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.国際  投稿日:2022/8/5

仏、干ばつと電力不足に悲鳴


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・フランスでは3回目の熱波で、各地で水不足が発生、8月2日には干ばつ警報が発令された。

・雨量が減り、原子力発電所の冷却に支障、発電量が5割減少。

・恒常的な水不足でEU環境委員会は農業部門での水再利用を加盟国に助言。

 

現在、フランスでは3回目の熱波がやってきており39度〜40度になるところも出て暑い日々が続いているが、今年は雨量も少なくこの2つの異常気象はフランス各方面で大きな影響をおよぼしている。

■ 降水量減少による水不足

7月からほとんど雨が降らないフランス。測定が開始された1959年以来の記録史上最も乾燥した月となり各地で山火事も相次いだ。7月のフランスの降水量は9.7mm。去年の7月の降水量90.8mmと比べてみればどれほど少なかったかが分かるだろう。ちなみに2021年1月から7月までの降水量は554.6mmだったが、2022年の降水量は327.7mmに過ぎない。

その結果、各地で水不足が発生し、とうとう8月2日には干ばつ警報が発令されフランスの96県のうち93県でが警戒態勢に入った。そのうち46県は危機的状況にあり38県は警戒態勢が強化となっているが、この警戒態勢に入った件数の記録も更新となったのだ。

現在、フランスでは水位が低すぎて運河が閉鎖したりトウモロコシなどの農作物にも影響が出始めている。通常通りに水を使うと25日以内に底をつくと警告がでたり、噴水の水をとめるなど、各地でいろいろな対策が取られているところだ。

■ 水不足に伴う電力不足

雨量が減ったことは、電力の発電にも影響をおよぼしている。

フランスと言えば原子力発電だ。フランスは原子力による電力を柱に電気自動車を推進していくなどいろいろな政策をおこなってきた。しかし、今年の猛暑はその柱の弱点を浮き彫りにした。なんと、雨量が減ったことにより川の水位が下がり川の温度が上がり、内陸部にある原子力発電所では原子炉を冷却することができず、停止しなければいけない危機にさらされているのだ。

さらに老朽化がはげしいフランスの原子力発電所では、メンテナンスで稼働していなかったり稼働していても発電量が減少しているところもある。そのため、フランスの原子力の発電量は50%近く減少していると注意が呼びかけられていた。

2022年7月15日に、ゴルフェック (タルン エ ガロンヌ)、ブラエ (ジロンド)、サン タルバン (イゼール) の原子力発電所が、環境規則から一時的に除外の要請をしていた。すでにこれらの原子力発電所では、一時的に稼働停止を余儀なくされて環境規則を厳守したままでは電力発電ができない状態だったのだ。要請は受け入れられたが、8月8日までの期限付きだ。しかし、8日ごろからは熱波も去って涼しくなる予定となっているので、今後どうなるかは状況次第となるだろう。

猛暑で例年よりクーラーなどの使用が増加し消費電力量も増加するなか、降水量は去年より89%も少ないという状況のフランス。大きな柱となる原子力発電が思うようにできず、フランス国民は、節電、節水を求められる夏となっている。

■ EU諸国は廃水を再利用しなければならないと欧州委員会が警告

しかし、猛暑も水不足もフランスだけの問題ではない。現在、欧州の大部分が直面している問題でもある。とくに水不足は、2030年までに欧州の河川流域の半分に影響を与える可能性が高いとされており、処理された廃水の再利用を学ぶ必要があると、8月3日に欧州委員会から警告がだされた。

「淡水資源は不足しており、ますます不足していきます。水の浪費を止め、この資源をより効率的に使用することは私たちの義務です」

と、環境委員会が農業部門での水の再利用についてEU加盟国に助言したのだ。

欧州委員会が提供したデータによれば、EUでは毎年400億m3以上の廃水が処理されているが、再利用されているのは9億6400万m3にすぎないという。飲み水は困らないとしても、今後、農業、工業などの分野での水不足が懸念されることになるというのが環境委員会の意見だ。

このように、水不足を伴う危機は今年だけではない。今年を乗り切るだけではなく、欧州では未来に向けてさらなる努力が求められているのだ。

<参考リンク>

干ばつ:わずか9ミリの降水量、フランスで7月にこれほど乾燥したツキはない

熱波:南東部の26の部門がオレンジ色の警戒態勢を維持

原子力:「地球温暖化に強いためには、発電所が適応しなければならない

トップ写真:気温が40度近くにまで上がる中、エッフェル塔の前の噴水で涼む人々(2022年6月18日、フランス・パリ) 出典:Photo by Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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