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.政治  投稿日:2023/1/6

カラス退治、まずは兵糧攻め「高岡発ニッポン再興」その41


出町譲(高岡市議会議員・作家)

 

【まとめ】

・高岡市は今月からカラスの個体数の減少を狙って「兵糧攻めキャンペーン」を実施。

・市は、農作物はすべて収穫し、廃棄の場合、土に埋める。生ごみは2重にくるむことを市民に要請。

兵糧攻めと個体数削減、この2つを徹底することこそが、カラス対策の肝。

高岡市は今年、カラス退治に本格的に乗り出します。今月16日から「兵糧攻めキャンペーン」を実施します。

カラスのエサをなくし、個体数の減少を狙っています。

カラスは日中、田畑などでエサを探し、夜にねぐらに戻ります。このエサを断ち切る兵糧攻めがこの政策の肝なのです。

冬場は、エサが乏しくなっていますが、カラスは、農作物の残りや放置された果実を食べています。そこで、高岡市では、農家や市民に果実などは放置せず、すべて収穫するよう呼び掛けます。また、廃棄した場合は、外から見えないようにするため、土に埋めることを求めます。さらに、生ごみは2重にくるみ、外から見えないようにするよう要請します。

 カラスは、カロリー消費が激しく、脂肪がほとんどありません。そのため、毎日食べる必要があります。1週間エサをまともに食べることができないと、餓死します。

高岡市では、個体数削減のため、檻を一基増やしています。その成果も現れています。高岡市によれば、捕獲数は11月末時点で令和3年は202羽だったのですが、4年は221羽になっています。

高岡のカラス対策は専門家の目にはどのように映っているのでしょうか。私は去年、ある専門家に話を聞きました。

東海大学医学部客員教授の中島功さんは、市役所の職員立ち合いの下、高岡市のカラスの檻を視察した上で、政策提言しました。中島さんは、山形県鶴岡市や神奈川県平塚市のカラス対策にアドバイスするなど、カラス対策の第一人者です。

写真)カラスの檻を見る中島教授

筆者提供)

中島さんはまずは、鶴岡市や平塚市に比べ、高岡市のカラスの檻の床がきれいすぎると指摘します。

鳥類の糞は、哺乳類と違って水に溶けないので、床にべっとり付着するといいます。中島さんは、床を見ながら、おとりが入っていないときもあるのでないかというのです。その上で、3652羽以上のおとりのカラスを飼い続けるべきだと主張しています。

さらに、 高岡市の職員が、捕獲数を監査するため毎週、檻に行って業者の捕獲数を確認すべきだといいます。

「鶴岡市は、毎週、2回、環境課と農水課から1名ずつ、檻に出向き、袋に入れる個体数を数えています。それが監査に相当します」。

高岡市では、業者が撮る写真を見て、判断していますが、中島さんは、現場主義を訴えています。

また、檻のエサですが、高岡市ではビーフジャーキーとパンなのですが、中島さんは「脂身のある肉がいい」と述べています。餌次第で檻に入るカラスはぐっと多くなるというのです。

中島さんの話を聞きながら、高岡市のカラス退治、ぜひとも成功してほしいと思いました。

私がおととしの12月、初めて市議として質問した際のテーマがカラス対策でした。初議会でなぜ、カラスを取り上げたのか。

私は「スモールサクセス(小さな成功)を収めることこそが大事だ」と思ったからです。

カラス対策は、成果が出れば目に見えます。どんなことでもいいので、成功すれば、組織、いや地域全体が変わるのです。1つの成功体験は飛び火するのです。

カラス退治で有名なのは、東京都知事だった石原慎太郎さんです。ゴミの出し方をきちんとし、徹底的に捕獲した結果、カラスの生息数は、一気に減りました。2001年に36400羽いたカラスは、2年後の03年は23400羽に減り、2020年には11000羽にまで激減しているのです。私は東京にいて、カラスが激減する様子を実感しました。

東京の成功例で分かったのは、兵糧攻めと個体数削減、この2つを徹底することこそが、カラス対策の肝なのです。

さて、今年の高岡市。カラス対策で、「スモールサクセス」を収めたいですね。

トップ写真:高岡のカラス 

)筆者提供




この記事を書いた人
出町譲高岡市議会議員・作家

1964年富山県高岡市生まれ。

富山県立高岡高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。


90年時事通信社入社。ニューヨーク特派員などを経て、2001年テレビ朝日入社。経済部で、内閣府や財界などを担当した。その後は、「報道ステーション」や「グッド!モーニング」など報道番組のデスクを務めた。


テレビ朝日に勤務しながら、11年の東日本大震災をきっかけに執筆活動を開始。『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』(2011年、文藝春秋)はベストセラーに。


その後も、『母の力 土光敏夫をつくった100の言葉』(2013年、文藝春秋)、『九転十起 事業の鬼・浅野総一郎』(2013年、幻冬舎)、『景気を仕掛けた男 「丸井」創業者・青井忠治』(2015年、幻冬舎)、『日本への遺言 地域再生の神様《豊重哲郎》が起した奇跡』(2017年、幻冬舎)『現場発! ニッポン再興』(2019年、晶文社)などを出版した。


21年1月 故郷高岡の再興を目指して帰郷。

同年7月 高岡市長選に出馬。19,445票の信任を得るも志叶わず。

同年10月 高岡市議会議員選挙に立候補し、候補者29人中2位で当選。8,656票の得票数は、トップ当選の嶋川武秀氏(11,604票)と共に高岡市議会議員選挙の最高得票数を上回った。

出町譲

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