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.国際  投稿日:2024/2/1

エアバス、インド進出を本格化


中村悦二

【まとめ】

エアバスタタ・グループと組み、民間用ヘリコプター「H125」のインド進出を本格化。

・「H125」生産開始は2026年、輸出にも意欲的。

・パイロット訓練センターは2025年初から開業予定。

 

欧州の航空宇宙大手のエアバスがインド進出を本格化している。

エアバスの子会社エアバス・ヘリコプターズがタタ・グループと組み、民間用ヘリコプター「H125」のインドでの生産に乗り出す。H125は世界の最高峰エベレストに降り立ったことでも知られ、世界での合計飛行時間が3,800万時間を超えるとされる機種。中国やパキスタンなどとヒマラヤの高地で接するインドにとって、エアバスとの提携は好都合。ヒマラヤ地域での対外的存在感のアップにつながる。

エアバスは軍用ではすでに生産を始動。インドのグジャラート州バドダラで軍用の輸送機生産を始めている。

エアバス・ヘリコプターズと提携するタタ・グループの企業は、タタ・アドバンスト・システムズ。この提携は、インドの共和国記念日(1月26日)に、同国を訪問中だったフランスのエマニュエル・マクロン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相の臨席の下で発表された。民間用ヘリコプター生産はインド自立キャンペーン「アートマニルバール・バーラト」の一環。「Bharat」はIndiaと並びインド憲法が定めるインドの正式名称だ。

インドでのH125生産開始は2026年の予定。最終組立工場の立地先は両社の話し合いで決定することになっているが、合わせて、エンジンなど様々な部品の工場の立地先も選定する。

エアバスのギョーム・フォーリィCEO(最高経営責任者)は「ヘリコプターは国づくりに重要」と指摘。一方、タタ・グループの持株会社タタ・サンズのN・チャンドラセカランは「この最終組立工場はインド市場だけでなく輸出も手掛ける」とし、ヘリコプターの輸出にも意欲的だ。

エアバスとタタ・グループ傘下のエア・インディアは、ハリアナ州グルガオンにA320とA350のパイロット訓練センターを折半出資で設立することを1月中旬に発表している。パイロット訓練センターは2025年初から開業する。

エアバスはまた、航空機のメンテナンス技術訓練コース設置に関し、ハイデラバードの航空機のメンテナンス企業であるGMRアエロ・テクニクと提携した。

エアバスは「インドでは向こう20年間で4万1千人のパイロットと4万7千人の技術者が必要」と見て、上記分野での業容拡大を目指している。

エアバスはさらに、グジャラート州バドダラにあるインド初の交通大学ガティ・シャクティ・ビシュワビディアーラャ、インド工科大学カンプール校、インド工科大学ベンガルール校と航空宇宙人材養成で協力している。

エアバスは現在、日本では全日本空輸、日本航空、スターフライヤー、低コスト航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパン、ピーチ・アビエーションを顧客としている。エアバス・ヘリコプターズは日本の官民市場の50%以上を有し、その運航機数は370機を超えるとされる。

研究・開発分野での協力案件も多い。

エアバスにとって、アジアで日本に次ぎ将来性のあるインド市場への本格進出は「願ってもない好機」と映っているに違いない。(敬称略)

 

トップ写真)6月30日にギリシャのカバラで開催されたカバラエア ショーで曲技飛行ディスプレイを実行するヘリコプター コリブリ H120 (EC120B) ボストーク ヨーロッパ – ウィザード チーム(ギリシャ・カバラ 2018年6月30日)

出典)Athanasios Gioumpasis / Getty Images




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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