高岡市議会で「言論封殺」
出町譲(高岡市議会議員・作家)
【まとめ】
・6月26日の総務文教常任委員会で、角田市長の「お礼出張」について「手紙、オンラインで済ませるやり方もある」と質問。
・質問が不適切だとして、最大会派未来創政会と公明党が連名で出町議員に対し、質問撤回と謝罪を求める文書を議長に提出。
・こうした動きは、議会制民主主義の崩壊にもつながる。
高岡市議会で「言論封殺」の動きが出ており、私は強い危機感を抱いています。
きっかけとなったのは、6月26日の総務文教常任委員会での私の質問です。その質問が不適切だとして、最大会派の未来創政会と公明党が連名で、私に対して質問の撤回と謝罪を求める文書を議長に提出したのです。私は、市民の声を受けて質問したのであり、ここで撤回や謝罪すれば、市民を裏切ることになります。
私が取り上げたテーマは角田悠紀市長の「お礼出張」です。能登半島地震では、高岡市にも被害が出て、全国の自治体が支援をしてくれました。角田市長はこうした自治体に、お礼するため、頻繁に出張に出かけているのです。私が5月31日時点で入手したリストによれば、訪問した自治体は18。そして、出張を調整している自治体は11に上っていました。その中には、青森県むつ市、高知県須崎市、鹿児島県阿久根市など遠方も含まれていました。一部は副市長なども出向いているようです。富山県内のほかの被災自治体である氷見市、射水市、小矢部市、富山市などに比べても圧倒的に多いのです。
新聞の市長動静にも頻繁に角田市長のお礼出張が出ます。それを読んだ被災者が、私にこんな訴えをしてきました。「復興もしていないのに、なぜ市長が全国各地をお礼に行くのか」「被災地の説明会も出席していいのに、どうして税金をつかって遠方に出張するのか」「少しでもお金を浮かせて、復興につかうべきだ」。
私は、お礼自体は否定しません。ただ、こうした声を受けて、「お礼をすることはいいことだと思っている。でもお礼のやり方というのは、実際体をかけていかなくても、手紙、オンラインで済ませるやり方もあると思う」と質問しました。
私の質問に反発したのが、上記の未来創政会と公明党です。この未来創政会というのは、高岡市議会の最大会派で12人の議員を抱えています。公明党の2人と合わせれば、14人となります。高岡市議会の議員は現在26人であり、この2つの会派を合わせると、過半数になります。
▲写真 能登半島地震、一夜明けた高岡市伏木(2024年1月2日富山県高岡市)筆者撮影
未来創政会と公明党は、申し入れ書の中で、「公の場で非を認め、謝罪と発言、及び質問の撤回を求める」としています。
これを認めれば、私は二元代表制が危機に陥ると思っています。行政の動きをチェックするのは、議員の仕事です。だからこそ、市長も、議員も選挙で選ばれているのです。また、市民の声を行政に届けて、提言するのも、議員の役割です。2つの会派の申し入れ書は、高岡市だけでなく、我々の先人が築き上げてきた議会制民主主義の崩壊にもつながります。
トップ写真:能登半島地震、一夜明けた高岡市伏木(2024年1月2日富山県高岡市)筆者撮影
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この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家
1964年富山県高岡市生まれ。
富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。
90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。
テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。
その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。
21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。
同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。
同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。