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.政治  投稿日:2022/8/5

高岡を「バドミントンの聖地」に 「高岡発ニッポン再興」その23


出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・徳島県内で行われたインターハイのバドミントン男子ダブルス決勝にて、高岡第一のペアが初優勝

・2人は3.11で故郷を流され「世界一」を誓って以来、それを実現し始めている。

・トナミ運輸など実業団で強いチームが存在する高岡は、誇りを持てるバドミントンの聖地である。

 

「優勝したんだよ。嬉しいね。号外まで出た」。

私の町内にある角久旅館を経営する関久幸さん(74)と妻の恵子さん(73)は大喜びでした。徳島県内で行われた全国高校総合体育大会(インターハイ)のバドミントン男子ダブルス決勝で、高岡第一の大田隼也・佐々木大樹組が初優勝したからです。高岡第一のバドミントン部の生徒たちは、県外出身者も多く、宿泊所に泊まりながら、角久旅館で朝食と夕食を食べています。

「子どものころに親元を離れるのは並大抵の精神力ではできない」。関さん夫婦は子どもたちを思いやっています。それが18年間も続いています。

関さんにとっては、歴代バトミントンの男子生徒たちは、子どものような存在なのです。

「男の子はほんとうにかわいいですよ。恋愛話を話してくれたり、結婚相手を連れてきてくれることもあるのです」。そう笑うのは、関恵子さんです。

角久旅館は、『バドミントンマガジン』という月刊誌をとっていますが、関さん夫婦はこの雑誌の表紙を飾るよう頑張ってと、男子生徒たちに発破をかけているそうです。そして実際に表紙を飾った選手は何人もいます。今回優勝した大田・佐々木組も有力候補になると、関さんは期待しています。

  今回ダブルスで優勝した佐々木は、新潟県の佐渡島出身です。親元を離れて、なぜ高岡に来たのか。高岡市南星中出身の大田が誘ったからです。2人は、小学校のころからの知り合いです、ともにバドミントンの有力選手で、大会や練習などで親交を深めたのです。

実は、バドミントンの世界で高岡は「聖地」となっています。その理由は、実業団で強いチームが存在するからです。古くは、高岡市役所。そして現在は、トナミ運輸が圧倒的な存在です。バドミントンの男子実業団のS/Jリーグでは優勝回数は実に10回、準優勝は10回です。しかも、近年はトップの座を守り、ライバルのNTT東日本などを凌駕しています。

さらに驚くべきは、トナミ運輸所属の保木卓朗と小林優吾組です。ダブルスで実に世界ランキング2位なのです。去年12月のバドミントンの世界選手権で、男子ダブルスでは日本勢としては初めて金メダル獲得。「ホキ・コバ」と呼ばれていますが、東京オリンピックには出場できませんでした。その後、東京大会代表のペア4人のうち3人が引退したため、持ち上がった形で、日本代表になったのです。実力を不安視する声もありましたが、「ホキ・コバ」は奮起しました。

2人は、ともに福島県富岡町の同じ中学校出身でした。中学の時からペアを組んでいます。しかし、中学校の卒業式の直後に、東日本大震災の津波で故郷が飲み込まれたのです。

その時、2人が誓い合ったのは「世界一」。この夢をカタチに変えつつあるのです。「ホキ・コバ」はともに、高校時代から角久旅館の常連です。ともに結婚し、関さん一家とは家族ぐるみのお付き合いです。

写真:手前がホキ、奥がコバ

出典:筆者提供

トナミ運輸には「ホキ・コバ」以外にも有力選手がいます。女子も2人いて、注目株です。こうした有力選手と一緒に練習したいという思いで、全国の子どもたちが高岡に集まります。

さらにS/Jリーグの開幕戦は11月に高岡で開かれます。2000人ぐらいの人が集まるそうです。バドミントンはそれほど人を集める求心力があるのです。経済効果は抜群です。観客や選手、その家族らが高岡に泊まれば、ホテルや飲食などが潤います。2000人の来来訪と想定しましょう。1人3万円使えば、計算上では、経済効果は6000万円になります。

人口減少時代において、こうした観光収入は大事ですね。そもそも高岡市では去年1年間で1699人の人口が減っているのです。一人年間200万円使うとすれば、34億円の消費が失われているのです。

こうした厳しい状況の下、外から、2000人集めるイベントは極めて重要なのです。

ただ、「バドミントンの聖地」だと知っている高岡市民はいったいどれぐらいいるのでしょうか。高岡市、そして高岡市民は誇りをもって、もっともっと広報するべきです。バドミントンは、日本人選手の活躍などで、人気が高まっています。こうした追い風を捉え、「バドミントンの聖地」を売り出したい。それが私の政治家としての使命です。

トップ写真:関さん夫婦

出典:筆者提供 




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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