【ファクトチェック】「日本人の過半数がウクライナへの援助に反対」→検証対象外
【ファクトチェック】
「日本人の過半数がウクライナへの援助に反対」→検証対象外
【まとめ】
・Xに「日本人の過半数がウクライナへの援助に反対 」とするポストがなされた。
・ロシアの通信社スプートニク日本のアンケート結果を引用したもの。
・日本経済新聞のアンケート結果とは大きくことなるものの、当該ポストの真偽は判定が困難ゆえ、今回は「検証対象外」と判定する。
■ 疑義言説
以下のポストがX(旧Twitter)になされた。
🇯🇵世論調査: 日本人の過半数がウクライナへの援助に反対 日本人はウクライナへの158億円(1億600万ドル)の金融支援に反対しており、58%が反対している。 30%近くが外国に資金を支出することに反対し、賛成しているのはわずか4%だ。 出典:スプートニク
2024年2月14日·4.1万件の表示、1144いいね、563リポストされている。
リポストは以下の通り。
このポストには以下のコミュニティノートがついている。
日本経済新聞の読者アンケート調査によると、ロシアによるウクライナ侵攻について、生活や仕事に悪影響が出ても日本政府はウクライナ支援を続けるべきだと考える人が約7割を占め、ロシアへの制裁を強化すべきだとする割合も7割を超えています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA151P40V10C23A2000000/
ロシアの通信社SPUTNIK(スプートニク)は、 ロシアの政府系メディア「ロシアの今日」の傘下にある事に留意が必要です
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AF_(%E9%80%9A%E4%BF%A1%E7%A4%BE)
ロシアのプロパガンダを流す、フェイクニュース疑惑があります https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68729?page=2
EUはロシア国営のRTとスプートニクおよびそれらの関連会社を禁止処置をこうじています
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-02-27/R7Z2AJDWLU6U01 https://www.nhk.or.jp/bunken/research/focus/f20220501_12.html
■ ファクトチェック
「日本人の過半数がウクライナへの援助に反対」としたポストの根拠は、以下のスプートニク日本のアンケート結果によるものだと思われる。
🧐 #日本 は #ウクライナ に新たな財政援助を行うべきでしょうか?
— Sputnik 日本 (@sputnik_jp) February 11, 2024
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スプートニク日本は、Xのアンケート機能を用いて、
「#日本 は #ウクライナ に新たな財政援助を行うべきでしょうか?」という質問をポスト。それに対し15,780人が回答し、「そのような支出には反対」とした人が57.5%と過半数を占めている。したがって、疑義言説である当該ポストの「日本人はウクライナへの158億円(1億600万ドル)の金融支援に反対しており、58%が反対している」という部分は、スプートニク日本のアンケート結果と齟齬がない。
一方、「30%近くが外国に資金を支出することに反対し、賛成しているのはわずか4%だ」という部分だが、スプートニク日本のアンケートによると、「日本が他国に多額を出すのはあまり望まない」が29.4%なので、前段はアンケート結果を減給したものと思われる。しかし、同アンケートでは、「日本はそうした目的のためなら資金は使える」が4.2%、「資金を出す必要があるなら、構わない」が8.9%となっている。2つの質問は類似しており、回答者も判断に迷ったと思われるが、どちらも程度の差はあれ、ウクライナに対する新たな財政支援を肯定(賛成)しているととらえて良さそうだ。したがって、「賛成しているのはわずか4%」と断定するには無理があると思われる。自社のアンケートであるが、それを引用する時に読者をミスリートしている。
一方、ウクライナの支援に対する国民の賛否については、日本経済新聞が2023年2月に読者アンケート調査を行っている。
日本経済新聞と日経リサーチの共同による調査は2月7〜10日に行われ、日経電子版などの利用に必要な「日経ID」の所有者を対象にオンラインで実施し、1425人から回答を得ている。
調査によれば、「生活や仕事に悪影響が生じても、日本政府はウクライナへの支援を続けるべきだと思うか」との質問に対して、「とてもそう思う」または「まあそう思う」と回答した人は66%を占めた。年代が上がるごとにウクライナ支援を支持する割合は高まり、最も高い70代以上は83%と20代よりも26ポイント高い。
年代によってウクライナ支援の賛成率は異なるが、一番低い20代でも支援の必要性の是非について「あまりそう思わない」「全くそう思わない」と答えた割合は30%を下回っており、前述のスプートニク日本のXのアンケート結果とは大きく乖離している。
■ スプートニクとは
スプートニクはロシアの通信社である。本局はモスクワにあり、日本版は2015年にローンチした。
欧州連合(EU)はウクライナ戦争直後の2022年3月2日、「スプートニクとロシア・トゥデイは、ロシア連邦当局の永続的な直接的または間接的な管理下にあり、ウクライナに対する軍事侵略を推進し支援し、近隣諸国の不安定化に不可欠かつ貢献している」として、「 EUは、スプートニクとRT/ロシア・トゥデイ(RT英語、RT英国、RTドイツ、RTフランス、RTスペイン語)のEU内またはEU向けの放送活動を緊急停止する」と発表した。
本ファクトチェックは、スプートニクというメディアの編集方針を評価するものではない。当該ポストは、スプートニク日本の行ったX上のアンケート結果を引用したにすぎず、一部、引用が不正確でミスリードな部分はあったにせよ、「誤り」と判定するだけの根拠も無い。
ロシアの通信社スプートニクと日本経済新聞とでは、その読者層は全く異なると思われる。ウクライナ支援に対するアンケートを同時に取った場合、全く違う結果が出ても不思議ではない。
したがって当該ポストの真偽を判断することは困難だ。よって、「検証対象外」と判定する。
【Japan In-depthファクトチェックポリシー】
Japan In-depthは、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、ファクトチェックを実施しています。FIJが定めたガイドラインに準拠して、言説の真実性・正確性の評価・判定を行います。政治家、有識者の発言、メディアの報道、ネット上で拡散されている情報など、社会的に影響の大きな言説を対象とします。判定基準は以下の通りです。
トップ写真:岸田文雄首相とゼレンスキーウクライナ大統領(2023年3月21日 ウクライナ・キーウにて ※Xのポストの写真とは異なります)出典:首相官邸