つまらない仕事が労働生産性を低下させる理由 【日本経済をターンアラウンドする!】その2
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・無意味で、不必要で、有害でもある有償の仕事、雇用の形態のことと定義された「ブルシット・ジョブ」(Bullshit Jobs)。
・仕事が面白くない、つまらない理由の中でよく言われるのは、日本の企業社会は「ブルシット・ジョブ」が多い!はびこっている!という意見である。
・DXを徹底的に入れて業務自動化・効率化を進めること、本当に成果に必要な仕事は何かを厳選し、徹底的に集中することなど必要であろう。
「仕事がつまらない」
「こんな仕事、正社員がやるの?」
「こんな仕事ばかりだと成長しないよ・・・・」
「こんな仕事、お金もらってるからやるけど、ほんとくそみたいな仕事だな」
無意味で、不必要で、有害でもある有償の仕事、雇用の形態のことと定義された「ブルシット・ジョブ」(Bullshit Jobs)と呼ばれている。こうした仕事をしたり、上司から無理難題を押し付けられるハラスメントにも感じるような仕事をしたり、やらされ感の強い仕事をしたり・・・・という人も多いかもしれない。
▲図 【出典】筆者作成
前回低い労働生産性について話したが、その原因はやはり「楽しくない」仕事環境、特に仕事の内容にあると考える。そもそも仕事を「面白い」「楽しい」「ためになる」「きついけど我慢した先に楽しい部分もある」と思えなければ仕事の意欲も出ないし、能率、労働生産性も上がらない(要因である職場環境については次回考える)。
□ 低すぎる満足度・・・
▲表 【出典】筆者調査・作成
世界の関係データを見てみよう。
上記の各指標の数値、日本はどうみても低い。特に、ランスタッド社の国際調査で仕事満足度が42%というところが衝撃である。34か国で最低であるのだ。一方、1位のインドは89%と大きく違っている。こうした低い仕事満足度は深刻と言ってもいい。
□ 仕事内容をいかに充実させるか?
仕事が面白くない、つまらない理由の中でよく言われるのは、日本の企業社会は「ブルシット・ジョブ」が多い!はびこっている!という意見である。ブルシット・ジョブには何個かパターンがある。以下の5つが有名だ。
1.取り巻き:
ある人を良く見せる、誰かを偉そうに見せるため仕事。例えてよく言われるのは、ドアマンなどが当てはまるとのことのよう。誰かの見栄や権威付けのために成立する仕事。
2.脅し屋:
顧客のために相手を脅すようなロビイストなり、顧問弁護士の仕事。総会屋、脅迫を使う反グレといったところも当てはまるのかもしれない。ビジネスは競争なので一定程度のソフトな脅し屋のような役割は存在するのは普通なのかも。
3.尻ぬぐい:
欠陥やバグを修正、誰かの失敗を是正する仕事。
4.書類穴埋め:
ゴミになるような資料、誰も真剣に読まないドキュメントを延々と作る仕事。
5.タスクマスター:
仕事をふるだけの仕事。
こうした仕事が日本の職場環境には多いのかどうかは統計がないのでわからないが、一定程度こうした仕事に従事してしまうと社員のモチベーションが低下し、労働生産性が低下することは確かであろう。
・成長への実感があるか?
・自分のやりたいこと、やりがいがあることか?
・充実した仕事をしているか?
これにYES、と答えられるように、仕事内容をブルシット・ジョブからターンアラウンドすべきなのだ。
□ 人的資本に力を入れるために、やらされ仕事を減らさないと
こうしたブルシット・ジョブに不本意にも労働時間を費やした人が満足を感じられ、幸福度など感じられるはずもない。DXを徹底的に入れて業務自動化・効率化を進めること、本当に成果に必要な仕事は何かを厳選し、徹底的に集中することなど必要であろう。その意味で、デジタル田園都市構想や人的資本の各政策は正しいということだ。岸田政権に期待したい。
次回は生産性革命について考える。
(つづく。第1回)
トップ写真:東京のビジネスマン(イメージ) 出典:Photo by d3sign /Getty Images