フランス、猛暑の次は嵐
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・フランスを含むヨーロッパ各地ではアフリカ北部から北上した熱波の影響を受け連日記録を更新するほどの猛暑が続いている。
・フランスでは猛暑注意の暑さレベルになった場合、健康被害を避けるために市役所が警戒態勢を取ることが決められており、各地でいろいろな対策が実施されている。
・猛暑によって山火事も発生している。
・熱波のピークは過ぎたが、今後は激しい嵐の可能性もあり、自然からの脅威にさらされる夏はまだまだ続きそうだ。
フランスを含むヨーロッパ各地では、連日猛暑が続いている。最高気温が40度を超える地域も多くみられ、観測史上最高気温の報告が相次いだ。そんな中、大規模な森林火災も各地で広がり、バカンス客や住民たちは避難を強いられてもいる。ヨーロッパを襲ったこの猛暑は、アフリカ北部から熱波が北上したことが直接の原因である。フランスでは、2003年と2019年にも多くの死者を出した猛暑を経験しているが、どの年もフランス中がほぼ均等に暑さが広がっていたのに対し、今回は、例年に比べて気温が高い日が長く続き、40度近い高温になる地域が局部的で、南西部から北東部に移動したのが特徴だ。
現在はようやく猛烈な勢いの暑さは去ったものの、WMO(世界気象機関)および、Météo-Franceによれば、来週半ばまで熱波の影響は続く見通しだ。
写真)40℃を表示している農家の温度計(フランス、2022年6月19日)
出典)Photo by James D. Morgan/Getty Images
◯各地で記録を更新した猛暑
アフリカからの熱波によって、フランス各地で最高気温の記録を更新した。
フランス西部、ブルターニュ半島西端に位置する港湾都市ブレストでは39.3°C(これまでの最高記録2003年8月35.1°C)、フランス西部のブルターニュにあるサンブリューは39.5°C(2003年8月38.1°C)、フランスの西部、ロワール川河畔に位置する都市ナントで42°C(1949年7月40.3°C)、またフランス南西部のヌーヴェルアキテーヌ地方のランド県にあるコミューンビスカロッスでは42.6°C(2022年6月41.7°C)を記録した。
◯フランスにおける猛暑に対する様々な対策
フランスでは、2003年8月の猛暑で通常の死亡率と比較して15000人多く亡くなったという経験から、4段階ある暑さのレベルのうちレベル3の 猛暑注意 (オレンジ)が出た場合は、健康被害を避けるために市役所が警戒態勢を取ることが決められており、各地でいろいろな対策が実施された。
)では、エアコンが設置された共同エリアを提供し、猛暑で健康被害を受けやすい高齢者などを受け入れた。ボルドー市では、プールが無料開放され多くの客でにぎわった。(https://www.sudouest.fr/gironde/merignac/vague-de-chaleur-en-gironde-piscine-gratuite-a-merignac-11679387.php
)
フランスの暑さ警戒アラート一覧
レベル1-季節モニタリング(緑)
レベル2-暑さ警告(黄色)
レベル3-猛暑注意(オレンジ)
レベル4-最大の警戒(赤)
◯ジロンド県で大規模な山火事
コートダジュールなど夏は毎年暑い地域では乾燥が進み大規模な山火事が頻繁に起きるため、夏になるとバーベキュー禁止などの対策が取られるが、今年は、例年よりも暑さが厳しかった南西部でも大きな山火事が起きた。ジロンド県では7月12日から二つの大きな火災が発生し、20日の時点で合わせて2万600ヘクタールが焼け、観光客と住民の3万6750人が避難。5件のキャンプ場では、炎によって90%が破壊される被害にあっている。
また、この大規模な山火事に対応するため、フランス全土から約2000人の消防士と、活用できる全ての航空機が動員された。中には約20年前に設置された冷房しかないような環境の中、消防士たちは寝る間も惜しんで消化活動にあたったのだ。20日には、マクロン大統領が現地に赴き、消火活動にあたっている消防士たちを激励した。
また、火災発生源の原因の一つが放火だった疑いがあるとして、司法当局は39歳の男性の身柄を拘束。すでに放火の前科がある男性で、目撃情報では火が出た際に男性の車が近くの路肩に止まっており、その場から離れた後に火がでたということだ。放火で有罪が認められれば、最大、懲役15年、15万ユーロの罰金刑を受ける可能性がある。
◯熱波のピークは過ぎたが、今後は激しい嵐の可能性も
熱波のピークが過ぎ、気温は20日からようやく許容できるレベルに戻り始めた。ジロンド県の火災も、消防士たちの活躍と気温が下がったことで、現在では勢いが弱まってきている。
しかし、このような寒暖の差は近年激しい雷雨を引き起こすことが多くなってきており、アキテーヌ地方の内部と、リムーザンまでのミディピレネー地方で嵐が予想されているので警戒が必要だ。自然からの脅威にさらされる夏はまだまだ続きそうである。
参考リンク
・「ジロンド県の火災:エマニュエル・マクロン大統領、水曜日に消火活動にあたっている消防士たちと共に現地入り 」
・「熱波:12の県で依然としてレベル3-猛暑注意(オレンジ)の警告が出ている。」
・「ブルターニュの熱波:ブロセリアンドで、熱波の影響を受け、個人が原因の火災による最悪の被害を最低限に抑えた」
・「熱波:赤色警報が解除、73の県が依然としてオレンジ色」
・「火災:エマニュエル・マクロン大統領が水曜日にジロンドを訪問、ラ・テステ・ド・ブフ近郊で」
・「ジロンド県の火災:ランディラスの火災で逮捕された男性は、2012年に同様の事例で既に聴取を受けていた」
トップ写真:酷暑で山火事が起きた山間部の様子(スペイン、アビラ2022年7月18日)
出典:Photo by Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。