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.国際  投稿日:2024/4/19

シンガポール、5月に新首相誕生


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・シンガポールで、ローレンス・ウォン副首相兼財務省が新首相に就任。リー・ファミリーによる統治が終わりを迎える。

・総選挙は年内、あるいはあるいは2025年度予算案の成立後と予想されている。

・ローレンス・ウォン氏は米留学した後、世界金融危機時の政府の迅速対応にも貢献したエリート。

 

シンガポールで5月に新首相が誕生する。リー・シェンロン首相(72歳)が退任し、ローレンス・ウォン副首相兼財務相が5月15日付けで第4代首相に就任する。同国では「建国の父」と称されるリー・クアンユー初代首相以来、ゴー・チョクトン首相時を除き、リー・ファミリーが国を率いてきており、「ローレンス・ウォン首相」の登場は、シンガポールが新時代に入ることを意味する。新首相の下での総選挙実施もうわさされている。

 

 長期に及んだリー・ファミリー支配

 

シンガポールの初代首相、リー・クアンユーは1959年から1990年11月まで長期にわたり首相の座にあった。首相の座をゴー・チョクトンに譲った以降も上級相にとどまり、ゴー・チョクトンが2004年8月に首相を辞任し上級相に就くと、今度は内閣顧問に就任した。3代目の首相の座に就いたのは、リー・クアンユーの長男であるリー・シェンロンであった。

 

リー・シェンロン首相は昨年11月の与党・人民行動党(PAP)の党大会で、2024年11月21日までに首相交代する意向を示し、ローレンス・ウォンがPAPの第4世代リーダーとして、閣僚とPAPの議員全員の支持を得たと発表していた。

 

 注目される総選挙の実施時期

 

シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは4月16日付で、ローレンス・ウォンが示すと見られる総選挙日程を予測した。それによると、独立記念日演説後の9月ないしPAP結党70周年を記念する11月の党大会後の12月に総選挙を実施、あるいは2025年度予算案の成立後に実施としている。

 

 今夏の独立記念日演説

 

リー・シェンロン首相は4月15日、国民に対し「ローレンスと彼のチームを全面的に支援し、彼らとともにシンガポールの明るい未来をつくってほしい」と呼びかけた。その面では、8月9日の独立記念日の後に行われるナショナルデー・ラリー(独立記念日演説)がどのようなものになるかが注目される。

 

 ローレンス・ウォンの人柄

 

1972年12月、屋根材の営業会社幹部の家庭に生まれたローレンス・ウォンが住むのは、多くのシンガポール国民と同様、HDBと呼ばれる公営住宅。父親はマレーシアの複合企業サイムダービーのセールスマン(海南島生まれ、2021年に死去)で、母親(82歳)は小学校の教師だった。自身を「本の虫、ギター演奏者、愛犬家」とし、シンガポール政府の留学奨学金を得た際には「好きなジャズシンガーが多くいる米国を迷いなく留学先に選んだ」という。

 

政府の奨学金で米ウィスコンシン大で経済学士、米ミシガン大で経済学修士、米ハーバード大ケネディースクール(公共政策大学院大学)で行政修士号を取得した。だが、エリートコースにはすぐには乗れず、公務員として働いた後に受け入れられ、教育相などを経て副首相兼財務相に就任した。

 

 危機時対応で実績

 

政界入り前は、通産省調査・企画課長、財務省財政政策課長、財務省予算局経済企画部長、保健省医療財政局長を歴任。

 

2005年、リー・シェンロン首相の首席秘書官を務め、2008年にエネルギー市場庁長官も務めた。世界金融危機時の政府の迅速対応にも貢献。以後、国務相(国防・教育担当)、文化・地域・青年相兼第二通信・情報相などを歴任しているエリートだ。

写真:ウォン・シンガポール副首相兼財務大臣による表敬

出典:首相官邸 総理の一日(2023年5月26日)




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