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.政治  投稿日:2025/1/21

「安野氏のAIプロジェクト、応募を指示した」国民民主党榛葉賀津也幹事長


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・石丸新党のような「新しい政治スタイルが出てくるのはワクワクする」と評価。

・安野貴博氏の提唱する新AIプロジェクトにすぐ応募することを指示。

・参院選では1人区にも候補者を立てる。今秋にも発表する。

 

去年12月25日の国民民主党玉木雄一郎衆議院議員の回に続き、同党の榛葉賀津也幹事長をJapan In-depthチャンネルに招き、2025年の戦略について聞いた。

■ 103万円の壁社会保障・国会

現在の内閣支持率をみてみると国民民主党が野党の中ではトップとなっている。これについて榛葉幹事長は「国民民主党に対する期待ではなくて、国民の悲鳴」だと述べた。

榛葉「減税政策や103万円の壁、ガソリン減税など、具体的な政策を必死になって4年間ずっと言ってますから、そこをなんとかしてくれという(国民の)メッセージだと思います」。

相変わらず与党や他の野党、マスコミから聞こえてくるのは財源論だが、国の税収の推移を見てみると、5年間連続で上がり続け、過去最高となっていることが分かる。

▲図 一般会計税収の推移 ⓒ財務省「一般会計税収の推移」

また、2020年、2021年に注目すると国が当時の過去最高の税収をとっている。コロナ禍真っただ中で経済が回らない時期でも国は過去最高の税収だった。この驚くべき事実を知らなかった国民がどれだけいるだろうか。

榛葉幹事長は「主権者は国民ですからね。生かさず殺さずとはこのことで、税金を取る側に猛省を促したい」と批判した。

178万円の根拠は最低賃金だ。現在の103万円の壁になった約30年前から、最低賃金は約1.73倍上がっている。同様にこの壁も1.73倍にすべきだと榛葉氏は強調した。

「これは最低限生きていける金額なんですよね。これを財源論でごまかすのは、私は国民をあまりにも馬鹿にしていると思います」と、財源論ではなく生存権の話をしているのだということを改めて強調した。

■103万円の壁 今後の見通し

去年12月、自民・公明両党は「年収103万円の壁」を見直し、控除額を123万円に引き上げるなどとした与党税制改正大綱を決定した。

これに対し榛葉幹事長は、「政策には理念という姿が必要。我々は生存権を言っています。今国民は、生きていくのが(物価高で)限界だと言ってるのです。だから178万を目指そうと言ってる。178万円でなきゃ絶対だめとは言っていません。しかしその哲学にのっとり、なるべくそこに近づけようというのが三党合意だったわけです」と述べ、間もなく再開する自公国民3党の税制調査会長・政務調査会長の協議について、「よく見守りたいと思います。国民民主党を騙すのは結構だけども、国民は許しませんよ」と述べた。

今月24日から国会が始まる。もしも123万円から壁が動かなかった場合、予算案には「賛成できない」と主張した。

■ 石丸新党「再生の道」

前安芸高田市長石丸伸二氏は今月15日、都内で会見を開き、ことし夏行われる都議会議員選挙に向けて、みずからが代表を務める地域政党「再生の道」を立ち上げた。この石丸新党について安倍編集長は、政治に出たい人のプラットフォームとして機能し、従来の政党とは概念が違うと評価した。

榛葉幹事長は、「それも含めて石丸さんらしいかもしれないですね。既存の政治のあり方に常に一石を投じ続けてきたのが石丸さんだ。私のような古い政治家からすると、やはり政治集団なら理念があり、柱があり、同じ方向でと考える。こうして新しい政治スタイルが出てくるのはワクワクするね」と評価した。

■ デジタル民主主義2030 

そして今、注目されているのがデジタル民主主義である。2024年都知事選で15万票を獲得した現役AIエンジニアの安野貴博氏は16日の会見で「デジタル民主主義2030プロジェクト」を発表した。

プロジェクトではAIを活用し、民意を収集、可視化するプラットフォームを構築する。この「民意の見える化」作業を「ブロードリスニングと呼ぶのだが、榛葉氏は「みんなが(一度に10人の話を聞くことが出来ると言われた)聖徳太子になれる(仕組み)」と称し、評価した。

また榛葉氏は、「(会見を見たが)しびれましたね。すぐに伊藤孝恵参議院議員に参入するよう指示した。これこそAIの正しい使い方ですね。今までは目の前の声の大きい人やインフルエンサーに耳を傾けがちだった。しかし目の前にはない声、隠れた声、声なき声、これらを集約できるのというは民主主義の救世主ですね」と同プロジェクトを絶賛した。

しかし、AIが出した結論が組合の利害と対立することもありうるのでは、との安倍編集長の指摘に対し榛葉氏は、「組合の幹部と現場にいる一人一人の組合員との間に乖離があるかもしれない。そういった民意を可視化することはとても大事で、これもチャレンジングでワクワクする」と前向きに捉えた。

最後に石丸氏、安野氏の新たな取り組みを改めて評価し、石丸氏の提案を聞く可能性について問うと「もちろんある」と答えた。

■ 参院選

続いて、議題は参院選へと移った。自民党はたったのマイナス18議席で過半数割れし、少数与党になってしまう。これに対し、榛葉氏は「与党は緊張感が無い」と指摘。「自民党はまだ圧倒的過半数をもっているような雰囲気」があり、政倫審も未だに終わってないという。

この緊張感の無さは一体何故なのか、安倍編集長が聞くと、榛葉氏は、「24年間永田町にいるが、今は麻生内閣末期の雰囲気にそっくりだ。ただ、唯一ちがうのは野党がバラバラだという点。そこが自民党の危機感の欠如の一因ではないか。野党第一党が現実的政策をガツンとやれば自民党もびびると思うけど。しかし(立憲民主党が)今一番のイシューを紙の保険証等に据えてしまっている限り、自民党は安泰だと思っているのでは無いか」と分析した。

また、立憲民主党の野田佳彦氏が減税に踏み切れないのもこの緊張感の無さを後押ししているという。「財務省バックで、立ち位置が石破氏にそっくりだ」と評した。

さらに、昨年末から日本維新の会が検討している予備選について榛葉氏は「無理」と明確に参加を否定した。予備選とは、「1人区」における野党の候補者一本化のために行われる予備選挙のことである。

榛葉氏は、「まず、共産党はどうするのか。18議席で与野党がひっくりかえるので、東京の6人区のような複数区も大事だが、やはり1人区が重要。ここで与野党が逆転すると一気に自民党は少数になる。ただ、ここで自民党打倒という目的のために共産党に議席を譲り協力を仰いだりすると、それはもう政策そっちのけである。基本理念がとても大事になってくると思う」と述べ、党としては予備選無し、野党共闘無しの方針で進めていくと結論付けた。

一方、長崎、香川、奈良といったいくつかの1人区で両立を目指す戦略を立てており、今週末にも発表があるという。党への応募者もすでに千人程集まり、都議選への出馬も可能性としてあると語った。

■ 外交・安全保障

政治学者のイアン・ブレマーがGゼロ社会を提唱している。これは、いわゆるG20やG7などのグループが消え、世界秩序を牽引するリーダーがいなくなる、みんなが内向きの状態をいう。

「これは本当に気をつけないと、こういうときに第3次世界大戦になりかねない。だから日本がしっかりしなければいけない」と警鐘を鳴らした。

トランプ大統領がパリ協定から離脱する大統領令に署名したが、第2TPPとも呼ばれる、IPEF(インド太平洋経済枠組み)からも離脱するだろうか。榛葉幹事長の見解を聞いた。

「IPEFは”肉のないハンバーガー”と言われています。貿易協定というのは関税をなくすしたり下げることが1番の目的ですが、IPEFは関税の理論を抜いている。これは、アメリカに入ってもらわないといけないからです」と解説、そのうえで、中国がアジアで存在感を増してくることはアメリカにとっても日本を含む自由主義国家にとっても悪夢だと述べた。

したがって、「アメリカは中国だけが力を持つことは望んでいない。アメリカの戦略的にもIPEFから簡単に離脱することはないと思います」と述べた。

■ 石破内閣の外交

中国との外交に熱心な石破内閣だが、榛葉幹事長は「中国はしたたかですよ。毅然とするところは毅然としないと日本はやられますよ」と警鐘を鳴らした。

また、南西諸島での領海侵犯、長崎県男女群島沖の領空侵犯など見過ごせない事実もありながら、中国人旅行者のビザ緩和措置などを行っている事に対し、「安全保障とはミリタリーの安全保障だけではない。この国の強さというのは天皇制を中心とした日本の伝統文化です。これをきっちり守ることが、ものすごい政治力、文化力の根幹となります。(石破さんには)しっかりしてほしいと思います」と榛葉氏は石破首相に注文をつけた。

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トップ写真:国民民主党榛葉賀津也幹事長(2025年1月21日東京・千代田区)ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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