「日本の将来を作る」イノベーターらが大結集 日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
課題先進国と呼ばれる日本が、行政、企業、NPO、研究機関等の枠組みを越えて、社会課題の解決のための革新的な手法を各領域で活躍する人々と議論し、実践、そして解決する場をつくる。それが「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」の目的の一つだ。
9月15日、日本財団ビルにおいて、日本財団の記者会見が行われた。そこでは、今月28日から30日にかけて、「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」が東京港区の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催されることが発表された。コンセプトは「にっぽんの将来をつくる」。
このフォーラムは、社会課題の解決のために、分野、立場を超え、連携して取り組むことを大前提としている。これには2つの理由がある。1つは、「新しい革新的なアイデアを生むため」だ。同じ社会問題を見ていても立場が違えば視点も行動も違う。それぞれの違いを認めて、ぶつけあい、融合することがアイデアを生む。もう一つの理由は、「それぞれの強みを活かすため」だ。例えば企業は事業ノウハウをもっていたり、NPOは現場のことがわかっていたり、学者はデータにまとめて検証ができたり、それぞれの強みを持っている。それらを最後に持ち寄るのではなく、最初から連携することが必要だという。
初日の28日、衆議院議員の小泉進次郎氏による基調講演がある。これからの将来を担う若きリーダーの一人として、フォーラムのコンセプトと同様、「にっぽんの将来をつくる」というテーマで講演する。2日目の29日からは、各分野の著名な専門家100人以上が講師となり、計30の分科会が行われる。分科会のテーマは以下の5つ:
「Vision」新しい社会の羅針盤
日本がこれからの時代に重視すべき価値、目指すべき社会像について議論。
「Entrepreneurship」社会変革の担い手
社会変革のうねりを起こす起業家に焦点を当て、彼らの描く未来像、それを実現する覚悟・思いを紹介。
「Collective Impact」集合知の新次元
これからの社会課題解決にはセクター間連携が必要。それぞれのセクターの在り方、連携手法について議論。
「Solution」ソーシャルイノベーションの最前線
個別具体的な社会課題について課題の現状に触れるとともに、最先端の解決手法・アプローチを紹介。
「Ecosystem」イノベーションを生み出す国へ
社会課題解決を支える資金、人材、情報について最新動向と今後求められる施策等を議論。
これらのテーマはすべて、社会課題の解決に必要な要素だ。例えば、「Vision」のテーマでは、「ソーシャルイノベーションという方法」という分科会が開かれる。東京財団CSR委員会の座長を務める小宮山宏氏、東京大学名誉教授で経済学者の岩井克人氏、東京財団研究員で政策プロデューサーの亀井善太郎氏の3人と参加者の対話によって、「ソーシャルイノベーション」の意義や、価値を探っていく。
「Solution」のテーマには、「自殺大国ニッポン」という分科会もある。NPO法人Light Ring.代表理事の石井綾華氏、ひきこもりUX会議主宰の恩田夏絵氏、歌人の鳥居氏が登壇し、若者の抱えている「生きづらさ」とは何か、どうすれば「生きづらさ」をもたずに生きられる社会をつくれるのか、新しいソリューションを提案する。
今回のソーシャルイノベーションフォーラム2016は、「ソーシャルイノベーター支援制度」がメインとなる。この制度は、新たな発想と明確なビジョンを持ち、セクターを越えたチームを組成し、社会課題の解決に向けて活動を推進していくことのできるリーダー=「ソーシャルイノベーター」を全国から公募し、支援する取り組みだ。今年の春に全国公募したところ、225件の応募があり、専門家を交えた厳正な審査を経て、10組11人が選出され、既に上限1000万円の事業資金が日本財団から助成済みである。
彼らは多様なセクターと連携しあい、革新的なアイデアで社会課題解決へ向けて活動を進めている。フォーラムの最終日に、それぞれの組が、解決を目指す社会課題と描いている未来像、ブラッシュアップされた事業計画などについてプレゼンテーションを行い、その結果3組程度が「特別ソーシャルイノベーター」として選ばれる。彼らには、上限1億円、3年間の継続的な支援が行われる予定だ。
選出されたソーシャルイノベーターの中には、例えば年間で26万社にものぼる倒産企業の経営者が再チャレンジをする機会がない中、経営人材不足の地方企業、ベンチャー企業へのマッチングや、もう一度会社を設立するための資金提供を行うことで、雇用を創出しようとするイノベーターがいる。
また、地元の公立高校の魅力を向上させるというアプローチで、現に移住者が増加した島根県海土町のモデルを全国展開し、地方創生を促そうというイノベーターや、口腔ケアという手法を用いて全国の障害者の雇用を創出し、彼らが自活できる社会を目指すイノベーターなどもおり、多種多様だ。
これまで日本財団は、特別養子縁組の問題、再犯防止の問題、貧困家庭の子供の教育の問題、自殺の問題、障害者の雇用の促進等、様々な社会課題に取り組んできた。日々議論をし、課題解決のためのモデルケースを作っていく取り組みを、「日本財団という方法」(笹川会長)と自ら呼んでいる。
会見の中で、日本財団の笹川陽平会長は、「社会の中を見渡してみると、格差社会は想像以上に進んでいることが我々の調査で分かってきている。少子高齢化の中で様々な社会問題が存在し、広がりつつある。」と社会問題の存在を強調した。
「社会問題の解決のため志を持ち働いている人や、格差社会に沈みつつある人が、参加することでお互いが連携し、人間関係を確立し横のつながりを持ちながら、将来の明るい日本をつくる核になってほしい。」と述べた笹川会長。「ソーシャルイノベーションフォーラム2016」は9月28日から3日間開催される。
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