【防衛省概算要求】2025年度装甲車両
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省の概算要求が閣議で承認された。8兆5389億円と過去最大規模。
・新たに装備される24式装輪装甲戦闘車や迫撃砲の調達が始まり、旧式装備の長期保管も計画。
・財務省は装甲車両の調達ペースやコストに懸念を示し、予算の見直しを求めている。
防衛省の概算要求が8月30日に閣議で承認された。8兆5389億円と過去最大規模である。
陸上自衛隊は以下の装甲車両を要求している。
16式機動戦闘車をベースに開発された共通戦術装輪車は3種類が調達される。本年度から調達が始まった歩兵戦闘車型は24式装輪装甲戦闘車と命名され、18両が218億円で要求されている。同じく自走迫撃砲型は24式機動120ミリ迫撃砲と命名され8両が83億円で調達される。
写真:共通戦術装輪車(偵察戦闘型)のイメージ
出典:陸上自衛隊
本年から偵察型も調達される。6両が90億円で要求されている。これは来年度から配備されるので現段階で型式は与えられていない。恐らく来年度に25式偵察戦闘車と命名されるだろう。
24式装輪装甲戦闘車は乗員3名+下車隊員8名。全長約8.1m、全幅約3.0m、全高約2.9m、 重量:約26t。 最大速度:時速約100km以上で軽量化のために無人砲塔を採用し、武装は主砲にブッシュマスターMk.44 30mm機関砲を、同軸機銃には7.62mm Mk.52チェーンガンを採用している。
24式機動120ミリ迫撃砲は乗員5名、全長約8.1m、全幅約3.0m、全高約2.7m、 重量:約26t。 最大速度:時速約100km以上、 武装はタレス社の120ミリ迫撃砲システムR2Mを採用。
写真:24式機動120ミリ迫撃砲
出典:陸上自衛隊
偵察型は乗員:5名、全長約8.7m、全幅約3.0m、全高約2.9m、 重量:約26t。 最大速度:時速約100km以上。有人砲塔を採用し、主砲は ブッシュマスターMk.44 30mm機関砲を、同軸機銃には7.62mm Mk.52チェーンガンを採用。監視装置 はエルビット社の光学電子センサーシステムMRSS(Multi-Sensor Reconnaissance and Surveillance System )を採用している。なおMRSSはフルバージョンではなく機能を限定した簡易型である。
3車種ともにネットワークシステムは10式戦車や16式機動戦闘車と同じ10TKNW(10TanK NetWork)システムが採用されている。トータル調達数は24式装輪装甲戦闘車が合計150両、24式機動120ミリ迫撃砲は100両、偵察型は120両が見込まれている。
96装甲装輪装甲車の後継である装輪装甲車(人員輸送型)として採用されたパトリア社のAMVは28両が225億円で要求されている。防衛省は日本製鋼所によるライセンス生産を予定しているが、コマツが撤退し、三菱重工と日立に集約された装甲車事業に新規参入社がはいって、調達ペースの低下やコスト高騰を警戒した財務省は反対している。このため本年度予算では初度費158億円が計上されていたが、財務省はこの金額を輸入に使うならば許可するというスタンスである。防衛省によると依然、防衛省と財務省のハイレベルの交渉が続いており、来年度予算では輸入で対応することになっている。
10式戦車は12両が231億円で求されている。なお防衛装備庁は2024年6月28日(金)、陸上自衛隊の10式戦車の能力向上のための情報提供企業の募集を開始した。
16式機動戦闘車は15両が、156億円で要求されている。19式装輪自走155ミリ榴弾砲は14両が140億円で要求されている。
来年度から装甲車両などの旧式化した陸自主要装備のモスボール化(編集部注:兵器などの機材を劣化を防ぐ処理をした上で保管すること)も行われる。これまでは用途廃止となった装備は廃棄されてきたが、継戦能力強化のために、部隊改変などで使用しなくなった装備のうち、まだ能力を発揮しうる装備については、いわゆるモスボール化して管理コストを低減して長期保管を行う。保管設備の設置経費などで7億円が要求されている。想定されている装備は74式戦車、90式戦車、MLRS(多連装ロケット・ランチャー・システム)などが想定されている。
トップ写真:24式装輪装甲戦闘車
出典:陸上自衛隊