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.国際  投稿日:2016/11/13

突破口を求め苦悩する韓国の保守 その3


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

(この記事は2016年11月7日に入稿したものです。)

2 朴政権に対する対応で選択迫られる保守層

 2)保守劣勢の突破口をどこに求めるか

では保守層はどのような方法で国民の信頼を勝ち取るのか?こうした状況下では小手先の術数は傷口を広げるだけだ。中央突破で打開策を求めていくしかない。そうしたことから民主主義の根幹の一つである「法治主義」を徹底させることで、事態の真相を明らかにし、国民の判断を仰ぐことで信頼回復の道を探ろうとしている。

その中心内容は、朴大統領が捜査に応じるとしたからには、大統領自らが「法の裁きを受け「法の下の平等」を示すことで、韓国に民主主義が根付いていることを示すことこそ国民を納得させうる道であり、国家の威信と保守層への信頼を回復させる道だということだ。

またこの道は北朝鮮の独裁体制との違いを明確にすることで民主主義の優越性を示すことができ、北朝鮮に打撃を与えることにもなる。そして「北朝鮮もよくないが韓国も同じようなものだ」とする「独裁と民主主義のごちゃまぜ論」にも対処ができるというものである。

韓国の保守政党はこれまで多くの問題を抱えてきたが、それでも安全保障体制を維持し、国の経済をここまで発展させてきたのは彼らだ。民主主義の王道を示し「崔順実ゲート」を早期に収拾しなければ、尾ヒレハヒレのついたデマ情報が拡散することになり韓国社会は収拾しがたい事態に陥る可能性もある。北朝鮮はいま主導権を握る絶好のチャンスととらえ、デマ拡散を焚きつけるために官営メディアはもちろん韓国内の従北勢力を総動員している。

3)尾ヒレハヒレをつけたデマにどのように対処すべきか

韓国の社会病の一つが「デマ」である。デマによって自殺に追い込まれるだけでなく、デマが政権を揺るがす。その端的な例が2008年5月に始まった「狂牛病デモ」だった。北朝鮮追随勢力などが関与し、テレビ局までデマ宣伝に加担し、小学生まで参加する100万人のデモとなった。しかし結局根拠のないデマと分かったが、誰も謝罪する人はいなかった。

今回は根拠のないデマではないが、さまざまな事実に「尾ヒレハヒレ」をつけたデマが早くも横行している。そこにまたSNSとマスコミが乗っかり始めた。これも保守層にとって頭の痛い問題である。

デマ1:崔順実替え玉説

韓国のインターネット上では、崔容疑者が10月31日午後に検察へ出頭した当時と、同日深夜に緊急逮捕された後、検察の聴取を受けた際の姿を比べると、髪の脱毛やまぶた、鼻などに違いがあるとして替え玉説が広がった。

この件について韓国検察の特別捜査本部は4日、「指紋を照合して確認したところ、身柄を拘束されて聴取を受けている容疑者は崔氏本人に間違いない」と伝え、インターネットなどで広がっている崔容疑者の「替え玉説」を否定した(聯合ニュース日本語版2016/11/04 16:51)。

デマ2:朴大統領は操り人形説

崔氏が韓国の内政だけでなく外交・安保政策に至るまですべて牛耳り朴槿恵大統領は完全な操り人形だったとのデマも広がっている。

「財団法人ミル」、「Kスポーツ財団」という二つの財団の関係者がすべての政策を決めていたとするものだが、常識的に考えても、北朝鮮でもあるまいし、政治の素人が国の内外政策をすべて決めるなどは到底不可能だ。まして韓国は少なくとも民主主義国家である。手続きなしで朴大統領が政策を決定することはできない。

このデマの種火は、韓国ハンギョレ新聞が10月26日にイ・ソンハン前ミル財団事務総長とのインタビューで、彼が「チェ氏は主に自分の論硯洞(ノンヒョンドン)の事務室で各界の様々な専門家に会って、大統領の今後の日程や国家的政策事案について論議した」としたうえで、「チェ氏はこのような会をテーマ別にいくつか運営していたが、大統領のための一種の諮問会議だった」と語ったとの報道だ。そこから尾ヒレハヒレが付いたものだ。こうした内容は捜査機関によって検証されていない。またハンギョレ新聞もこの「会議」で国政のすべてが決められたとは書いていない。

 韓日マスコミの悪乗り

こうした報道に悪乗りした日本のテレビ番組の一つが「ミヤネ屋」だ。司会者の宮根誠司氏がとんでもない発言を行っていた。チェ容疑者とともに職権乱用などの容疑で逮捕された前大統領府政策調整首席秘書官安鍾範(アン・ジョンボム)を指さしながら、

 

宮根誠司:この人ら見て、絶対いい思いしてるって

出演者 :一同、ワッハハ(大笑い)

宮根誠司:これ絶対ええ思いしてる顔やで。絶対ええ思い これ首もパンパンや、絶対ええ思いしてるわ、ハイ

                  (2016・11・4ミヤネ屋)

 

と容疑者を「罪人のように断罪」する発言を行った。「ミヤネ屋」には視聴者から指摘があったという。テレビ関係者もこれは不適切な発言だと指摘している。

一部韓日のマスコミはいま、視聴率と発行部数を稼ごうとして、こうした興味本位の報道を行っている。それが北朝鮮に利用され東アジアの安定と韓日の安定にいかなる悪影響をもたらすかも考えないで。こうした「デマ」に対する対処法も、結局法治主義に基づく厳正な捜査で対処し、国民の前に真実を明らかにすることが唯一の解決法となる。そういった意味で堅実な保守層は民主主義の原点に戻ることが重要だと考えている。

 

その4に続く。その1その2。全5回)


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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