在の連載は『朝日新聞社WEBRONZA』『ハフィントンポスト』『女子SPA!』等。著書『恋愛氷河期』(扶桑社)が発売中。執筆活動を開始するきっかけは、ブログ『勝部元気のラブフェミ論』で、男性で子宮頸がん予防ワクチンを打ったレポートが拡散されたこと。朝日新聞社主催等で講演活動も行っている。所有する資格数は66個。

勝部元気

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