BYDの攻勢止まらず 2025年にPHEV投入 新型クロスオーバーSUVも

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(楊文果)
【まとめ】
・BYDは2025年に日本市場にPHEVモデルを投入し、BEVとの両輪経営を推進する方針を発表。
・新型クロスオーバーSUV「BYD SEALION 7」が2025年4月に発売予定。
・EVバスやEVトラックも投入する。国内ディーラー網も拡大する。
中国の自動車メーカー、BYD(中国比亜迪汽車)の進撃がとまらない。同社は、1月24日、シティサーキット東京ベイ(東京都江東区青海)にて、2025年の事業方針発表会を開催した。
BYD日本法人の劉学亮代表取締役社長は、PHEV(プラグインハイブリッド)を2025年内に日本市場に投入することを表明した。

▲写真 発表をする劉社長 ⒸJapan In-depth編集部
実はBYDの乗用車の販売の約6割はPHEVだ。中国市場でもBEVより低価格のPHEVが人気で、日本でもその投入が待たれていた。時期については、認可の問題などもあり、決まり次第発表するとのこと。
一方で、PHEVを投入するとBEVとシェアを食い合うのではないか、と質問したところ、BYD Auto Japan株式会社の東福寺厚樹社長は、「BEVとPHEVが出来るだけ積み上げが出来るようなプライスレンジや、モデルラインナップの空隙(くうげき=すきまの意)を埋めていけるように、今パズルをちゃんと組み立てようとしているところです。おっしゃる通り、完全に同じところに両方選べるとなると、2倍に増えるのではなくて1足す1が1になりかねないのはおっしゃる通りなので、そこは慎重に考えながら、うまくお客様のニーズに応えながらBYDとして台数が増やしていけるラインナップを今検討しております」と答えた。

▲図 BYD2024年乗用車部門の販売比率 提供:BYD
■ BYD世界販売427万台
昨年、BYDの世界新車販売台数は乗用車と商用車合わせて427万台となり、世界1位となった。前年度と比べて41.26%増という急成長である。BYDは2003年から乗用車の生産を開始し、2008年から商用車の研究開発も始め、これまで全世界70ヶ国と地域、400以上の都市で事業展開してきた。EVバス、EVトラックの販売数は累計13万台に上る。BYD特有のリン酸鉄リチウムイオン電池はコストが安く、安全性が高い点が評価されているという。「今後もますます増えていく予定です」と劉社長は自信を見せた。

▲図 BYD乗用車深謝販売台数(2024年)出典:BYD事業方針発表会20205プレゼン資料より
■ 日本販売
続いて、BYDの乗用車部門、BYDオートジャパンの代表を務める東福寺厚樹代表取締役社長は、昨年の乗用車販売台数が前年比5割増となる2223台を達成したことを明らかにした。去年投入したEVセダンBYDシールは2024年度カー・オブ・ザ・イヤーにて10ベストカーに、RJCカーオブザイヤーにてテクノロジーカーオブザイヤーの座に輝いた。また、商業車は小型EVバスのJ6と、大型のK8を中心に販売してきたが、EVバス全般の納車台数は350台となり、日本のEVバス市場に占めるシェアは7割強を超えている。

▲写真 BYD SEAL SEAL 出典:BYD事業方針発表会20205プレゼン資料より
一方、国内の拠点(ディーラー)だが、現在、日本全国に59ヶ所あり、2025年末までに100ヶ所への拡大を目指すという。
2024年を「創業期の総仕上げ」と評した東福寺社長は、「2025年以降を成長期のスタートと位置づける」と語った。具体的には2025年末を目処にPHEVモデルを導入し、BEVとの両輪経営を推進、2027年までには7〜8モデル体制を構築するという。
「多くの人々のe-mobilityへの移行をサポートし、さらなる電動車両の普及を推し進め、日本の政府目標(二酸化炭素排出削減)の達成に貢献し、日本のe-mobility社会の、さらなる発展、実現に貢献していく」と力をこめた。

▲写真 発表をする東福寺取締役社長 ⒸJapan In-depth編集部
■ バス新型モデル、クロスオーバーSUV投入、EVトラックも
副社長の石井澄人氏による発表では、EVバスの新型モデル「J7」が紹介された。J7はJ6と同じく日本専用設計であり、新たに開発した専用のeアクスルを搭載。駆動用のブレードバッテリーは、216kWhのものを天井部分と後席の後ろに搭載することで通路の段差を削減し、フルフラットを実現しているという。この「J7」の導入により、2030年までに累計4,000台のEVバスの販売を目指す。さらに、EVトラックの日本導入を正式に決定したと発表し、「2026年以降、順次展開できるよう、準備を進めています」とコメントした。

▲写真 新型EVバス「J7」を発表する石井副社長 ⒸJapan In-depth編集部
一方、乗用車の新商品としては、新型クロスオーバーe-SUV「BYD SEALION 7(ビーワイディー シーライオン 7)」を発表した。日本向け4番目のモデルで、FRとAWDの2タイプ。4月から全国のBYD正規ディーラーで販売する。サイズは全長4830mm×全幅1925mmx全高1620mm、ホイールベースは2930mm。満充電走行距離は後輪駆動モデル590km、四輪駆動モデル540kmを誇る。

▲写真 SEALION7 ⒸJapan In-depth編集部
「カッコよさに、エレガンスさを加えた、クロスオーバーSUV」と銘打ったSEALION7は海洋生物の自由さや美しさから着想を得た「海洋シリーズ」のトップモデルとして投入される。

▲写真 走行デモンストレーション中のSEALION7とEVバス「J7」(後方)ⓒJapan In-dept編集部
こうしたなか、同日テスラジャパンが新型「モデルY」を公開した。価格はシングルモーター後輪駆動の「RWD」が595万円、デュアルモーターAWDの「ロングレンジ」が683万9000円。納車開始は2025年4月の予定。SEALION7の競合は、このTeslaモデルYやPorsche Taycanあたりになるだろう。ユーザーがどう評価するか興味深い。しかし、このジャンルに日本メーカーの存在が希薄なのがなんともさみしい。

▲写真 テスラモデルY Ⓒテスラ
トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。
