トランプ、ゼレンスキー両大統領衝突 米側の反応は

古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
【まとめ】
・2月28日、トランプ米大統領とゼレンスキーウクライナ大統領が衝突し、論争が全世界に報道された。
・米議会では、共和党はトランプを支持しゼレンスキーを非難、民主党は逆にゼレンスキーを擁護しトランプを批判する反応が大勢を占めた。
・共和党はウクライナへの資金援助の見直しや和平調停を主張、民主党はウクライナ支援の継続とロシアへの対抗を強調した。
ウクライナ戦争をめぐりアメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が2月28日、ホワイトハウスで衝突した。多数のメディアの眼前で展開したその論争の一切は全世界に大ニュースとして流された。反響は多様だった。
だが肝心のアメリカ政界ではこの論争はどんな反応を生んだのか。
AP通信などの米側メディアが報じた共和、民主両党の連邦議会の有力議員たちの発言を紹介しよう。
その大筋を簡単にまとめれば、共和党側はトランプ大統領を礼賛、ゼレンスキー大統領を非難、民主党側はほとんどがその逆だった。
★リンゼイ・グラハム上院議員(共和党)
「この論争はこの首脳会談が完全な破綻だったことを示した。そして私はトランプ大統領をこれほど誇りに感じたことはない。ゼレンスキー大統領はホワイトハウスのアメリカ大統領執務室であ非礼だった。アメリカはゼレンスキーと再び交渉や協力ができるかどうか、私にはもうわからない」
写真)ワシントン DC でホワイトハウスの外で記者団に話すリンジー・グラハム上院議員 (共和党、サウスカロライナ州)-2025 年 2 月 28 日。
★マイク・ジョンソン下院議長(共和党)
「ロシアの侵略による大量の死と破壊は即時、停止されるべきだ。それを実行できるのはアメリカ大統領によるウクライナ、ロシア両国の和平への調停だけだ。ゼレンスキー大統領はその点を認識し、トランプ大統領が提案したレアメタル(稀少金属)の提供に関する協定を受諾すべきだ。今回、ホワイトハウスで起きたことはアメリカ大統領がアメリカ第一の政策を実行しようとしたことだ」
★ジョッシュ・ホーリー上院議員(共和党)
「アメリカ議会の上院は何年にもわたり、何回もアメリカ納税者からの資金を何百億ドルもウクライナに対して贈与してきた。しかもなんの条件も監査もなしに、だった。もういまとなってはその資金贈与の内容を監査すべきだ」
★マイク・リー上院議員(共和党)
「トランプ大統領、バンス副大統領、アメリカのために毅然と立ち上がり、アメリカ第一の原則を示してくれて、ありがとう」
★アンディ・ビッグス下院議員(共和党)
「独裁者のゼレンスキーはトランプ大統領、バンス副大統領に対して非礼な態度をとった。本来は友好的であるべき会合で、だった。トランプ大統領はゼレンスキー大統領に正しい退路を示した。これこそが
アメリカが過去4年間、切望してきた正しいリーダーシップだ」
★ハキーム・ジェフリーズ下院民主党院内総務(共和党)
「今回のホワイトハウスでの会談には唖然とさせられた。この会談は残酷な独裁者のプーチン大統領の立場を強くするだけだ。アメリカはロシアの侵略を認め、プーチンに融和的な態度をとる決して、してはならない」
★チャック・シューマー上院民主党院内総務(民主党)
「トランプ大統領、バンス副大統領はプーチン大統領のための汚れた仕事を果たすことになった。民主党の上院議員たちは自由と民主主義を守るための闘争を決して止めないだろう」
写真)9/11 生存者健康プログラムの記者会見で話す米国上院少数党院内総務チャック・シューマー氏 (民主党、ニューヨーク州) 2025 年 2 月 26 日。
出典)Anna Moneymaker/Getty Images
★リチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党)
「私の強固で情熱をこめた希望はこのトランプ・ゼレンスキー会談が再び開かれ、アメリカ側のこれまでのウクライナ支援が止まらないことだ。アメリカ議会でのウクライナに対する超党派の支援とロシアの臆面もない侵略への反対はアメリカの長期の国家安全保障に資することを忘れてはならない」
★クリス・マーフィー上院議員(民主党)
「今回の会談はトランプ政権が仕組んだ待ち伏せ攻撃のようなものだった。目的はゼレンスキー大統領に恥をかかせ、プーチン大統領を利することだ。嫌悪すべき出来事だった。全世界が目撃するなかでアメリカのパワーが破壊され、トランプ大統領がモスクワの独裁者のペット犬となったのだ」
★エイミー・クロブチャー上院議員(民主党)
「バンス副大統領にはゼレンスキー大統領がアメリカに対してすでに何回も感謝の意を述べたことを告げたい。感謝の表明は公的、私的の両方だった。アメリカはゼレンスキー大統領とウクライナ国民に感謝したい。独裁者のプーチンが西欧諸国にまで侵攻してくることを命をかけて防いだことに」
以上のようにアメリカ議会の反応は党派別の区分に沿って、明確に分かれるのだった。
トップ写真)ドナルド・トランプ米大統領とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の会談(2025年 2月28日ワシントンD.C. ホワイトハウス)
出典) Andrew Harnik/Getty Images
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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授
産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

