フジテレビ解体的出直しのカギ「経営刷新」できるか

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・中居正広のトラブルでフジテレビのスポンサー離れ加速、CMは差し替えで損害額膨らむ。
・27日に臨時取締役会、その後フルオープンの会見が行なわれる。
・徹底的な社内調査と再発防止策、日枝体制の刷新が表明されなければ信頼回復は遠のく。
フジテレビのCMがほとんどAC(公益社団法人ACジャパン)に差し替わってから1週間超。3.11直後のような異常事態だ。フジテレビはCM差し替え分の料金はスポンサーに請求しない(できない)方針だという。その損害は計り知れない。
こうしたなか1月23日、4時間にわたって行なわれた社員説明会では、17日のクローズドな記者会見のていたらくを受け荒れに荒れた。現経営陣の進退を問う声とともに、社内でタブーの日枝体制批判まで飛び出した。内部から会見の内容は漏洩し、他のメディアが詳報しているから読んだ人も多いだろう。
なぜこんなに対応が稚拙なのか。会見に対応している港浩一社長と嘉納修治会長は不祥事会見の経験が無いことが大きい。港社長はバラエティ出身。嘉納会長は経理・財務畑だ。獰猛な社会部記者、容赦ないフリーランスなどが大挙して押し寄せること必至だ。
27日の今日、臨時取締役会が開かれる。そして16時から記者会見となる。今回は完全オープンだが、中居正広とトラブルになったとされる当事者の女性(X子さん)など関係者のプライバシーを侵害しうる発言がそのまま配信されないよう、音を絞るなど技術的な対応を取る可能性があり、10分間遅らせる、いわゆる「ディレイ配信」というイレギュラーな対応で行なわれる。
出席者は以下の4人とされ、取締役相談役の日枝久氏の名前はない。
フジ・メディア・ホールディングス、フジテレビジョン代表取締役会長 嘉納修治、フジテレビジョン取締役副会長 遠藤龍之介、フジテレビジョン代表取締役社長 港浩一、フジ・メディア・ホールディングス代表取締役社長 金光修。
当然だが前回同様、「第三者委員会に諮るので今は話せない」などという回答に終始するなら今回も非難囂々となり、信頼回復はさらに遠のくだろう。
最低でも、トラブルの原因を作ったとされる現役幹部の過去の同様な接待への関与の有無、当該幹部以外が主導した同様な接待が他にもあったのかどうか、トラブル発覚後のX子さんへの対応、中居出演番組を1年半続けた理由などを徹底的に調査し公表することを約束する必要がある。さらに再発防止策として、アナウンサーがタレントとの会食に出席することを原則禁止(上司の許可制)にすることも必要だ。
また、それ以上に重要なことは、日枝相談役を含む現役員体制の刷新だ。今の役員のもとで再生するといっても説得力に欠ける。社長が辞めてもグループの人事権を握る日枝氏が残るのであれば、氏に対する忖度はそのままだ。それでは改革はできない。
トップは社外から連れてくるくらいの思い切った人事案でないと、ステークホルダーは納得しないだろう。「解体的出直し」が今のフジテレビには絶対的に必要なのだ。
写真)フジテレビ 東京都港区
出典)Carlos Pascual/GettyImages
あわせて読みたい
この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。
