改造内閣、経済政策「見える化」を
「細川珠生のモーニングトーク」2017年8月5日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
【まとめ】
・改造内閣、経済政策議論の「活発化と見える化」が重要。
・景気回復には、子育て世代の所得を増やすことが必要。
・教育無償化は評価できるが、財源は国債や保険ではなく、あくまで消費税増税で確保すべき。
8月3日に、第3次安倍第3次改造内閣が発足した。それを受け、経済ジャーナリストの出町譲氏に、政治ジャーナリストの細川珠生氏が話を聞いた。
写真1:第3次安倍第3次改造内閣閣僚
(出典)首相官邸HP
まず、出町氏は「仕事ができそうな人を彼らの得意なポジションに置いているのではないか。」と第一印象を述べた。その中でも、経済という観点からどうか、と細川氏が質問したのに対し、出町氏は、今まで安倍政権は(経済面で)よかったところもあったと評価しながら、一方で「官邸主導ですべて決めていたところがある。」と述べた。加計問題だけではなく、経済政策も官邸主導が顕著だったと指摘した。
また出町氏は、「各省庁は存在しなくてもいいんじゃないかとぼやく官僚もいる」と述べ、霞が関に不満が溜まっていることを明らかにした。その上で出町氏は「せっかく選ばれた閣僚なのだから、みんなで経済政策を議論しよう、という雰囲気を出してもらいたい。」と述べた。
中でも、出町氏は、反アベノミクス勉強会ともいわれる党内の「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」のメンバーの一人である野田聖子氏(写真1)に注目しているという。野田氏は総務大臣として、経済財政諮問会議のメンバーでもあるため「そこで侃侃諤諤、議論してもらいたい。」と期待を寄せた。
写真2:野田聖子総務大臣
また出町氏は「アベノミクスだけが経済政策ではない。」と述べた。出町氏によると、小泉政権時は竹中平蔵氏、与謝野馨氏らが、閣内不一致といわれながらもお互いに経済政策を議論し、総理が全体像を見て何をするか決めていたという。出町氏は、当時のように「政策をどんどん『見える化』しなければならない。」と述べ、政府は政策ごとに議論を活発化させると同時に国民に分かりやすく説明する必要性があるとの考えを示した。
細川氏も「自民党の人たちひとりひとりが、決断したり、真剣に考えたりすることを怠ってきた。」と述べ、都議会議員選挙における自民党の大敗も党全体の責任であり、「身から出たさび」と述べた。
細川氏が、官邸主導といわれている現状を変えること、つまり「(大臣たちの)力を生かすことが新しい安倍内閣には必要なのでは?」と聞くと、出町氏は、「ここまでいろいろ批判されているのだから一回立ち止まって、各省庁に経済議論をさせることが必要。」と答えた。
細川氏は、2年後、消費税が2%上がることについて、これまで景気が回復していないために2回延期したことを上げ、「成長戦略で手詰まり感がある。」と述べた。
この点に関し出町氏は、今の経済で一番の問題点は消費が伸びないことであり、その理由は、本来使うべき人、すなわち子育て世代が使うお金がない」ことだとした。
写真3:©Japan In-depth 編集部
出町氏は、安倍総理が「教育無償化、すなわち小中だけではなく幼稚園から大学までという論点を出したのは問題提起としてすばらしい。」と評価した。教育無償化で、「デフレ脱却・消費増という持続的な経済成長」が期待できるという。
しかし、その財源について出町氏は安倍総理の考えに否定的だ。現在、自民党や安倍総理から出ている案が、「教育国債」である。「教育国債は所詮国債、将来の人がその借金を背負うことになる。選挙権を持たない将来の人に借金をかぶせることによって、デフレを脱却したとしても続かない。」と指摘した。
また、小泉進次郎氏が提言した「子ども保険」についても、「保険という概念も、子どもがいない人たちにとって負担が大きい。なおかつ、低所得者の人にとっても負担が大きくなる。」と述べ、その実効性に疑問を呈した。
その上で出町氏は、「やはり消費税。将来の子ども・将来の日本のためにといって消費税を上げるという決断は大切。」と消費税増税によって財源を確保することがもっとも望ましいとした。
「消費税(増税)は政治的にいつもハードルが高い。」と述べると共に、国民皆保険が維持できなくなるとみている医師が半数に上るとの日本経済新聞のアンケートを紹介し、社会保障の維持という点からも消費税について議論する必要があると述べた。
子育て世代の細川氏も、「子供が将来生きていく社会を考えたときに、もう社会保障制度は人口減少社会ではもたないことがわかっているので、多少税が上がってもしょうがない。」と述べた。また「政治家、特に自民党は、消費税を何%あげればどれくらい財源ができて何年先まで大丈夫なのか、とか、まったく別の制度にしたらこれまでの制度と比較してこうなる、とかきちんと(国民に)示して欲しい」と述べた。
最後に細川氏が「この内閣に期待が持てるか。」と改めて質問すると、出町氏は今回の閣僚たちに、「今までの反省も踏まえてチェンジしてもらいたい。」と期待感を示した。
(この記事は、ラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2017年8月5日放送の内容を要約したものです)
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。