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IT/メディア  投稿日:2018/5/4

ファクトチェックが必要なわけ


Japan In-depth 編集部(佐藤瑞季)

【まとめ】

・22日FIJ設立記念ファクトチェックシンポジウムが開催。

・politifact事務局長アーロン氏がファクトチェックの必要性を強調。

・フェイクニュースに対峙していく為にはメディア同士横の協力が重要。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=39796でお読み下さい】

 

4月22日午後、FIJ設立記念ファクトチェックシンポジウムが早稲田大学早稲田キャンパス国際会議場で開催された。第1部は、PolitiFact事務局長のアーロン・シャロックマン氏による基調講演「トランプ政権とメディア~ファクトチェッカーが対峙する『フェイクニュース問題』」が行われた。モデレーターは、ニュースのタネ編集長の立岩陽一郎氏が務めた。

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▲写真 公演を行うアーロン氏 ©Japan In-depth編集部

アーロン氏は、「PolitifactはTRUE-O-METERを用いて、様々な政治家の発言などを6段階で評価している。情報のソースにあたり、正しいかどうかを判断し、その情報源を引用文献にのせる仕組みとなっている。10年で1万5000件のファクトチェックを行い、うち40%は一部または全部に誤りがあるものであった。ファクトチェックを行なった回数は第1位がドナルド・トランプ氏、第2位がバラク・オバマ氏だ。大統領という国のトップをはじめ、政治家の発言を確認することは大切だ。ファクトチェックを行うことで、誤った発言の割合は減ってきている。 」と話した。

そして最後にファクトチェックの効果について「第一に人々をより賢くする。そして第二に政治家を脅かす。すなわち彼らに『正確な発言をしよう』と思わせる効果がある」とした。そして最後に、「我々はファクトチェックし続けねばならない。」と話し、「FIJの更なる発展に期待したい」とまとめた。

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▲写真 会場の様子 ©Japan In-depth編集部

第2部は、セッション「日本のファクトチェック最前線」が行われ、各ゲストが各々の分野や立場から、ファクトチェックに対する取り組みを発表した。白鴎大学客員教授の下村健一氏がモデレーターを務めた。

 

(1)ネットメディアの実践 古田大輔氏(BuzzFeed Japan編集長)

古田氏は、BuzzFeed Japanのニュース部門では、ファクトチェックやフェイクニュース対策に力を入れていると説明した上で、「フェイクニュースやデマは通常のニュースよりも拡散やシェアが多くなる。トランプ氏は自身に都合の悪いニュースをフェイクニュースと呼ぶ、ネット上で朝日新聞の森友学園問題の報道をフェイクニュースと非難する人がいるなど、現代社会ではフェイクニュースの定義が難しい。一方、フェイクニュースを否定する記事はなかなか広まらない。しかし、否定することで元の誤った記事が削除されるなど、新たな閲覧を防ぐことはできる。地道にやっていきたい」と話した。

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▲写真 実際に行ったファクトチェックの結果を説明する古田氏 ©Japan In-depth編集部

(2)新聞社の実践 林尚行氏(朝日新聞 大阪社会部次長、前政治部次長)

林氏は「当社では、米国に留学した政治記者の発言がきっかけで、2016年よりファクトチェックを始めた。昨年の衆院選では、安倍首相や野党代表の発言を扱った。ファクトチェック欄を設け、記事を載せることで、実際の影響はなくても、政治家の言いぶりには変化があった。例えば、安倍首相の『憲法学者の7割が自衛隊を違憲と考えている』という発言も、当該欄で扱ったことでその後このような説明をしなくなった。多様な担当を持つ記者群と全国に広がる取材網という新聞社ならではの強みを活かし、ファクトチェックを行っていきたい。」と述べた。

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▲写真 説明を行う林尚行氏 ©Japan In-depth編集部

(3)教育現場の実践 坂本旬(法政大学教授)

坂本氏は、「アメリカでは、2016年の大統領選後、子どもたちへの教育がさかんになった。10代の多くがスポンサー付きコンテンツとニュースを見分けることができないということがスタンフォード大学の研究の結果で分かった。フェイクニュースに最初に反応し、情報検索・収集のプロである図書館の力を借りて対策していくことができるのではないか」と話した。

(4)テクノロジー支援と市民参加の可能性 乾健太郎氏(東北大学大学院教授)、楊井人文氏(FIJ事務局長)

楊井氏は「ファクトチェックとはあくまで事実を確認することであり、意見を持って行うものではない。その点は十分注意しなくてはならない」と述べた。

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▲写真 説明を行う楊井氏 ©Japan In-depth編集部

第3部 はパネルディスカッション。パネリストとして、アーロン氏、林氏、下村氏、楊井氏、モデレーターとしてエッセイストの小島慶子氏が参加した。

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▲写真 パネルディスカッションの様子 ©Japan In-depth編集部

アーロン氏がフェイクニュースに対して、「我々の力にも限界がある。政府も危機感を持ち、しっかりとした対応をしていかなくてはならない。」と述べたのに対し、楊井氏は「解決に乗り出すのは本当に政府の役割なのか。東南アジアやヨーロッパでもフェイクニュース規制の動きが進んでいるがあくまでも自助機能として民間でやるべきだと思う。公権力がやるのは危うい」と意見するなど活発な議論が交わされた。

最後に林氏は「メディアの中で横断的にやっていくことが大切。できることから横の繋がりを見せていければ。」と話した。アーロンさんは「これは若いタイプのジャーナリズム、失敗を恐れずに、トライしていってほしい」とエールを送った。

トップ画像:FIJ設立記念ファクトチェックシンポジウム ©Japan In-depth編集部


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