東京外かく環状道路 東名JCT 地中拡幅工事まもなく開始
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・外環は、都心を通らず郊外移動でき、都心部渋滞緩和が期待される。
・未開通区間完成で3環状道路が繋がり、輸送時間が短縮され、コスト削減、物流効率向上。
・東名JCTはトンネル交差・接続のため拡幅工事が1月下旬から開始予定。
東京外かく環状道路、通称「外環(がいかん)」というものがある。首都圏の人にはなじみがあるが、他県の人には知られていないかもしれない。しかし、この地域の物流にとっては重要な道路だ。
■ 外環の機能
外環は、東京都心部から半径約15kmの圏域を環状に連絡する全長約85kmの幹線道路だ。首都圏の交通渋滞緩和と円滑な交通ネットワーク構築を目的とし、首都圏の高速道路計画「3環状9放射」の一部を構成している。首都高速中央環状線、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と合わせて「首都圏3環状道路」と称される。首都圏の主要都市を結ぶ環状道路の一つで、都心を通らずに郊外を移動することができるため、都心部を通る首都高速などの渋滞緩和効果が期待されている。
約50kmが開通済だが、関越自動車道から東名高速道路までの約16kmが未開通だ。この区間は、環境への影響を考慮して、高架方式から地下方式に変更され、事業が進行中だ。
▲図 外環計画概要 出典:国土交通省東京外かく環状国道事務所
この関越自動車道から東名高速道路の未開通部分がとりわけ重要なのは、この未開通区間が完成すると3環状道路が完全に繋がり、都心部を通過する必要がなくなるため、都内の交通渋滞の緩和に大きく貢献するからだ。
トラックなどが都心部を迂回できるようになれば、輸送時間が短縮され、大幅にコストを削減でき、物流効率が大幅に向上するほか、企業活動の効率化や地域経済の活性化にも繋がる。
この未開通区間を平面図で見てみると以下のようになる。期待が大きい外環だが、2020年10月、東京都調布市東つつじヶ丘でトンネル工事に起因する地盤陥没事故が発生した。その後、原因究明と再発防止策が検討され、地盤改良工事が行われており、現在、この区間の工事は一時中断している。
▲図 外環(関越道~東名高速)の計画概要 出典:国土交通省東京外かく環状国道事務所
■ 東名JCT地中拡幅部の現状
とはいっても工事が中断しているのは一部で、東名JCT(ジャンクション)などでは地中拡幅工事が進行中だ。今回、現場を見学する機会があったので取材した。
東名JCTは、本線トンネル(地下の幹線部分)と、東名高速道路へ出入りするためのランプウェイ(連結路)のトンネルが交差・接続する地点だ。ここではスムーズな合流・分岐が求められるため、車両が安全に車線変更や速度調整を行うための十分な空間が必要になる。したがって、本線トンネルとランプウェイをつなぐ部分のトンネル断面を大きく拡げる(拡幅)必要があるのだ。
▲図 A・Hランプシールド・地中拡幅部全体平面図 出典:国土交通省 関東地方整備局 東京外かく環状国道事務所 東日本高速道路株式会社 関東支社 東京外環工事事務所 中日本高速道路株式会社 東京支社 東京工事事務所「第30回東京外環トンネル施工等検討委員会 」令和6年9月10日
下の図をみてわかるとおり、地中拡幅部の断面をみると楕円形となっている。今回は、拡幅工事がまだ行なわれてなかったので目視で確認できなかった。工事は1月下旬から開始される予定だ。
▲図 上:地中拡幅全体概要図 下:H ランプシールド地中拡幅部断面図(ランプシールドとは、外環本線トンネルとランプウェイのトンネルを地下で接続するために、ランプウェイ側のトンネルをシールド工法で掘削し、接続部を拡幅した場所のこと)出典:国土交通省 関東地方整備局 東京外かく環状国道事務所 東日本高速道路株式会社 関東支社 東京外環工事事務所 中日本高速道路株式会社 東京支社 東京工事事務所「第 30 回東京外環トンネル施工等検討委員会 」令和6年9月10日
■ 拡幅工事に関する住民説明会
今回、中日本高速道路株式会社と東日本高速道路株式会社、並びに国土交通省関東地方整備局東京外かく環状国道事務所は、メディア向け説明会と同時に、東名JCT地中拡幅工事箇所周辺の住民対象に説明会(オープンハウス)も行なった。(1月10日、11日開催)
調布市内で発生した地表面陥没・空洞事故を受けて行なわれたもので、参加者(初日7名、2日目29名)からは、地下水への影響や、工期などについて質問が出た。「家の下における工事だが、説明を聞いて少し不安が解消した」との声もあったという。
今後、振動・騒音対策の徹底や、地表面の変異、地下水位の変動の定期的な把握を行い、適切に情報を提供して地域の安全・安心を高める予定だ。
■ 今後の見通し
東名JCT地中拡幅工事は最低でも3年はかかるとのこと。現在工事が中断している調布市の区間の再開時期次第ではあるが、未開通区間全体が開通するのは少なくとも数年先になるだろう。
今回は見ることができなかったが、拡幅工事が終わったら再度見学したい。その時はまた報告する。
トップ写真:東名JCT地中拡幅部(2025年1月11日東京都世田谷区)ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。