米中のアルゴリズム支配を拒絶せよ。フランスが「SNS15歳未満禁止」に踏み切った本音
Ulala(著述家)
【まとめ】
・フランスでは、1月26日に国民議会で 「15歳未満のSNS利用禁止」を盛り込んだ法案が可決。
・SNS禁止令の本質は「アルゴリズムによる国民支配の拒絶」。
・ 日本も「目に見えない主権の戦い」に対し、具体的対策をすべき。
フランスでは、今年、1月26日に国民議会(下院)で 「15歳未満のSNS利用禁止」を盛り込んだ法案が可決したが、 スペインもまた、2月3日に「16歳未満のSNS利用を禁止(または大幅に制限)する法制度を入れたい」と公表した。
すでに、 オーストラリア(16歳未満禁止)、イギリス( 年齢確認を含む対策 を具体化)と各国で未成年者に対するSNS利用に関する規制が導入されつつある。
これは、もちろん 一番の大きな理由は「子供の心身を守るため」であるのは間違いないが、 その裏には「米中を筆頭とするプラットフォーム支配への危機感(デジタル主権)を守るため」という側面が見え隠れする。アメリカと中国による 「デジタル空間の支配」 に対抗する各国の表れでもあるのだ。
■SNSがもたらす子供への悪影響と各国の対応
子供におよぼす悪影響は、どのようなものなのか?
まず問題なのがサイバー犯罪と有害コンテンツだ。SNS禁止は、性的誘導や、自傷行為をうながす動画などが子供の目に入ることへの対策となる。
また重要なのは、依存、中毒を生むSNSプラットフォームの設計への規制だ。SNSの一つであるX(旧Twitter )のオーナーでもある イーロン・マスク 氏もこう語っている。
「(SNSが)ドーパミンを最大化する方向に最適化されると、薬物のようになる」
実際、 SNS企業のビジネスモデルは「滞在時間を最大化させること」であり、これが子供の脳の発達に悪影響(ドーパミン中毒など)をおよぼしている。SNSは、現代社会の麻薬とも言えるのだ。
その他にも前頭葉の影響や、中毒による学力の低下、いじめへの発展など影響範囲が大きく、学校や家庭の注意喚起では足りないため、国として規則を設けるという方向になっている。
しかし、SNSに関する影響は悪いことばかりでもないことも同時に知られている。多くの情報に触れる機会がない生活を送っていても、ネットがあれば視野を広げることができる。有益な情報を得る機会にもなっているのだ。
したがって、規制すると言っても、 その方法は大きく「年齢でアクセス自体を止める方向」と「プラットフォームに子ども保護の義務を課す方向」に分かれている。
イギリスでは、「禁止」ではなく、企業に「子供が有害コンテンツを見ないようなシステムを作れ」と命じて、守らなければ罰金の方向だ。EUも、加盟国に対して子供のプライバシー保護やアルゴリズムの制限を義務付けるのみにとどまっている。
完全にアクセスを遮断する方向性が強いのがフランスだ。EUが出した義務よりも、さらに厳しいルールを上乗せしている。
フランスでは、プラットフォームへの規制だけではなく、フランス政府の規制当局が、若者の精神衛生に特に有害だと判断したプラットフォームは、15歳未満の利用が一律禁止される。フランス政府や専門家委員会が名指して危険視しているのは、TikTok、Instagram、Snapchat、X、Facebookなどが挙げられる。
オーストラリア 、スペインもフランスに近く、16歳未満のアクセス制限を打ち出し、実効的な年齢確認や、違法コンテンツへの対応責任の強化をセットで語っている。
■SNS禁止令の裏に潜む、米中デジタル覇権への宣戦布告
フランスで、SNS規制の法案が可決された際、マクロン大統領は自身のSNSで、「子どもや若者の脳は売り物ではない」とし、「子どもたちの感情は、米国のプラットフォームであれ中国のアルゴリズムであれ、売り物でも操作されるべきでもない」と述べた。
まさに、この言葉に、フランスがSNSを規制する本音が語られていると言っていいだろう。
各国がSNS禁止に踏み切る裏の意図、それは「デジタル主権」の確保だ。
かつて、国家の主権とは領土、領海、領空に限られていたが。現代社会は、国民のデータがどこに保存され、どのようなアルゴリズムが人々の世論を形成しているかを管理できなければ、その国に実質的な主権はないに等しいのである。
SNSのアルゴリズムというのは、ユーザーが好む情報を優先的に表示し続けることで、無意識のうちに特定の価値観や過激な思想を植え付ける「エコーチェンバー現象」を引き起こす。それがプロパガンダを浸透させるための大きな力になりかねない。
しかも、フランスには大きな教訓がある。かつてイスラム国(ISIS) により、SNS勧誘されたフランスの若者は過激化し、多くのテロを引き起こした。 アルゴリズムによる洗脳やプロパガンダは国家を崩壊させる脅威になりえることは、このことが証明している。
子供たちが洗脳されないために、「デジタル主権」を確保する。これは、国にとって 21世紀の国防そのものである。
■SNS禁止とは、子供たちを守り、国の主権を守ること
「SNSを禁止する」という政策は、一見するとアナクロニズム(時代錯誤)や表現の自由の侵害に見えるかもしれない。しかし、その本質は「アルゴリズムによる国民支配の拒絶」でもあるのだ。
アメリカがデータを握り、中国がアルゴリズムで心を操る。そんな「デジタル植民地化」の危機に対して、フランス、スペイン、オーストラリアといった国々は、「子供」に対して防波堤を築こうとしている。
インターネットはかつて「自由な広場」だったが、現在は、国家が主権をかけて戦う「戦場」へ変貌していることは、日本に対するプロパガンダ攻撃からもうかがい知れるだろう。
例えば、福島第一原発の処理水放出の際、中国を中心とした海外のSNS上で、日本を「環境汚染国家」と断定する過激な動画や投稿が組織的に拡散された。AIで生成された偽の汚染画像や、科学的根拠のない恐怖を煽る表現が、アルゴリズムに乗って日本の若者が見るSNSにまで直接届けられたのである。
これは単なる風評被害ではない。SNSを通じて他国の国民に「自国政府への不信感」や「科学的根拠のない恐怖」を植え付け、国家の信用を失墜させて経済的・政治的な圧力を正当化する、巧妙な「認知戦」そのものなのだ。
では、日本はどうすべきか。日本はこれまで、アメリカのプラットフォームを無批判に受け入れ、一方で中国製アプリの浸透にも脆弱だった。しかし、フランスやスペインの「国家としてノーを突きつける」姿勢は、日本にとっても無視できない選択肢となるのではないだろうか?
いずれにせよ、現状のような「無防備な受け入れ」を続けることは、子供たちの未来と国家のためにはならない。今こそ、日本も、この「目に見えない主権の戦い」に対し、具体的な対策を講じるべき段階に来ているのだ。
■参考資料
・ソーシャルメディア:「中毒性のある製品は未成年者には禁止されなければならない」
・「依存症と暴力の空間」:スペインは16歳未満のソーシャルメディアを禁止しようとしている
・トランスクリプト:WTFによるイーロン・マスクのPeopleインタビュー(ニキル・カマート氏と)
・ 1958年10月4日の国民議会憲法第17議会2026年1月26日国民議会で第一読により採択された、ソーシャルネットワークの使用によって未成年者がさらされるリスクから未成年者を保護するための法案
・15歳未満のソーシャルメディアの使用禁止が国会議員によって承認された。
・欧州は確認:フランスは15歳未満の児童のソーシャルメディアを禁止する権利を有する
トップ写真:旅行者が電話でレストランのメニューを翻訳している写真素材
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。












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