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.政治  投稿日:2022/9/26

東京・品川区長選 新人6人競う その1


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・東京都品川区長選挙(10月2日投開票)に新人6人が立候補。

・森澤恭子候補は都議を辞しての挑戦、完全無所属、しがらみがないことをアピール。

・石田秀男候補は、元品川区議。6期務めた実績を打ち出す。

 

任期満了に伴う東京都品川区長選挙が9月25日告示され、6人の新人が立候補した。届け出順で、無所属で元銀行員の山本康行氏(46)、無所属で共産党が推薦する元大学教授の村川浩一氏(75)、諸派で元品川区議会議員の大西光広氏(65)、無所属で自民党が推薦する元品川区議会議員の石田秀男氏(63)、無所属で元都議会議員の森澤恭子氏(43)、無所属で元品川区議会議員の西本貴子氏(61)の6人。区長選の立候補者数としては過去最多だ。

争点は、新型コロナ対策、子育て支援や、都心上空を通過する羽田空港の飛行ルートへの対応など。

今回、立候補した前東京都議会議員森澤恭子氏に立候補した想いや、政策を聞いた。他の候補者の公約なども紹介する。

■ 森澤恭子候補

森澤恭子候補のプロフィール:

無所属、前・東京都議会議員。

1978年神奈川県茅ケ崎市生まれ、43歳。2002年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、⽇本テレビに⼊社。

2017年7月東京都議会議員選挙で、初当選。そして今回品川区長選に挑戦する。なぜ都議から転身しようと決意したのか聞いた。

森澤恭子ウェブサイト

▲写真 無所属を貫く理由と区政への思いを語る森澤恭子候補 ⒸJapan In-depth編集部

■ 区長選に立候補した理由

安倍: 都政から転身の理由は?

森澤: 都議会議員を2期務めさせていただいた中で、地元品川区の都民の皆様から、都政に関するご相談はもちろんのこと、品川区政に対するご意見、地域の課題も様々寄せられてきました。子育てや教育、あるいは、街づくり防災、障害者福祉、高齢者福祉など、地域から社会をより良くしていくために、直接的に取り組んでいくことの必要性を感じたからというのが大きな理由です。

日本の制度や仕組みの中には、時代や、多様化しているニーズや暮らしに合わなくなってきているものも多くあります。そういったところをスピード感を持って変えていかなければいけないと感じて、今回区長選に挑戦することになりました。

安倍: より区民に近い政治に関わりたい、と。

森澤: そうですね、生活により身近なので。社会をより良くしていく、暮らしを良くしていくということの必要性を強く感じました。

■ 無所属にこだわり続ける理由

安倍: 都議になられてから割と早い段階で無所属になりましたが、ずっと無所属を貫き通している理由はなんですか?

森澤: 地方政治においては、政党とかイデオロギーとかではなく、区民の声を直接聞いて、何が解決策として本当にベストなのか、取り組んでいくことが重要なのではないかと感じてきました。今回も真に区民の声を聞いて区政を進めていくと考えたときに、政党や組織、団体の支援を受けない完全無所属という形で挑戦することになりました。

安倍: 政党から「推薦したい」といったような話はなかったんですか?

森澤: そうですね、そういったお声もいただいたこともあります。すごくありがたいことなんですけれども、今回は完全無所属で、区民と進める品川区政という、真にしがらみのない形で進めていきたいと思っています。

安倍: 地方政治は2元代表制ですが、どこの議会も、国政政党をベースとした会派が支配していますよね。与党対野党の対立構造になっている。完全無所属は素晴らしいことだと思うんですけれども、なかなか首長と議会との関係は難しい。議会と与党会派との関係が良好でないと大変だと思うのですが、その辺はどう考えていますか。

森澤: 都議会での経験が財産になると思います。東京都こども基本条例を共同提案した際に、一つの目標、都民の幸せに向かっていくことで、日頃の政治姿勢は異なる立場でも、手を携えることができると知りました。どの政党、会派に所属しておられても、区民の幸せを目指して、しっかりと話をしていくことで、政策を進めていくことができると確信しています

■ 力を入れたい政策

安倍: 品川区には色々と課題があると思うのですが、子育て、教育、介護の問題など、特に力を入れたい分野はなんですか?

森澤: やはり、メインとしては都議会議員としても取り組んできた子育て、教育、障害者福祉などになると思います。比較的品川区はこれまでも子育て支援は充実しているといわれていますが、家族が周りにいない子育ては孤独を感じるという声も聞いてきました。明石市が先進的な子育て政策を行っていますけれども、そうしたことを参考に、例えば0歳時のおむつ宅配で定期的にご家庭に、何か困っていることはないですかと聞き取りもできる、そういう仕組みを取り入れたいと思っています。あるいは、保育園については働いている家庭だけではなくて、働いていない家庭でも、地域で子どもを育てていくような、地域に開かれた保育園とか、そうした取り組みを進めていきたいなと思っています。

教育に関しては、品川区は先進的に取り組んでおり、その一つとして、小中一貫校がありますが、時代に合わせて変えていくべきところは変えていく必要も出ています。例えば、小中一貫だと人間関係が固定化されてしまうので、いじめや不登校といったデメリットが実際聞こえてきます。例えば、いじめ解決のための第三者的な機関を置くとか、不登校であればフリースクール等と連携して必要な学びを保障していくとか、そういうことをやっていきたいです。また、私は教育改革第2ステージといっていますが、先進的な教育を行うモデルを進められたらなと思っています

安倍: 品川版GIGAスクール構想というのも提唱されてます。

森澤: 重要ですね。タブレットが1人1台配布されているけれども、うまく活用できていないという保護者の方の声もすごく大きいです。東京都では外部人材を活用して教育現場にいろんな知識を持った方を入れていくということをやっていますが、外部の方と地域の方と連携して、学校教育におけるデジタル化をしっかりと進めていきたいです。また、不登校であっても双方向の授業が自宅で受けられるような形にしていく事もすごく大事かなと思っています。

安倍: 不登校児なんかは確かに在宅でも勉強できるわけですね。

森澤: そうなんです。それで多様な学びが保障されるので、それはすごく大事かなと思っています。

■ 民間の経験をどう活かす

安倍: 民間での経験は、これまでの政治家の仕事の上で役に立っていますか?

森澤: そうですね、やはり政治の常識と民間の常識はだいぶずれていると感じることが多いですね(笑)。一般的な当たり前の感覚を、政治の世界において難しさも感じますが、持ち続けなければいけないと思います。あるいは、予算の立て方とか、もう少しスピード感を持って柔軟に対応していく事が必要かと思います。

加えて、行政は、一度決めたことをなかなか変えることができないと感じています。コロナ禍の時とか、状況が変わっていけば、対応も変えていくべきだと思うのですが、それを頑なに、なかなか過去の施策を否定できないという、もどかしさを感じました。状況に応じて施策の方向性が変わるのであれば、ちゃんと住民に向かって説明すればいいと思っています。それも、タイムリーに説明し、修正していく事が重要なのではないか、とすごく思いますね。

 女性活躍支援

安倍: 区長を目指されるわけですから女性支援とか、女性が元気よくお仕事が出来るように、期するものはありますか?

森澤: 女性管理職を増やしていくことは取り組んでいきたいと思います。それと、東京都では条例改正によって、審議会等の委員選考にあたって、片方の性別に偏らないようにすることが決まりました。これまで男性ばかりの審議会であっても、4割は女性にするという仕組みを入れるなどして、政策決定や意思決定の場に女性を増やしていくことで、多様な意見が反映される環境ができると思います。

安倍: この間、アーティストのスプツニ子!さんが、いろいろな会議で登壇者が男性ばかりなので、女性をもっと増やすようにすべきだ、と新聞に書いてましたね。

森澤: そういうことに気がつかない、悪気なくそういうことになっている場合が結構あると思います。男性はわからないけれども女性側は気づくケース。あれ?女性は自分1人だなとか、このイベントは女性が少ないなとか。審議会とかそういう政策決定の場では、意識的に変えていくような仕組みが必要だと思います。

■ 羽田新ルート問題

安倍: 羽田新ルートなんですけれども、国交省が、海上新ルートを検討と言うニュースが出ていました。

森澤: 国は、固定化回避ということを地域からの声を受けてやっています。私も引き続き早期実現を訴えています。今回私は全区民アンケートを取ろうと言ってますが、エリアによってどのような影響が出るのか、例えばテレワークをしているときにうるさいという方がいたり、お子さんの習い事の先生の声が聞こえないとかあるので、どこのエリアでどういう状況が起こっているのかを的確に把握した上で、国に対して具体的な要望をしていくことが必要だと思っています。

■ 選挙戦

安倍: 今回、無所属での出馬、勝算は?

森澤: やはり選挙自体を区民の方々が、品川区のこれからを考える機会にしていただきたいなと思っています。なかなか自分の街の事とか地域のこととか、日々忙しくて、ここは課題だなと思っても、そのままほおっておいてしまったりしますよね。そういった場面で、一旦立ち止まって自分たちの街をこれからどうしていくのか、品川区をどうしていくのか、この選挙を通じていろんな候補がいろんな政策を出しているので、それを踏まえながら、考えてもらうきっかけにしていただけたらと思っています。

また、前回の投票率は約33%と、とても低く、7割の方が投票にいかずして地域のリーダーが決まる状況は何とか変えていきたいと思います。短い期間ですけれども区長選挙があり、今回は、現職が引退されるので、16年ぶりに新しい区長、リーダーを決める選挙という、すごく貴重で重要な機会だと言うことを多くの区民の方に知っていただきたいと思っています。

安倍: 手ごたえは?

森澤: そうですね、若い人に頑張ってほしいとか、女性に頑張ってほしいとか、あるいはデジタル化など時代に合わせて変えていくべきこともあるよね、と言う声を伺います。一方で、現職のはまの区長は良い区長さんだった。残念。という声も数多く伺います。これまでの良い部分を引き継ぎ、時代に合わせてアップデートしていく「継承と発展」が重要であると考えています。それと、これはおそらく政治不信が原因ですが、無所属だからこそ応援していると言う声もあります。

▲写真 区民からの声を前向きに受け止める森澤氏 ⒸJapan In-depth編集部

■ 品川区の魅力向上

安倍: 羽田空港アクセス線ができますが、品川区の活性化についてはどう考えていますか?

森澤: アクセス線は私も都議として推進してきたことですが、新駅も品川区の方で検討しています。大井町は再開発中で、新庁舎を検討している段階ですし、JRが一帯を再開発する話もあるので、どう街を盛り上げていくかがこれからの課題になります。民間とまちづくりのエリアマネジメントをしていくとか、民間の皆さんと一緒にどう賑わいのあるまちづくりをしていくか、品川区の顔となるまちづくりをどうしていくかとか、そういったことをこれから考えていかなければなりません。ここには、民間デベロッパー会社で働いた経験が役に立つはずです。

安倍: インバウンド需要も取り込んでいかねばなりませんね。

森澤: 先日、あるメディアで「脱・地味な品川区」というテーマの記事がありました。今回、政策を作るにあたって品川区民の皆様にアンケートを取ったのですが、いまいち品川区ってぱっとしないから、そこをどうにかしてしてほしい、という声もありました。実は、目黒駅とか五反田駅は品川区なんですよという話をすると、なるほど、となります。あと、海辺の顔を持つ天王洲とか、旧東海道がある北品川とか、今IT企業が集まっている五反田バレーとか、そういった魅力あるエリアが品川区にはあるので、そこを有機的に繋げるなどして、品川区のブランディングに活かしていくことが必要だと思います。

安倍: 大丸有エリア開発(大手町・丸の内・有楽町の一体開発構想)みたいな?

森澤: そうですね。各地域を周遊していただいて、人と人、街と街がつながるきっかけを作っていければと思います。

民間企業と都議2期の経験を活かし、誰もが生きがいを感じ、自分らしく暮らしていける品川作りに貢献していきたいと考える森澤氏の今後の動向に注目だ。

品川区の活性化について、ほかの候補者も各自の公約を掲げた。

■ 石田秀男候補

プロフィールは以下のとおり

無所属。元品川区議会議員。自民党による推薦。

63歳、昭和34年品川区北品川生まれ。品川教会幼稚園、品川区立台場小学校、品川区立城南中学校、東海大学高輪台高等学校で学んだ。東海大学文学部史学科卒業。

1999年に区議に初当選し、6期目。

石田ひでお氏ホームページ

▲写真 石田秀男氏 出典:石田ひでお氏のホームページ

品川区で生まれ育ち、地元に愛着を持っており、これまでの20年間の政治生涯では、元品川区議会議員として「コロナで品川区独自の給付金の充実」や「品川区待機児童のゼロ化」、「天王洲区の活性化」等の実績を積んだ。

今回は、「物価上昇への家計支援(商品券3,000円分を全区民へ配布)」や「学校給食の無償化」、「出産育児一時金の大きな支援(自己負担ゼロへ)」などの政策を打ち出している。

石田氏からは、Japan In-depthの質問に対し書面で回答をもらった。

質問: 品川区の抱える最大の問題は?

石田: 新型コロナウイルス対策など課題が山積している。また価値観、暮らしが多様化し個々が抱える課題も多岐にわたっている。それぞれの人々の安心、安全な生活や豊かな暮らしに寄り添うことが求められているその為に必要な、スピード感を持った計画、意思決定をはじめとした対応ができていないと考えている。

質問:  区民に一番訴えたいことは?

石田: 私は議会経験や民間で培った経験を活かし、現在の安定した区政を継承しながらも、さらに国・都・区、行政・議会と区民が一丸となり連携・協力しながら課題解決に取り組めることを目指しています。すべての人が「住んでいて良かった」と笑顔であふれる品川のまちづくりに全力で取り組んでまいります

質問: どのようなインフレ対策を考えているか?

石田: インフレ対策は国としての取組みになると考えています。

質問: どのようなコロナ対策を考えているか?

石田: 子どもたちの体験学習(運動会など)の復活全区民に区内共通商品券を配布し区内事業者の事業の活性化を図る。コロナによって失われた町会、自治体の活動を復活させる。

質問: どのような子育て・少子化対策、貧困家庭対策を考えているか?

石田: 出産育児一時金の拡大(自己負担ゼロ)、給食費の無償化子育て支援券子育てサロン開設子ども食堂の拡充ヤングケアラー支援(相談事業、家事支援など)。

質問: 学校給食の無償化や出産育児一時金の支援の財源についてどう考えているか?

石田: 給食費の無償化は10億~12億円。出産育児一時金は(約3,300人の出産と考え、出産費用約70万円のうち国の補助42万円で、差額を品川区で補助する)約10億円。これらの財源は現在の財政の中の無駄を無くせば捻出は可能であると考える。

質問: 保育園、幼稚園の質の向上を図る為、具体的にどのような点から取り組むか?

石田: 幼児教育の職員研修の助成。預かり保育を外部委託化することで職員の労働時間の短縮を図り、前期研修などの時間に充てる

質問: 「都市型観光と文化を融合させた施設整備」は具体的にどのようなものを目指しているのか?

石田: 品川区の地域の資源を活かした水辺空間の環境整備。(天王洲のアート、船宿、目黒川、八潮・勝島エリアなど)

質問: 羽田線品川ルート問題についての考えは?

石田: 固定化回避にむけた具体的提案をしている。

質問: 区政のDX化についてはどのような考えか?

石田: 国や都が推進する、東京のDX推進強化に向けて展開する様々な取り組みと連携を取りながら区のDX化を図っていく。品川区としては全庁横断的に各部署での担当も決まり、今後3年計画でより具体的な方法で取り組んでいく。

その2につづく)

トップ写真:「戸越銀座」東京都品川区東急電鉄池上線戸越銀座駅にある下町風情の商店街。地元の人だけでなく、観光客も含め人波が絶えない。 出典:photolibraryⒸコロンバス




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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