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.国際  投稿日:2026/7/2

アメリカ民主党新鋭議員がトランプ戦略を支持


古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

            「古森義久の内外透視

本稿のポイント

・民主党のジョン・フェッタマン上院議員は、トランプ陣営のイラン攻撃など「力による平和」を掲げる対外政策を全面的に支持。

・フェッタマン議員は、ニューヨーク州の下院予備選挙で急進左派候補が勝利したことを受け、党の急激な社会主義化へ強い危機感を表明。

・同議員は、過激な左傾化が一般有権者の支持を失わせ、今後の選挙で結果的に共和党を利することになると警告。

日本でのアメリカ政治論は共和党保守派のトランプ政権への批判的な論調が主流であり、野党の民主党の実態に触れることは少ない。共和党内の反トランプ陣営への動きは詳細に報じられても、民主党内での造反に関する報道はきわめて少ない。ところが民主党内でも新鋭の上院議員がトランプ大統領の対外戦略に賛成するという造反があるのだ。しかも同議員は民主党の過激な左傾化への警告も発している。

 

民主党内でトランプ政権の対外政策に賛成するのはペンシルべニア州選出の上院議員ジョン・フェッタマン氏である。同氏は民主、共和両党の支持者たちが競合する激戦州のペンシルベニア州で2022年の上院選挙で初当選し、翌23年から上院議員となった。同州内の市長を長年、務めたフェッタマン議員は対外政策ではトランプ陣営の「力による平和」策に同調し、とくにトランプ大統領のイラン攻撃には全面的に賛成して、民主党内での造反者となった。同議員はイランの核武装や国家テロにとくに強く反対して、今年2月からの米軍のイラン攻撃にも明確に賛成してきた。

 

フェッタマン議員はしかしトランプ政権や共和党の国内政策には反対する面も多く、共和党への所属の切り替えはしないと明言してきた。だがイラン攻撃に反対する民主党内では造反者として厳しい批判をも浴びてきた。

 

フェッタマン氏は現在、56歳、父親から継いだ保険会社をペンシルベニア州で経営し、成功をおさめてきた。ハーバード大学で経営学修士号を取得した学歴もある。同氏の特徴はさらに身長2メートル3センチ、体重130キロという巨体で、演説にも迫力があって、上院全体では新人議員だが、存在感を強めてきた。しかしアメリカの大手メディアでも民主党傾斜の CNN テレビやニューヨーク・タイムズなどは同議員に光を当てることは少ないが、保守寄りの FOX テレビなどは頻繁に取り上げてきた。

  

そのフェッタマン議員がこの6月末、自分の所蔵する民主党の危機を訴える発言をして、改めて国政の場での再注視を集めた。同議員は民主党の急激な左傾化を批判し、「このままだとわが党はアメリカ国民一般の支持を大幅に失っていく」と警告したのだった。その警告の直接の原因となったのはこの6月下旬に実施された連邦議会の下院選への民主党内の予備選の結果だった。下院全体の本選挙は今年11月の中間選挙として実施されるが、民主党内でその候補を選ぶ予備選でニューヨーク州内の3選挙区でゾーラン・マムダニ・ニューヨーク市長が支援する急進左派の候補たちが党内の穏健、中道派の複数の候補を破って当選したのだった。

 

民主党の最近の左傾化は2025年11月のニューヨーク市長選挙でアフリカのウガンダ生まれでイスラム教徒のマムダニ氏の当選に象徴されていた。社会主義を堂々と唱えるマムダニ氏は「アメリカ民主社会主義者(DSA」という名称の組織に所属し、アメリカ政界では珍しい社会主義的、共産主義的な政策を説いてきた。ニューヨーク市長選挙では同じ民主党内でも主流派で穏健とされる他の候補たちを破って当選した。この当選は近年、民主党内で勢いを増してきた左傾の急進派の影響力の拡大の証拠とされた。そのマムダニ市長がこの下院選挙に向けてのこの6月の民主党側の予備選挙ではニューヨーク州内の数選挙区で同じ社会主義信奉の急進左派の候補たちを推薦した。そのうち3人が同じ民主党内でも主流とか穏健派とされる他の候補たちを破って、11月の本番の下院議員選挙にのぞむことになったのだ。これら3候補はニューヨーク州内でもブルックリンとクイーンズを含むニューヨーク 7 区、マンハッタン北部のハーレムなどの 13 区、マンハッタン南部などの 10 区でそれぞれ勝利をおさめ、本選に駒を進めた。7 区と 13 区で勝利したのはマムダニ氏と同じ民主社会主義者の若手女性候補。10 区ではイスラエル政府に批判的な進歩派が親イスラエル的な姿勢の現職を退けた。3 候補はいずれも不法入国者への取り締まりに当たる移民・税関捜査局(ICE)の廃止や富裕層への課税強化を公約に掲げていた。警察当局全体への公的資金の投入の削減をも主張していた。要するに現在の国家や政府の体制を根本から社会主義への方向へと変える政策を唱える候補たちだった。

  

こうした民主党内の予備選の結果にフェッタマン上院議員が激しい言葉での警告を発したのだった。同議員はまずニューヨーク州での民主党予備選の結果について「社会主義の乱交騒ぎだ」と非難した。同議員の説明によると、アメリカ市民一般では民主党支持者の間でもこの種の過激な社会主義的、共産主義的な政策への支持はまだまだ少数派であり、民主党がこの種の過激な極左とも呼べる議員候補たちを選んで一般選挙にのぞむと、結局は共和党側を利することになるという論理だった。

 

だからフェッタマン議員は「民主党の極端な左傾化は11月の中間選挙、さらには2028年の大統領選挙でも一般有権者の民主党支援を減らし、共和党への票を増すこと になる」と述べ、今回のニューヨーク州予備選の結果を「民主党全体への重大な危機」と 断じたのだった。  

 

#この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに載った古森義久氏の寄稿論文の転載です。  

 

トップ写真)

イラン攻撃をめぐり、ホワイトハウスが上下両院の全議員にブリーフィングを実施する中、メディアの取材を受けるジョン・フェッタマン米上院議員(民主党、ペンシルベニア州選出)   2026年3月3日 米・ワシントンD.C.

 

出典) Anna Moneymaker/GettyImages




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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