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.経済  投稿日:2019/5/18

都市部で拡大ウーバーイーツ


嶌信彦(ジャーナリスト)

「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」

【まとめ】

・人混みの公園で初ウーバーイーツ体験。便利さをよく感じ取れた。

・運転手のモラルの問題、顧客情報漏洩発覚。一歩間違えるとリスク。

・ウーバーが今後安心して利用されるには法的規制などが必要。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45784でお読みください。】

 

今年のゴールデンウィークは、私達夫婦と娘夫婦、4歳の孫娘と5人で連れ立って都心のホテルに2泊し、のんびりと過ごした。10連休で家に閉じ篭っているのは能がないし、海外や地方の旅行は人がいっぱいで疲れる気持ちが先立ち、結局都内のホテルで休養することにしたのである。幸いポカポカ陽気で過ごしやすく、小さなテントを持って増上寺隣の芝公園に出かけた。公園は家族連れや若い男女たちでいっぱいだった。

昼時になって食事をどうするか、となった時、娘夫婦が、初めてだがUberEATS(ウーバーイーツ)を頼んでみようということになった。これは、登録したアプリからサンドイッチや飲み物、サラダなど数種類を注文すると30分以内に届けてくれるというものだった。

ただ、その公園では芝生のあちこちにテントが張られ、ビニールシートに車座になったりとグループがいっぱいで、おそらく数百人はいただろう。そんな大勢の人出の中で、はたして食事を届けることができるのか、と懸念した。また、一体この広い公園でどうやって受け渡しを行なうのだろうという興味も沸いた。どうやらGPSを利用した地図で大体の場所を探り当て、近くに来て探し出せない時は電話で連絡してくるようだった。15分もすると配達員が店を出て公園に向かっている道筋が携帯上の地図に反映され、動いている状態も手に取るようにわかった。

問題はこの公園の大勢の人の中からどうやって注文主を見つけ出すかという点だ。相手は自転車に乗り、黒いTシャツを着ているという情報だったので公園近くの道路を見ていると何台目かにそれらしい人物が現れた。私達がそばに行くと、注文品を持った若者が本当に30分以内に注文通りの品を10品ほど届けてくれた。Uber(ウーバー)はタクシーを呼ぶ時によく使うと聞いていたが、この時はウーバーイーツの便利さをよく感じ取れた。

支払いは距離に応じた運び賃400円ほどと品物代がカード決済される仕組みで、現金の受け渡しが無いのも特色だった。

▲写真 ウーバーのドライバー。ダッシュボードにウーバーのアプリを表示したスマートフォンがある。2013年10月14日 コロンビア・ボゴタ 出典:Alexander Torrenegra from Secaucus, NJ(New York Metro), United States(Wikimedia Commons)

ウーバーは10年前にアメリカのサンフランシスコに設立された会社で正式には「ウーバー・テクノロジーズInc.」といい、2018年の売上高は113億ドル(約1兆3000億円)だ。トヨタ自動車(トヨタ)と自動車部品大手のデンソーが6億6700万ドル(約750億円)、孫正義社長率いるソフトバンク・ビジョン・ファンドが3億3300万ドル(約370億円)、計10億ドル(約1100億円)を出資し、自動運転技術を活用したライドシェアリング(相乗りサービス)の開発を推進すると4月19日に発表した。さらに、トヨタは共同開発の関連費用として今後3年間で3億ドル(約340億円)を追加する方針も明らかにしている。

▲写真 ウーバーによる自動運転技術を使った車(2017年4月11日 米・サンフランシスコ) 出典:Dllu, Wikimedia Commons

10日、ニューヨーク証券取引所に上場したが、初値は42ドルで取引初日の終値は41.57ドル。新規株式公開(IPO)価格の45ドルに比べて7.6%安となり、時価総額は前回、私募方式で資金調達した際の評価額より低下した。終値で換算した時価総額は697億ドル(7兆6600億円)となり、昨年8月にトヨタから5億ドル(約560億円)の出資を受けた際の評価額(約760億ドル)より下落した。

▲写真 ウーバーの創業者 トラビス・カラニック氏 出典:GES Photo, Wikimedia Commons

タクシー会社やウーバーに運転手として登録した一般人が自分の空き時間と車を使って乗客を運ぶ仕組みで成り立っているが、運転手のモラル教育などが問題視されている。2017年には5700万人分の顧客や運転手の情報漏洩が発覚したことや創業者でCEOのトラビス・カラニック氏が株主からの圧力の高まりにより辞任を余儀なくされたことなどが話題となった。ウーバーはきちんと使われる規制があれば便利だが、一歩間違えると配達員に対し雇い主(ウーバー)が責任を取らないのでリスクもありそうだ。今後、利用者に便利で安心して使われるようになるためには法的規制などが必要になってこよう

▲写真 ウーバーのサービスにはタクシー業界の反発も大きい 出典:joiseyshowaa

現在、ウーバーは世界600以上の都市で利用され、月間7500万人、1日1500万回の乗車の利用(2018年7月現在)があるという。また乗車地と行き先をアプリに登録すれば、おおよその運賃などが事前にわかるようにもなっている。反対するタクシー業者も多いと聞くが、欧米では新しいビジネス、アイディアが次々と出てくる世の中になってきた。

 

トップ画像:ウーバーイーツのデリバリー 出典:flickr; Franklin Heijnen


この記事を書いた人
嶌信彦ジャーナリスト

嶌信彦ジャーナリスト

慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、通産省、外務省、日銀、財界、経団連倶楽部、ワシントン特派員などを経て、1987年からフリーとなり、TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務める。

現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」にレギュラー出演。

2015年9月30日に新著ノンフィクション「日本兵捕虜はウズベキスタンにオペラハウスを建てた」(角川書店)を発売。本書は3刷後、改訂版として2019年9月に伝説となった日本兵捕虜ーソ連四大劇場を建てた男たち」(角川新書)として発売。日本人捕虜たちが中央アジア・ウズベキスタンに旧ソ連の4大オペラハウスの一つとなる「ナボイ劇場」を完成させ、よく知られている悲惨なシベリア抑留とは異なる波乱万丈の建設秘話を描いている。その他著書に「日本人の覚悟~成熟経済を超える」(実業之日本社)、「ニュースキャスターたちの24時間」(講談社α文庫)等多数。

嶌信彦

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