【ファクトチェック】共産党志位和夫委員長の発言「派遣・パート・アルバイト・非正規の働き方をさせられている方が若者では半分」は“ミスリード”
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・共産党志位委員長が、非正規雇用者の割合について発言。
・「若者では半分です。女性も半分、全体の4割」
・誤解の余地が大きいため、この発言はミスリード。
10月14日放送のANN系列「報道ステーション」衆院解散で未来は?『9党首×大越健介』生討論における、日本共産党委員長・志位和夫氏の発言を検証する。
志位氏は、規制緩和について考えを問われ、次のように発言した(動画25:23~)。
「例えば、規制緩和ということで、労働補正の規制緩和やってきた。その結果、派遣・パート・アルバイト・非正規の働き方をさせられている方が若者では半分です。女性も半分、全体の4割。こういう、労働の在り方の劣化を作っているわけです。」
検証対象:
「派遣・パート・アルバイト・非正規の働き方をさせられている方が若者では半分です。女性も半分、全体の4割。」
「女性も半分、全体の4割」という部分については、文意が分かりにくい。次の2通りに分けて検証する。
①女性の若年層のうち非正規雇用者は4割
②女性の若年層のうち非正規雇用者は半分、女性全体のうち非正規雇用者は4割
■ 厚生労働省「若年者雇用実態調査」との比較
2019年12月に発表された「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によれば、在学していない若年労働者(15~34歳)のうち「正社員以外の労働者」が占める割合は、全体で30.8%、男性で20.0%、女性で41.2%。在学中の者はこれに含まれないが、その割合は若年労働者全体の9.2%に過ぎない。
▲画像 「性、年齢階級・在学の有無・最終学歴、雇用・就業形態別若年労働者割合」 出典:「平成30年若年者雇用実態調査の概況」(厚生労働省)
志位氏の「若者では半分」とは一致しない。女性については、①「4割」であれば一致。②「若年層の半分、全体の4割」であれば前半部分は一致せず、後半部分は検証できない。
■ 総務省「労働力調査」との比較
▲画像 「年齢階級別非正規の職員・従業員の割合の推移」 出典:「労働力調査 (詳細集計) 21020年(令和2年)平均」(令和3年2月16日 総務省統計局)
最新の総務省「労働力調査」(2021年8月調査、10月発表)によれば、「非正規の職員・従業員」の割合は、15~24歳の47.6%。男性で44.3%、女性で50.9%。2020年平均では15~24歳の49.2%だ。
志位氏の「若者では半分」との発言に近い。女性についても、①「4割」とは一致しないが、②「若年層の半分、全体の4割」とは一致する。
「若年者雇用実態調査」と「労働力調査」とで違いが出るのはなぜか。それは、対象の年齢層と、在学中の者を含むか否か、が異なるからである。「若年者雇用実態調査」は、在学していない若年労働者(15~34歳)を対象とする。
それに対して「労働力調査」は在学中の者を調査対象に含んでいる。また、25~34歳の年齢層について「労働力調査」を見ると、「非正規の職員・従業員」は全体で22.3%、男性で13.9%、女性で32.1%。15~24歳のデータより、ぐっと低い数字だ。
■ 判定:ミスリード
検証対象:
「派遣・パート・アルバイト・非正規の働き方をさせられている方が若者では半分です。女性も半分、全体の4割」
・若者のうち非正規雇用者は半分
・女性の若年層のうち非正規雇用者は半分、女性全体のうち非正規雇用者は4割
このように文意をとると、総務省「労働力調査」の15~24歳に関する数字とは一致し、一見、事実と異なることは言っていない。
ただし、「女性も半分、全体の4割」の文意が分かりにくいことに加え、「若者」の定義があいまいで、誤解の余地が大きい。
志位氏の言う「若者」には正規雇用になり得ない学生も含まれているが、その重要な前提事実を志位氏は述べていない。厚労省「若年者雇用実態調査」の方が、学生を含めない若年者の雇用実態を反映しており、その場合は男性で20%程度、女性で40%程度、全体で30%程度である。
在学中の者を含んだ「労働力調査」の15~24歳のデータに基けば、志位氏は一見事実と異なることは言っていない。しかし、「若者」についての重要な前提事実の欠落により、誤解を与える余地が大きい発言である。
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トップ写真:演説をする共産党志位委員長(2021年10月19日) 出典:Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images